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死の真相

 ジョージ・スティーブンは3年前に死んで、ホオジロザメに転生したようだ。

 一緒に転生したモバイルフォンの機能か、ロレンチーニ器官を使って人間世界の電波を拾う事が出来るようになっている。

 その機能を使った盗聴で、彼は自分の死についてベラベラ語られているのを、歯が折れんばかりに食いしばりながら聞いていた。

 サメだから、歯が折れてもすぐに生え変わるけど。


「あの馬鹿、流れが速い場所に誘い込んだら、見事に流されたよな」

 ショウが嘲笑う。

「あれは傑作だったよね。

 ダイビング初心者だから、注意したのに無視して危険な場所に行ったって説明で、皆が納得したわけだし」

「だよな。

 俺たちは止めたんです、二次遭難が怖くて助けに行けなかったんです、って涙を流したら、母親すらうちの馬鹿な子がごめんね、とか言ってたし」

「ウケる」

 聞いていてジョージは歯ぎしりしながら悔しがっていた。

 自分はこんな奴を恋人とか友人と思っていたのか!


「で、なんでそんな馬鹿の事を急に思い出したんだよ」

「だからメッセージが来たからだよ」

「いたずらだろ。

 俺の番号じゃないだろ。

 どっからだよ」

「それがさ、死んだジョージの番号からなんだよ」

「は?

 ジョークとしちゃ傑作だな。

 ホラーだったら笑えないけど」

「あんたが、実は死んだあいつのモバイルフォン拾ってて、いたずらしたんじゃないの?」

「なんだよ、それ。

 持ってねえよ。

 まあ、誰か他に拾った奴がいるかもしれねえから、久々にグループチャットでもしねえ?」

「いいねえ」


 ジョージはロレンチーニ器官を上手く調整し、盗聴のチャンネルを切り替えて引き続き様子を伺う。

「ショウ、いきなり呼び出して何だよ?」

「ハーパー、お前ジョージを罠に嵌めたよな?」

「ジョージ?

 ああ、あの陰キャに絶望を味わわせるゲームで、エレナが告白した奴?」

「忘れてるんじゃないわよ。

 あんなオタク(nerd)、キモチ悪かったのに」

「あ、マーティがインした。

 マーティ、お前あの時ジョージの近くに居たよな。

 あいつのモバイルフォン拾ってねえ?」

「ジョージ?

 ああ、完全犯罪やってみようゲームで罠にハメた奴ね。

 そんな証拠を戦利品のように持っていくような間抜けな真似はしねえよ」

「だよな。

 実はさ、奴からメッセージが来たってエレナが言ってるんだよ」

「冗談やめろよ、有り得ねえって」

「ああー、だから俺たち呼んだってわけね。

 えーと、スーザンは?」

「あいつはこのゲームの事知らないだろ。

 今更バラす必要も無いさ」

「それもそうか」


 こうして悪だくみをした4人が、死者を肴に盛り上がっている。

 ジョージは嫌われたり、金を狙われたり、そういう動機で命を落としたのではなかった。

 もっと軽い、陰キャを罠に嵌めて、完全犯罪で葬ってみたいというゲーム感覚で命を落としたのだ。

 そしてこの連中は、それが上手くいったと喜び、メッセージが来たのをきっかけに、また「馬鹿なオタク」を話題に盛り上がっているのだ。


(もう聞いてられん)

 ジョージの中には激しい復讐の炎が燃え上がっていた。

 海の中ではあるが。

(いつかあいつらを殺してやる。

 僕の命を奪った報いをくれてやる!)

 そう思うものの、彼には手も足も出せない。

 まあ手も足もなくてヒレになってしまったが。

 薄汚い奴等は陸の上。

 サメになってしまったジョージには、このままではどうにも出来ない。

(竜巻でも起こってくれないかな。

 それに乗って、町まで飛んでいってやりたい)

(いっそ遺伝子操作して、タコの足で陸上を歩き回りたい)

(いや、頭を六個に増やしてそれで歩き回るとか……)

 今の彼には、有り得ない事を妄想するくらいしか、心を鎮める方法が無かった。


 ただ一個、気に掛かった事があった。

 加担していなかった女性・スーザンについてである。

 話を盗み聞くに、彼女がジョージが戻らない事に大慌てとなり、船を残して自分たちで捜索しろと半狂乱になっていたという。

 首謀者たちは、自分たちのような素人ではかえって邪魔になると言いくるめて引き返した。

 スーザンはジョージを救えなかった事を気に病み、マーティとは別れ、海洋生物の研究も止めてしまったという。

 海を見るのも嫌だと言っているそうだ。


(連絡を入れてみよう)

 ジョージは同時に転生したモバイルフォンのメモリーから、スーザンの電話番号を検索し、メッセージを送る。

 即座に

「悪趣味! いたずらしないで!」

 と怒りの返信が来た。

 ジョージは

(それが普通の反応だよな)

 と苦笑いしつつ、再度メッセージを送った。

 自分がジョージである事、生きてはいないが死んだ訳でもない事、何故か交信が可能になったという事を、ジョージであるという証明をしながら伝える。

「本当にジョージなの?」

 半信半疑ながら返事が来る。

『そうだよ。

 僕はジョージだ。

 僕の死を君が気に病む必要はない。

 僕は存在している。

 だから君は、好きだった研究を再開して欲しい。

 それが僕の願いだ』

 自分なんかの為に彼女の夢を諦めさせてはいけない、ジョージはそう思う。

「ありがとう」

 という返事が来た後、ジョージは彼女に警告を発した。

『ショウやエレナ、ハーパー、マーティとの付き合いは止めて欲しい』

 当然

「どうして?」

 という返事が来るが、彼は本当の事は言わなかった。

『その内分かる。

 決して彼等と共に海には来ないように』


 スーザンとの連絡は一旦そこで終えた。

 ジョージは沖合に帰っていく。

 彼は泳ぎながら、復讐の炎を静かに燃やし続けていた。

(いつか海に来てみろ。

 どんな船に乗っていようが、絶対に喰い殺してやる。

 その日を僕は、ずっと人間の心を保ち続けながら待っているさ)

アルバト■ス社さん、サメ映画にこの設定使ってくれませんかね。

次話は明日17時です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サメ映画の導入かな? と思ったら後書きで笑ったwww
[良い点] わーい新作だ
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