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ドゥリィームレェンド  作者: 秀樹(シュージュ)
2/5

ハヤト、アーク島へ行く

ん~、まだ慣れません


追加のページへ行くだけで5分とか


迷い子か。。。

レイス歴146年


「う~ん、あと1分だけ寝かせて」

ハヤトが呟きながら寝返りを打つ。

いつもの光景だ。

しかし彼の思考はすぐに『違うっ』と鋭く叫ぶと、しなやかに鍛えられた腹筋へ鞭を打ちつけ上半身を跳ね上がらせた。

眩しい、どうやら窓から差し込む朝の陽射しに起こされたらしい。

薄い視界を広げ時計を見る。

まだ7時を過ぎたばかりのようだ。

ほんの少し気が緩む。

すると再び意識が微睡みの世界へ。

いかんいかん、ハヤトはしつこい睡魔に違和感を覚えつつも状況を整理する。



昨日この国へ入国。

初めての一人暮らし。

そう、今日から俺はついに公務員、それも世界中のゲーマー全てが夢見てやまないアーク島のだ。

やった、やったぜ俺。素晴らしいぜ俺。

15歳の誕生日前日に入島要請が来てから飽きもせず繰り返し頭に浮かぶそのセリフ。

それにしてもかつて経験した事のないこの激しく込み上げる感情はどうだろう。

入島し実感という要素が加わった今、晴れて堂々と駆け巡れるようになった純然たる歓喜。

まるで全身の一粒残さずの細胞達がお祭り騒ぎをしていやがるようだ。

すげえ。


「最高だぜ俺」


ハヤトはそうするのが当たり前のように両腕を突き上げ雄たけびを上げていた。

直後、支えを失った上体のバランスが崩れ、突き上げポーズのまま横へ倒れ込んでしまう。

そしてまたしても覚える思考停止へ導こうとする不思議感覚。

ふと謎の噂が頭をよぎった。

淡い金色を帯びたベッドの表面をぼんやりと横目で見やる。

(そうか)

「一晩で一生分寝た気にさせるベッドの存在はホント・だったん・・だな。」

んっ、意識の消えゆく様が妙にリアルだ、おかしい。

「ま、まさか幽体離脱っ」


「ぷぷっ、君おもしろいね。」

どこからか聞こえる女性の声。

「えっ」

驚いて辺りを見回すハヤトをよそに声は続く。

「初めまして、私の名前はウス子。あなたの職場のパートナーよ、気軽にウスコって呼んでね。

昨日挨拶をしにこの部屋へ来たのだけどあなたベッドに座るなりすぐ寝ちゃったでしょ。疲れてそうだったから声を掛けず起きるまで待っていたの。因みにそのベッド、体力全回復系の誘眠モードになっていたみたい。普段は体調やスケジュール、希望までも把握して随時最適化するから意に反し眠くなることは無いはずよ。今はもう覚醒モードに切り換わったから眠くならないでしょ。一方的に話しちゃってゴメンね、何か質問はある?」

「あっ、僕はシングウ・ハヤトと言います。宜しくお願いします。あのぉ、昨日からずっと起きて待っていたのですか」

「そっ、ずっと起きていたし、ジ~ッと様子を眺めてたわよ。」

(マジか、、、15時間以上だぞ。別の意味で怖いんですけど(汗))

色白で愛くるしい童顔の顔に薄っすらと冷や汗を滲ませ、印象的な円らの黒い瞳で不安げに何処かを見つめる少年。

僅かだけ開かせた唇から少しづつ息を吐きだすそれは吐き出し時間の長さからして間違いなく気づかれぬようにと相手を思いやる配慮の溜息。

しかも不自然に空いた会話の間がドン引きな表情を際立たせてしまっている、しまったー。

とウスコが観察し後悔の念を抱いたか定かではないが少なくとも慌てふためいた声色に変わり

「な、な~んてね、ジョークよジョーク。私は意識だけの存在だから夕べはすぐに引っ込んでいたわよ。さっきルームシステムから知らせがあって再びここに現れたの。ルームシステムと私は全く別の存在よ。そもそもルームシステムには意識という概念すらないし安心して、ただのトリセツね。あなたのプライバシーには私が幾重にもフィルター掛けているから全てのAR(自我を持つヒューマン型ロボット)は勿論、職場となるゲーム内の如何なる権限でもアクセスはぜ~ったいに出来ないわ、安心よ」

「そ、そうなんですか。」

(安心と連呼されてもアクセス出来なきゃただの不審人物じゃねーの)

「か、かも知れないって話よ。言い換えると可能性ね、アハハハ・・・。そうだ、ハヤト君あなたお腹空いてるんじゃない?」

「あ、はい。港からここまで案内して下さった係の方から昼食を誘われたのですが迷っていたら結局、食べ損ねてしまい・・・」

「それは残念ね、食文化の逆輸出はここの主要産業の一つで当然ハヤト君にとっての絶品料理が用意されていたはずなのよ。お昼から何も食べていないの?それじゃお腹ペコペコよね。まずは顔でも洗っていて頂戴、その間に準備させるから。そのままベッドに顔を埋めてみて、さっぱりするわよ。さっ、トリセツ君出番よ」

言われるままに俯せるとゲル状化したベッドの表面に身体全体が着衣のまま沈み込んでゆく。

同時に泡のようなものが口の中へ滑り込み、自然にそれを咥え唇を閉じると呼吸用なのが分かる。

そしてスライム感した物に顔面が洗われる感触。

(むう~っ、俺は今ゴージャス気分と初の遭遇をしているのか、いや絶対そうに違いない)

暫くするとそれがぬるりと吸い付いてきて今度はフェイスマッサージを。

(おおっ。こ、これは!気持ち良過ぐる 。待てっ、もしかして全裸の全身洗いバージョンもあるのか。ああ~っ、想像するだけでヤバ過ぎるぞ。恐るべしスライムベッド君)

「ど~お、なかなかいいもんでしょ。仕事で長い時は一週間くらいインし続けるけどその間の身体ケアはしっかりやってくれるわ。窒息させちゃ困るし今やっているレベルの洗顔は出来ないけれどね。ん、お~い。ハヤト君生きてる?食事の準備出来たわよ」

(んっ誰だ、俺の妄想モードをぶち壊そうとする輩は。八ッ、ヤバい、気づかれたか)

顔を赤らめたハヤトが後ろ髪を引かれる想いを残しながらも15時間以上ぶりにようやくベッドから抜け出してゆく。

「あーよく寝たぁ」

全身で伸びをして何気にテーブルを見ると、

そこにはプレートに乗せられたハンバーグ定食が湯気を立ち昇らせながらテーブルの表面を透過し湧き上がるように現れゆく光景が。

実際は表面が開くと同時にホログラムで閉じた状態を演出してるだけなのだが。

そして浴室やトイレへ行く際の壁にもこの目隠し機能は使われている。

(もはや何でもありだな。昨日も貴重なARを港からの送迎役につけたりこの国の文明はどうなっているんだ)

「ハヤト君、食事しながら聞いて。君今日は調整日でお休みよね。散歩でもして色々見てくれば。島の事とか外出用トリセツ君が色々教えてくれるわ。」

「すいません、お代わりとかって駄目ですか。これ滅茶苦茶に美味くて。お味噌汁もいや~っ、最高です。」

「はあっ、もう食べちゃったの、しかも綺麗に全部。。。トリセツ君お代わり準備して。」

「ところでウスコさん、外出用って何ですか」

「いわゆる、、、、、ただの通信機ね。だけど出かけるときは必ず持ち歩くこと。絶対よ。忘れて出ようとしてもドアが開かないわ。親指大のシールをネックレスとして身につけるだけ。生地に絡むから服に貼るのもいいかな。それと念の為この国のルール説明を私に今一度させて頂戴。昨日、送迎君から聞いているだろうけど、この国の法律は一つだけ。国に害を為すか否か。審判所へ呼ばれたら記憶を読み取られて呼ばれる原因をもたらせた関係者も含め全員が調べられる事になるわ。もし害が認められればその程度に応じた処分、国の99%がゲーマー公務員だから多くは減給処分で済むけれど、単純なだけに他国より理不尽で厳しくもあるの、害が認められなければ何をやっても許されるし逆に言葉や思考だけでの反逆刑もありうるから。もしもトラブったりそれが予見できた時はまず私に連絡して欲しいかな、力になれると思う」


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