会社
遅れました。申し訳ありません。読みに来てくれてありがとうございます。
楽しかった休日も終わり、会社だ。
「うー……」
「うーっス、おはようございまーす。……どうしたっスか先輩。朝から死ぬほど憂鬱そうな顔して」
後輩である前谷有咲が話しかけてきた。
「いや……ちょっとな」
「なんスか?まさか美人局に遭ったとかっスか?」
「違ぇよ」
「じゃあ……株で大損したとか?」
「違ぇよ。今さっきからなんなんだよ」
「いや、気になるじゃないっスか」
「なんでもねぇから……」
「あ、会社辞めるんスか!?」
「辞めねぇよ」
すると、ガタッと向こうから音が聞こえてきた。
「おい張本ォ!辞めないでくれェ!」
「辞めませんよ、部長」
「そうか、それならいい……お前が居なくなったらこの部署回らなくなるからなァ……」
「いや、そんなヤバい感じなんですか」
「あぁ……即崩壊する」
「えぇ……」
俺が呆れていると、バタバタと足音が聞こえてきた。
「おい張本君!これは一体どういう事だ……?」
イケメンだが低身長の倉田が来てそうそうスマホ画面を見せつけながらそんな事を言ってきた。
「何がだよ……って、は?」
スマホ画面に写っていたのは俺とルナちゃんだった。
「お前それ盗撮じゃねぇか」
「黙れっ!君とこの美しい女性は……まさかとは思うが君の妹じゃ……」
「違う。その子は、えっと……」
ルナちゃんの許可なく言ってもいいのか……
「恋人なんだな……?……くうぅーっ!羨ましいぞ!妬ましいぞ!お前だけは僕と同じく独りだと思っていのにぃ!」
「え、張本って女に興味あったのか……」
「先輩って異性に興味あったんスね……」
部長と前谷が驚いた顔で言った。
「あるわ!今までなんだと思ってたんだよ!」
「てっきり」
「そっち系の人かと……」
「何でだよ!?」
「だって……なぁ?」
「先輩、女どもがアピールしても冷たくあしらってたじゃないスか?」
「え?そうなのか!?」
「いや無自覚だったんスか」
「いや……会社で恋愛とか考えて無かった……そもそも気を遣うのが嫌だから……」
……でもそのおかげでルナちゃんを悲しませる事が無かったから良かったか。
「アホなんスか。まぁ私も先輩にそういう惚れた腫れた的な感じ無かったんで後輩やってるんスけど」
「あ、そうだったのか」
「そっス。私、男も女も好きになれないんで。自分の色恋とかマジでめんどいんスよ」
「なるほど」
「とりあえず、おめでとうございますっス。……それでこの超美人な金髪ロングヘアちゃんと付き合うきっかけは……?」
「色恋とかマジでめんどいんじゃ無いのかよ」
「他人のは別腹ッスよ。私ふつーに少女マンガとか読みますし」
「……話していいか後で聞いてみる」
「先輩めんどいッスね〜気ぃ遣うのめんどいんじゃ無かったんスか?」
「いや、さすがに許可も取らずに話すのは失礼というか、親しき仲にも礼儀ありって言うだろ!?」
「……先輩、その子の事大切なんスね」
「……まぁ、うん。そうだ」
「いや〜初々しい感じいいッスね。……あれ?じゃあなんであんな辛そうな顔してたんスか?」
「ちょっと色々……挨拶とかな……」
「えっ、結婚するんスか!?おめでとうございますっス」
「ちょっ、いや、」
「くぅーっ!妬ましい!」
「寿退社とかしないよなァ!?」
「しませんよ!……はぁ」
周りががやがやしてる中、昨日の事を思い出して溜息が出る。
―――
『今度の週末、私の家に挨拶に来てくれないかね?』
「え、あ、はい」
『じゃあ、娘にもそう伝えてくれ。ではまたな』
「はい」
電話が切られた。
「お父さんなんて?」
「……週末に挨拶に来なさいって」
「あー忘れてたね。あれ、じゃあ私はお兄ちゃんの親御さんに挨拶とかしなくていいの?」
「うちは放任主義だから……でも家近いし行こっか」
「分かった!……お兄ちゃん」
「……え」
俺が振り向いた瞬間、キスされていた。
「……ぷはっ。し損ねちゃったから!じゃ、じゃあ寝よ!」
赤い顔で誤魔化すように言うルナちゃん。
「あ、はい」
キスは嬉しかったが、ルナちゃんの親御さんへの挨拶をしていなかったことへの罪悪感がより一層強まった。