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 海上保安庁ヨパユペ・バボスガは、万一の場合に備え、ワヨモの港の沖に巡視艇を数隻、他、巡視船数隻にも、いつでも出航できるよう準備だけは整えていた。それはテトツの乗るガグ号が、ジャレメ島に向けて出港した場合、阻止するためだ。ところがガグ号出航の連絡は、想定よりも6時間も早い午前3時にもたらされた。

「まったく手を焼かせるご仁だな。ボロ船で何ができる」

 ヨパユペがそう言って、部下たちにガグ号捕獲命令を出そうとすると、逆に巡視艇からの連絡が入った。

「ガグ号の速度が速いです。それと、高性能のレーダーを装備しているようで、こちらの位置を把握している模様です」

「何だって?改造でもしたのか?仕方ないな」

 急いでヨパユペが出航すると、そこに海上保安庁のトップ、キミスデ・ゼベ長官からの連絡が入った。

「おい、ジャレメ島に向け出港した民間船はどうした。あれだけは何としても、うちで阻止しろ。長官命令だ」

 キミスデ長官の慌てぶりにヨパユペが理由を尋ねると、どうやらテトツは出航直後、マスコミ各社に向け、

ジャレメ島への渡航宣言

 という文章を、何故か「護憲国民連合」という名称で配布。それを受け「護憲国民連合」が、

「私共の組織と渡航宣言を出した当該集団とは一切無関係」

 と声明を出したりで、早朝から国内は騒然となっているらしい。

「奴らは教科書に書いてある固有の領土に出かけるだけと言うが、これは下手をすると国際問題だ。これを国内問題の範囲で解決することが、我が海上保安庁に与えられた任務である」

 キミスデの命令を受け、海上を睨むヨパユペに声がかかった。

「課長、このテレビ映像をご覧ください。ガグ号です」

 海を高速で移動する船が、上空からの映像で流されている。

「何だ、これは?」

 それを見たヨパユペは、少し後、キミスデに無念の謝罪報告をした。

「ガグ号の想定を超える早い出航、高速艇への改造の事実を把握できなかったことにより、処理は海上自衛隊に委ねることとします」

 ガグ号の船影を捉えていたのは、海上自衛隊の哨戒機であった。ここで海上保安庁に替わり、邦人保護という名目で、海上自衛隊の戦力によるガグ号捕獲作戦が開始された。

「ガグ号に次ぐ。ジャレメ島周辺にはゾモ国海軍が配備され、このまま進行すると不測の事態が予想される。ただちに停船せよ」

 海上自衛隊の艦艇からの無電に何の応答もなかったカグ号が、突如、減速をし始めたのは、ゾモ国が独自に定めた国境ラインに突入する直前だった。

 その報告に安堵の表情を浮かべたのは、ボセニカ首相である。ガグ号のジャレメ島への接近は、当然、ゾモ国も察知しているはずで、ボセニカはゾモ国からの問い合わせがあった場合の答えに窮していた。もしも、ゾモ国がガグ号へ攻撃するようなことがあれば、その対応は彼の政治生命をも左右することになる。

 テレビには相変わらず哨戒機からの映像が流れている。やがて、ガグ号はゾモ国が定める国境ラインを通過した。すると突如、ボセニカは、周りが驚くほどの大きな声を上げた。

「ちょっと待て、止まらんぞ。それどころか、これでは、この船が海上自衛隊の船舶の先導をしているように見えないか!」

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