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結局、テトツが切り出したジャレメ島旅行に参加するのは、テトツ社長に加え、キテプテチ以下技術部の古参6人、船の操縦のためのアメラモ船長以下船舶部の13人、一般の社員からは、定年を目前にした社員を中心に28人、人事部長のゼベバも加わっていた。
「全部で48人か。よし、一行の名は、ジャレメ48だな」
そんなテトツの元を、外務省参事クサヤ・リッザソという人物が訪ねて来たのは、ガグ号がジャレメ島に出航する3日前だった。
「ミス国からジャレメ島に出かけるには許可が必要なのです。ゾモ国との国際問題に発展する可能性もあります」
外務省に告げ口をしたのは、総務部長エヅだろうか。クサヤは、すべてを知った上で、渡航の中止を命令して来た。
「ミス国の人間が、教科書にも書いてあるミス国固有の領土ジャレメ島に行くのに、どうして外務省の許可が必要なんですか?そんな命令、従いませんよ」
テトツが折れないと、クサヤは憤慨して帰って行った。
その翌日、テトツを訪ねて来たのは、ミス国の大新聞の1つ、「ウギベデ新聞」の記者アゲオブビ・グペーという人物だった。
「平和国家として戦後70年以上守り抜いて来た平和を、あんた1人の行動でぶち壊したら、あんた責任、取れるの?」
態度は前日の役人よりも大仰だった。彼は、さらに声を荒げた。
「ゾモ国との戦争が始まったら、平和国家が終わるんだよ」
「平和国家とは、丸腰で相手に臨んでこその平和国家だ。反撃をする武力を持った国を、もはや平和国家とは呼ばない。馬鹿な講釈ではなく、あんたら新聞は事実を書くのが仕事ではないのか」
テトツは譲らなかった。
そして、その翌日、出航の前日に訪ねて来たのは、海上保安庁課長ヨパユペ・バボスガという人物だ。彼はテトツに唐突に言った。
「まさかとは思いますが、あなたにテロ行為の疑いがあると、通報がありました。もし、事実なら、拘束することになりますが」
さすがに、この言葉には、テトツも狼狽した。
「テロ?誰がそんな馬鹿な通報をしたんですか?」
ヨパユペは、それには答えず、
「とりあえず、お聞きしたいことがありますので、明日、本庁までご足労願いませんか。確認ですのでお時間はとらせません」
テトツは黙ったまま、うなだれるように首を下げた。
ヨパユペが帰ると、入れ違いに応接室に入った来たのは、人事部長のゼベバだった。
「やはり、ジャレメ島への渡航は無理のようですね」
すると、うなだれるようにしていたテトツが顔を上げた。
「まさか、国民が行けない場所を本当に領土と呼ぶのか?そんな欺瞞が何になる。それを教えられる子供たちが、かわいそうだ。よし、ゼベバ、参加者を今すぐ社に集めろ。今夜中に出航するぞ」
「社長、本気ですか?」
「当り前だ。このままではゾモ国の前に、我々は、我が国ミス国と事を構えることになってしまう」
それから、アメラモ船長に出航時間の変更を伝え、ゼベバと、その部下ジナオンが直接参加者に電話、一部は車で迎えに行くなどして出航準備完了、船出をしたのは、予定日の深夜2時過ぎだった。
「ザオク先生、あなたとの勝ち負けが、ようやく分かりますよ」
まだ暗い海を見ながら、テトツは、そう、つぶやいた。




