表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルート・エルケーニヒ  作者: 映城梨歩
第1章 我らは歩み始め
3/5

第2話 手合わせ


東北の田舎のとある小学校にやって来た転校生。その転校生を歓迎するべく開催されたVRMMO内での歓迎会で、圧倒的な力をもってクラスメイトを全滅させたのは、サーバー最強ギルド 『ブルート・エルケーニヒ』だった。

そのブルート・エルケーニヒこと、通称『ブルエルケ』の1人で個人ランキング3位のリリーと戦うことになった転校生のシャルは自らの愛刀・風斬刀を持って、前に出る。

リリーは己の身の丈も程ある杖をストレージに仕舞い、代わりに何の変哲もない長剣を取り出した。


「おーい、準備はいいか?」


ブルエルケのメンバーで個人ランキング4位のニートゥが尋ねた。リリーとシャルは頷き、互いに武器を構える。


「「うん」」

「んじゃ、始め‼︎」


合図と共に、シャルは駆け出した。

まずは腕を斬り落とすべく、肩を狙う。風斬刀を振るうも純白のローブに弾かれた。

リリーはシャルの腕を捩じり上げて、長剣を首に突きつけようとする……が。


「ーーッ⁉︎風よ‼︎【爆ぜろ】‼︎」


咄嗟にシャルがそう言うと、風が一点に集中し、爆発した。衝撃を使いシャルは上に跳んで、そこから落下する形でリリーに向かっていく。


「うわっ!びっくりした!」


対するリリーはシャルの攻撃を半歩退がって避ける。この際の衝撃で土埃が辺りを包んだ。シャルは嫌な予感がして、後方へ跳躍。次の瞬間、さっきまで居たはずの空間を炎が通り過ぎていった。


「あちゃー、あれが当たれば良かったのになぁ。ま、無理だよね〜。」


視界が塞がれた状態の中、リリーは微かに吹く風の先を目掛けて一直線に走って行く。

シャルがリリーの接近に気付き、風の刃を生み出す。土埃を散らし、敵の首を落とさんと迫った。


「うんうん、じゃ勝手に確かめちゃうよ?」


リリーの頭の右上から来た風の刃を、首を少し捻ることで回避しさらには剣で迎撃。

正面から来た風の刃に向かって手を突き出すと、手袋に刻まれた奇妙な赤い印が光った。それと同じようにシャルのリボンも僅かに光る。


何故か頷いたリリーは自らの緑色の目を細め小さく微笑んだ。

そして口元を微かに動いた。

シャルにはそれが一体何と言っていたのかは分からなかったが、ほんの少しだけ……しかし、確かな恐怖を感じる。


次の瞬間には迫っていた風の刃は霧散し、これでもう全て無くなっていた。


「そっかぁ、じゃあもういいや。終わりにしよ?ね?」


まるでじゃんけんをしよう、と誘う様な気軽さでリリーは言った。

シャルはそれを聞き、全力で防御を開始した。風を幾重にも束ねて分厚く頑丈な盾を創りあげる。

「シャルちゃんおつでした〜。……ってことで?【喰らえ】」


リリーの手から竜の頭の形をした炎が生み出された。シャルの盾を食い破らんと迫った。

火の粉を散らしつつ、派手に攻防が続く。


リリーはこの時、内心でため息をはいていた。シャルの髪を束ねている白のリボンにある赤い印に目をやる。それはとある人物が『ブルート・エルケーニヒ』のメンバーにだけ渡した物だった。


炎の竜が風の盾を食い破る。そしてシャルへと向かった炎はその寸前で、まるで何かに弾かれたように飛び散った。

シャルは炎に飲まれると思い、目を瞑っていたが何も起きないことで恐る恐る目を開く。


シャルの首にはリリーの剣が突きつけられていた。


「この勝負、リリーの勝ちっ!」


ニートゥがそう宣言し、この戦いは幕を閉じた。



◼︎ ◼︎ ◼︎



シャルはこの時、疑問に思っていた。

何故、リリーの炎は弾かれたのだろうか、と。

絶対に命中する筈だったのに。

……手加減?それとも技のキャンセル?

どれともエフェクトが違う。


「うーん…。なん……だ、ろ……?」


シャルは知らない。炎が弾かれる……しかもシステムによってそれが起きたという事が、一体何を表しているのかを…………………。



◼︎◼︎◼︎



同じ時、ブルート・エルケーニヒのギルドマスターであるアルネスタが、誰かとの電話を切った。


「そうか……。一応、招待はしないとなぁ………。」


この呟きを聞いた者はいなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ