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打越は扉を開いた状態でしばらく静止する。
――なんで三滝くんがここに、それよりも手伝ってもらう人を探さないと、三滝くんに頼めば、でも起こしちゃうのも悪いし……
打越の脳内でいろいろなことが思い浮かび消えていく。そうして立ち竦んでいると音が大きすぎることで評判の扉の音で起きてしまったのか三滝がむくりと起き上がる。眠そうな目をこすり、こちらを見て、大きく伸びをして、もう一回こちらを見て――
「――えっ? 打越なんでここにぃやばっちょ待って落ちる落ちるぅ――‼」
転倒した。あまりにも驚きすぎた三滝は伸びをした状態のまま大きくバランスを崩し椅子の上から転げ落ちる。大きな音が――横川がドアに衝突した音よりかは控えめではあったが――教室に響く。
「だ、大丈夫⁉」
プリントを近くにあった机において打越は三滝に駆け寄る。見ると三滝は後頭部から着地してしまったらしく床に倒れた状態で頭をさすっていた。
「あいたたたた、これたんこぶになってるかも……」
「ごめん、驚かせちゃって」
その声を聞いて閉じていた三滝の目が開き、打越を見る。瞬間仰向けのまま四足歩行とは思えないほど物凄い勢いで後退しだし、そのまま後退した先にあった壁にぶつかりまたもやぶつかる。
「あだっ!」
「……大丈夫?」
やっと落ち着いたのか二度の衝突で痛む後頭部を手で押さえながら立ち上がり、返事を返す。
「うん、大丈夫。それより放課後に打越が教室に来るなんて珍しいじゃん。どうしたの? なんか用?」
「あ、うん、その……」
今更平常を装った三滝の返事に、打越の頭が真っ白になる。さっきはあまりにも三滝の行動が衝撃的すぎて気にならなかったが、打越が三滝に話そうとするといつもこうなってしまう。
三滝が気になりすぎて緊張して考えがまとまらず何を話していいかわからない。いつもなんとかごめんなさいと言って三滝から逃げてしまう。
しかし、
「えっと……も、ももちゃんからプリントを渡されて」
今日は違った。打越は勇気を振り絞って声を出す。すると三滝は机においてあるプリントの山を見て、
「まじ男の用件はこれだったのか。これどこまで?」
「職員室までっ、職員室までです…」
「わかった。んじゃ行こうか」
三滝はプリントを全部持って、教室を出ようとする。
「うわっ、おもっ」
「は、半分持つからっ」
打越は三滝の抱えているプリントの山から半分ほどを持った。これまでで一番二人が近い距離、三滝はほんのり香る打越の甘い匂いを感じてしまい顔が火照る。
「よいしょっと…ん? どうしたの三滝くん」
立ち止まっていると先に教室を出た打越が不思議そうに後ろを振り返った。
「いや、何でもない。何でもないから」
「待って、そっち反対だよ? 三滝くーん?」
麗しの打越の声で慌てて回れ右して、改めて職員室まで向かうのだった。




