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純情なやつ  作者: 紳士
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「いや重! これ女子に持たせる量じゃないでしょこれ!」

 学習相談室を出てすぐの廊下で叫んでいるのは大量のプリントを持った横川だった。

「うう…これ誰かに持ってもらわないとダメなやつだよ……」

 まじ男にプリントを渡され「職員室まで頼む」と言われたがこれでは一階にある職員室まで保ちそうもない。教室まで行って三滝に手伝ってもらうか、と考えていると廊下で練習していたある吹奏楽部員が目に入る。

「おお! 桜さんちょっと手伝ってー!」

 そう叫びながら横川はトロンボーンを吹いていた打越に猪もかくやという勢いで突進する。それを、

「――え?」

 あともう少しでぶつかるといったところで打越は横川を華麗に避ける。そのまま横川は五組の教室の扉に衝突、吹奏楽部の練習の音よりもはるかに大きな音が廊下に響き渡った。

「も、ももちゃん大丈夫⁉」

 打越が踏んづけた蟻のようになっている横川にトロンボーンを片手で持って慌てて駆け寄った。もも、というのは横川の名前だ。横川もも、それが横川のフルネームである。

「あいたたた…はい、大丈夫、大丈夫です……」

 フラフラしながら横川が立ち上がった。そしてそのまま手に持っていたプリントの山を打越に渡す。

「え、おもっ⁉ これなに重い‼」

「プリントです。先生に職員室までって頼まれたんですけど急な用事を思い出してしまったので桜さんに任せます」

「いや、でも私も部活が…」

「大丈夫です楽器は預かっておくのでそれではそれでは」

 打越が持っていたトロンボーンを横川が引き取ろうとする。

「ああ待ってそれじゃあスライド落ちちゃう!」

「え? ああすみません――ん? これどうやって持ったらいいんですかこれあれ?」

 どうやってもスライドが抜け落ちそうになるトロンボーンのスライドロックを打越は片手で回し落ちないようにする。

「そ、それでは私は楽器を置いてきますので…それと桜さん」

「ん?」

 トロンボーンを持った横川はふと振り返り打越を見て、

「もし重かったら教室に誰かいると思うので手伝ってもらうことをおすすめします。それでは、健闘を祈りますよ」

「うん、そうする。じゃあねももちゃん」

 横川と別れ、打越は職員室へと向かう。とその前に、このままでは職員室まで保ちそうにないので手伝ってもらう人を探すためにひとまず正反対の方向にある教室を目指した。

 学習相談室から教室まではそう遠くない。打越は大量のプリントを抱えながら片手で立て付けの悪い教室の扉を開ける。するとそこには、

「え……!」

 机に突っ伏している三滝がいた。

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