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純情なやつ  作者: 紳士
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 三滝(みたき)は教室にいた。今は放課後、外では野球部がなんの練習をしているのか叫び声を上げており、近くの教室で吹奏楽部が練習しているのか楽器の音が聞こえてくる。

「おや、おやおや、吹奏楽部。へ〜、吹奏楽部とな」

「なんだよ、横川(よこがわ)。そんなに吹部が好きなのか」

 吹部について不思議なほど連呼してくるのは横川、三滝のクラスメイトの女子である。

「いえいえ何でも、ほー吹奏楽部……吹奏楽部」

「何でもあるだろ、なんで露骨に吹奏楽部吹奏楽部って言うんだよ」

「あら、吹奏楽部が気になるのは三滝くんの方じゃあないですか?」

「……はあ? なんで?」

 思わず聞き返し、少し不安になった。話の主導権を握られた気がする。三滝が顔を渋くした。

「だって吹奏楽部には桜さんがいるじゃないですか」

 桜、というのは同じクラスの女子のことだ。打越(うちこし)(さくら)、黒髪の髪を腰にまで届きそうなほど長く伸ばした、少し小柄な女子。

「う、打越は関係ないだろ。それに俺は打越のことはなんとも――」

「あら、あらららら? 誰も三滝くんが桜さんのこと気があることなんて話してませんけど」

「お、俺も気があるなんて言ってないし……」

 くそ、完全に墓穴を掘った。こういうときは話を変えるに限る。三滝は有耶無耶にしようと話題を考えて――

「おい、誰かいるか」

 扉がガラガラと音を立てて開いた。その音が毎回大きすぎて、早く修理したほうがいいんじゃないかとクラス全員が思っている。そんな壊れかけの扉の向こうにいたのはうちのクラスの担任、まじ男だった。本名尾島(おじま)まじ()、芸人のような名前だが、れっきとした本名だ。

「お、横川、ちょっと学習相談室まで来い」

 えー、と三滝の隣に座っていた呼ばれた本人が不満そうな声を上げる。学習相談室というのはこの教室がある四階の真ん中のあたりにある教室のことだ。ちなみに三滝たちは七組である。

「三滝くんも一緒に来てよ〜」

「いや、一人で十分だから三滝は来なくてもいい。というか部活動しないんならお前ら早く帰れよ?」

 三滝は帰宅部のため、いつもホームルームが終わると人より教室に残っている。横川は文化系部活で一番厳しいと名高い吹奏楽部に入っているはずなのだがよく教室に残っている。なんでも幽霊部員一歩手前なのだとか。

「それじゃあ行くぞ」

「じゃあねー三滝くん。健闘を祈るよ」

「何に対して祈ってんだ、何と健闘すればいいんだよ」

 横川がまじ男が連れて行かれ、教室に一人きりになった三滝は静かな教室の中、ある一つの机を見つめため息をつく。

「きっかけがあれば…いや、あってもダメか。ほんと絶望的だな……」

 三滝は一人呟いたあと、自分の机に突っ伏せる。時計はまだ四時半、完全下校時間まで時間はあるし少し寝ようと三滝はまぶたを閉じた。

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