三時限目:チート先生が過去のツケを払わされるようです~お前ら…ツケはやめとけよ~
やあお前等。そうだよ、俺だよリヒトだよ! 今日の授業参観はぁ…!!
俺の俺による俺のための念話語りだ! 景気良くぶっ潰してやんよぉ!!
…嘘だよ。だから帰るな…帰らないで下さい…久しぶりの日本語のツッコミ…!
俺は嬉しいんだ。神々は基本俺が嫌いだって知ってるけど、
捨てる神あれば拾う神ありって言うだろ? つまりそういうことだ…。
お前等だからぶっちゃけとくけど、俺、転移系なんだ。後は分かるな? 以上。
そういうわけで前置きはこの辺で、今日の授業参観を俺視点で見せてやるよ。
今日の授業はこの世界では99%どうでもいい二次元文化でもやろうかなぁとか、
そんな事を考えながらも…悪ふざけが過ぎるとマジで元生徒達その他から、
割と本気の大封印刑を食らっちまうのでやっぱりちゃんと真面目にやろうかと
リアルの口じゃあシャイセシャイセ言いかけながら脳内大パニックなわけよ。
「あー…おいノエル。この間は何の授業にしたっけ?」
「先生…生徒に聞くなんて…それはあまりにも不名誉ですよ」
全く授業ネタが見つからんから略式人物紹介。今俺が話しかけてんのが
最初の授業参観で語りを勤めた『今年のやらかしツェット君』にして
新入生代表以降一学年代表という名誉を授けられたノエル・ナローズだ。
西部太陽王国からの移民三世で親父が皇国正統騎士やってる…まぁ、
普通の会社員の普通じゃねえ息子だ。年は二浪してっから皇立学園の
第三学年と同い年な15歳なんでそこからしてもう普通じゃねえな。
「先生? まだ何か?」
入学式でやらかし、俺と何度も顔を合わせるうちにこいつは
俺の中身の何かを見抜いた。なんつーかすげぇ主人公補正入ってそうな男だ。
顔面スペックは日本人基準で見りゃあ10人中7人は「爆発しろ」って顔だ。
「……あの…先生…?」
見てるだけなんだが青くなるのは普通か? まぁそりゃーそーだ。
俺の日ごろの行いを知ってりゃ誰だってそーなるわな。俺でもゲロりそうだわ。
「んじゃー…ちょっち10分自習タイム。その間に考えとくから」
ーえぇぇ…
はい、この段階で教師失格。普通は二手三手考えてからやるもんだ。
普通の授業だったら指示なり資料なり教科書なぞりーので良いが、
生憎俺の授業は「自由科目」っていう何処までがフリーなのかさっぱりわからん…
つーか完全に担任任せのゲスモードだ…自由科目は俺だけじゃねえけどな。
…ここ、笑うとこだからさ…ほら、ほらほらほらほらぁ!!
笑えよ…ベj…
「先生」
「………あー…ごめん。ついタバコに手が伸びてたわ」
「え…? いえ…私が言いたかったのは…そういう事ではなく…」
話しかけてきたのは二学年のヒナ・プロイエクト。皇族の姫の一人だ。
親が大公でヒナは三女なんで継承権はかなり低いが…そもそも公爵系って大抵が
皇/帝/王族の血族なんよ。だから他の物語とかで傍系ですらねえ主人公だのが
公爵になる…なんて展開はモヤモヤするんだわ、 俺 的 に な?
「あー…悪いな。突発で自習とか、教科書全部置いて来てるんだろ?」
「いえ…それは本人の問題であっ、て…せ、先生のせいではありませんよ…?」
彼女は出自からして普通じゃないんでノエルより俺の中身を見抜いた臭い。
だから俺の言動一つ一つを冷静っちゃ冷静に警戒してる。
…思い出すなぁ…セレスのこと…っとっとっと!! 弱気になりすぎだ!!
手前で手前の頬をビシバシ気合いれねーと…!
「おう、気にすんなよ? 昨日めちゃくちゃ呑んだせいだからな?
んでメルとその後めちゃくちゃセッ…」
「不浄なッ!!」
「いやそこヒナの台詞じゃね? 何で御前なのよ?」
「……酒は兎も角、皇国男児が色に現を抜かすのは良くありませんよ」
「おいおい女児なら良いってかぁ? このむっつりスケベが!!」
「んな…!?」
「先生、ノエル…学園長に通報しますよ?」
「サーセンしたッ!!」
「先輩ごめんなさい!!」
俺とノエルはヒナに90度の最敬礼で謝罪する。土下座はしないよ?
これまでの人生を振り返ると土下座まみれだからねッ?
「……仕方ねぇ…ここはン十年ぶりに俺の歴史から学ぶ授業でもs―
―ガッシャアアアアアン!!
「sすぇいっ!?」
窓は窓でも明かり取りの天窓から…
「何してんの三賢聖左方のメルキュリーリスさん」
「あなたぁ!! 来ちゃったのよぉ!!」
「何がだよ?!」
「あのバカ皇j―今の余は皇帝と何度言わせるかこの婆が―んだごるぁ!?」
「……………」
―ざわわわ…!! ざわわ…! ざわ…!
「テメー…何しに来やがった…」
「言わずとも察するべくが余の先生だろう?」
頭以外ギャリンギャリンのメッタメタールな鎧姿で
教室の入り口から入ってきていた…この男は…
「エグ、ザムステ…イル皇帝…陛下…!」
「やぁ、嘗ての許婚ヒナよ。もう先生の室に入ったか?」
「ふぁぁっ!?」
おいおいおいおいをいをいをいをいをいをいをゐをゐをゐをゐをゐ…。
「ふむ…新顔が多いのだな…では名乗ってやろう。余こそが
テッラーラント皇国もいずれ平和的併合を成す未来の大帝、
テオス・フライハイト・エグザムステイル7世である」
「頭が高いよ~ん! 王族以下は平伏よ~ん☆」
皆当たり前絶句してたが、その名を皇国で知らぬは恥とされる…
前大戦で一時は大陸全土を手中に収めかけた赤悪神連邦軍を
事実上は打ち破ったエグザムステイル帝国の現皇帝…。
「んでテオ坊の後ろからピョコンっと出てきやがって何しれっと
場を仕切ろうとしてんだよアマラッ!?」
「え~? だって~あたし~これでも震天妖精女王やってる
アマラ=リムル・ユグドラーシュ様だも~ん☆」
「うぜぇ…!!」
どんなに見た目が妖精羽生やした幼女だからってなぁ…!
テメーの実年齢知ったら全員がドン引きすんのは目に見えてんだよぉ!!
「…うぜぇとしか言えねぇ自分が情けねぇ…!」
アマラの偽幼女の攻撃は俺のチート防御を意識レベルで抜いてきやがるから…!
弟子の中で一番戦いたくねぇんだ…!! シャイセ! 伊達じゃねえな三千s
「二度とあたし以外を抱けない凄い接吻に処しますよ~ん」
「おッぎゃあああああああああああああああッ!?」
ほらぁ!? 言ってる傍からぁ!!?
相変わらずこいつの瞬間移動のカラクリがイマイチわからねぇ!!!!
「な~に~? 久しぶりに赤さん遊びしたいの~?」
「端ッからねーよ!!」
アマラ相手にはどうしたって時間停止チート使わないとダメだ糞が!!
何でこいつが俺の弟子になったのかマジでわからねぇ!!
―バチバチッ!
「ふにゃ~ッ!?」
「この色魔妖精! 姑息な真似をしてんじゃあないよっ!!」
「エリー…お前もか」
「…久しぶりだねセンセーっ! 相変わらずディータに踏まれてんのかいっ?」
「ねーよ…」
エリー…家名はない。何故なら今の彼女は南方の魔女皇国の支配者だから…。
「ほい! 先生! ククルだよ!」
もう何処からどんな風に出ようが驚かねぇ。メルがぶち破り降りた天窓から
シュタッと降りてきたのがやはり弟子でやはりロイヤルの
金色天竜王ククルス=ルルカ…エグザムステイルとテッラーラントの
国境にある山脈地帯にて浮遊する大島にある天竜国の女王…。
「出遅れた…」
「まぁまぁ宜しいでは無いですかセイレ」
「フェリス…しかし私はそこの異端者ではない
真正エルフなのだ…それも…それも…」
「勇者だからって先制攻撃できて当たり前とかねーからなセイレ」
「そうですね。お隣の聖女フェリスフェイレスが居ないと
まともに勇者の力が振るえないダメルフですものね」
「…いい気になるなよ異端者が…! 純粋魔力で圧倒はできるのだぞ…!」
「使える全15位階超位魔術であしらってやんぞオラァ!?」
…メルとセイレは頭突き合ったままメンチビーム合戦。
「お会いしとうございました…御神人様…」
「フェリス…その呼び方公私共々やめろってあれほど…」
「そんなこと…おっしゃらないで!」
―むにょおおおおん
「フョウッ!?」
やっぱでけえ…! ちょっと寄られただけなのに犯罪級だわ…
…じゃねえ授業中ッ!!
「さぁ、先生。役者は揃った…選択の時だ!」
「オ前ハ何ヲ言ッテイルンダ」
ぶわっはっはっは! と笑いで返してきたテオス。
「いい加減正式に腰を落ち着けたらどうなのだ余の先生?」
「もうメルがいるんですけど」
「うわっ!?」
フッとセイレとの頭突きメンチビーム合戦をやめたメルが
シュッと俺の腕に自分の半身を絡める…フェリスの後だからなぁ…
テンプレエルフボディが今は残ね痛いごめん抓らないで!?
「そうですよバカ皇子テオスくん。リヒトにはもう私がいるの」
「今はテオス帝だこの老害が」
「あぁん?! もっぺん言ってみろやこのクソガキがぁ!!」
「何度でも言ってやろうこの老g」
「ハイそこまで! 一回黙ろうな二人とも!」
テオスには張り手する勢いで目鼻先にいつでも破壊魔法ぶっぱできる手を翳し、
口から暴言を垂らしそうな汚嫁さんのお口にはもっと汚ぇ俺の汚口で蓋をします。
「ぬ…」「ふむっ!? …んぅ~」
今は舌を入れるなメル! 単なるポーズなんだから!!
「あぅ…昨日の続きを~…」
「今はヤメロ」
「んじゃ、次はあたしが~」
「センセーの意思を重んじろってのっ!」
―ビバババババ!!
「ふんぎゃ~ッ!?」
電気調理でこんがりしちゃった弟子中歳高最弱紙防御なアマラは置いといて…、
「なぁ、お前ら…仮にも一国の主だろうが…何で雁首そろえて
週のド真ん中のド平日のド授業中にすーっと不法参観しに来てんだよ」
「先生よ、余は思うのだが…わかっていて惚けるのは一番最低だぞ?」
「う"…!!」
「テオスの言う通りですリヒト師兄…」
俺の弟子ないし教え子のくせに…これだから英雄どもは…!!
ああ…俺がチート使いこなしに酔って厨病を百年近く疾患してなかったら…!
「リヒトは渡しませんよっ!」
援護射撃が心もとない…頼りないが盾は…?
「英雄が…英雄が…英雄がががががががが…!」
「ノエル?! ちょっとノエル!? しっかりしなさい!
まだ落ちるには早いですよ!?」
揃いも揃って使えねぇ…!
<CHIITO☆SENSEI>
俺的緊急事態にも程があったのでホイホイ使えないボム技といえる
時間停止チートを使い、傍受上等で念話を要ツェットな暗号文で拡散して
皇国の城…ヴァルハランシュタットに飛び込んだ…までは良かったんだが…。
「週も空けずに再び禁裏に現出ですか…ホシミさん…また民に何かしましたね」
「重ね重ね真に返す言葉も御座いません…テッララーント皇陛下…」
常に防護のための呪印香を炊き続けて霧に包まれたような禁裏の中で…
俺は結局一番迷惑とお世話を掛けっぱなしな寝たきりの皇孫…いや、普通に考えて
いつ崩御されてもおかしくない現テッララーント皇イーサイト様のお傍で
皇陛下を天上に帰さんとする死神の気配を回復チート魔術で払っていた。
「……思えば…三つ子の時でしたね…貴方と初めてお会いしたのは…」
「…ええ、最初から御無礼の連続で…大層お心を乱してばかりでした…」
「詮無き事…如何に貴方が我が祖神に等しき御力をお持ちでも…
私と貴方の心の造りには等しく差が無いのです…故に扱いきれぬ力と
御しきれぬ心が…貴方と…貴方の周りの民を諸共に苛むのもまた詮無きこと…」
陛下とお話するのはもののついでという不敬なものだったが…
…クソ…かつては唯の生物だった弟子の多数みたいに幼少期から体と心と魂を
魔改造してねぇから…穴の開いた風船に延々と空気を送る気休めでしかねぇ…。
立場的に俺を本当の意味で叱ってくれるのは陛下しかいないってのに…何で俺は…
「もう良いです。少し貴方の熱に中てられて来ました…」
「…失礼致しました…」
翳す手を引っ込めて直ぐに、陛下は寝台に横たえた体を俺の方に向ける。
「……それで…? 今日は何をしてしまったのですか…?」
「然るべき時に果たす約定を…延々と誤魔化し続けたツケが回ってきたのです」
「……本当に…貴方は90年近く経っても変わらない…」
「変わろうとしなかったのです…千変万化を恐れたのが一番の原因です…」
「そうですか…」
俺は陛下から少し身を引いた。やっぱチートってのは使いすぎちゃダメだ。
「行きますか」
「はい…たまには正面から立ち向かわないとダメですよね」
「貴方には途方も無い時間があるのですから、人のような速度で歩む
必要など無いはずですよ」
「元々イカサマで伸ばしに伸ばして戻れなくなった俺にそんな資格は無いですよ」
「……次の周忌…また会えますか」
「合わせますよ…では、お疲れの無いように…」
「貴方も…」
一礼して俺は禁裏を後にした。
……。
禁裏の出入り口の先は玉座の間のみ。さて、こっからどうすっかな…
転移して来たわけだからいきなり禁裏から俺が出ればまた別の大問題に…
「ふん。やはりか、天には天、皇帝には皇帝しか鬩ぎ合わせられんからな」
「っちゃー…」
…ならなかったが、先送りが向こうから待ち構えてやがった。
近衛さん達を全員石化とかマジで相変わらずバカ皇…帝なのね…。
「おい、ツェット…」
「…! …!! …!!!」
首根っこをテオスに掴まれてぶらぶら状態なツェットは何も言わず、
ただ必死に首を横に振るだけ。
「余らが総当りを仕掛ければ容易いことだと先生は言ったではないか」
「あのな…時と場合を考えろって……そっちじゃねえんだよ…」
弟子中で一番若いからなのかね…?
「今は未だ余の領域に過ぎないが、まぁこれで舞台は整ったわけだ」
「さ~て☆ 70年超待たされたあたし達へのお答えわ~ん?」
「センセー…」
「運命を決めてください…御神人様」
「……あの異端者はノーカンですよ…師兄」
「ほい! ククルかな? どうなんだよ?」
「旦那様…!」
「………ハァ…結局逃げ続けただけなのね…お父様ってば…」
「あの…テオ。そろそろボクを下ろしてくれない?」
シモン、タリス、ファイエル、ヴェルはまぁ…無視するわな。
あいつらは普通に家庭持ってた系だが…こういう時こそ盾になれよ…!
どうでもいい時ばっかり持て囃しやがって…!
「さあ、余の先生よ。其方は誰を正室に迎えるのだ?」
「「「「「「………」」」」」」
「ハァ…いっそのこと学園じゃなくて国を興してしまえばよかったのかも…」
それもっとダメじゃねえかなディータ?
「…長い付き合いだから消去法な。覚悟しろよ」
「「「「「「……ッ!」」」」」」
「ん、ぬ…余とて先生程は長く待てぬ点を鑑みれば…やはりそれしか無いか」
「分かってんならせめて段階を踏めよ」
「先生よ、余を誰だと思っているのだ?」
「…あー…お前はシドやガルガよりも短気だったもんな」
はー…ちっこい頃の吹いただけで死にそうな癖に生き急ぐテオスを
下心満載で魔改造鍛錬した俺の血迷いが招いた事だ。
「まずアマラ」
「が~ん!?」
「いや、まずお前体格差考えろよ…あと年齢差…俺はさぁ…チート野郎だぞ?
チートは確かに万能な面を沢山持ってるが、全能じゃねえんだよ。
俺が強化しまくった老化耐性だってな…心の磨耗と魂の劣化は無理なんだよ。
元々が普通の…それこそカスにすらなれない魔無しの人間なんだからな?
中身が擦り切れた本能だけで動く肉人で良いってんならお前を選ぶぞ?」
「……そ、れは……う、うわ~ん!!」
「うわちょ何でボクなんだよ離r…何処触ってんだこのロリババア!?」
「悪い子は~おね~さんが吸~って~や~る~~~!!」
「ギャアアアアアアアアア!?」
とりあえずこれでアマラは新しい対策が出来るまでの当分は諦めるだろ…多分。
「次…フェリス」
「!?」
いやまだ何も言ってないんだけど崩れ落ちるの早くない?
「聖女のお前に完全な形で手を出したらさぁ…俺、マジで神々と
戦わにゃならんのよ。俺がこっちに来て10年と経たない内に
あいつら干渉してきやがったからな…まぁ、それも俺が存在からして
この世界の物理法則に反したチート野郎なのがそもそもの原因だしよ…」
そもそも…こいつ…生きた罠だもの。誰にも言えないが…
俺の鑑定チート結果と山勘が確実に間違ってれば…
そりゃーもう二次元のオークみたいに思いっきりヤってヤりまくるけどな…?
「つ…次は…」
「おう、お前だセイレ」
「……え?」
「簡単に言えば正統なエルフだからフェリスほどじゃないが、そもそもお前らって
神々の一派に属するんだよ。んで、お前……俺を嫌う神に選ばれた勇者じゃん」
「まー…悪いのは俺がお前を選んだ神々の一柱を最悪な形で騙したのが
一番の原因なんだが…それでも選んで欲しいってんなら…異端どころか
背教で無能化された後で完全な足手まといになる覚悟を持ってくれるか?
俺…戦えないお前を伴って戦い続けられるほど心身ともに万能じゃねえんだぞ?
俺がどんな人間かはよーく知ってるよな?」
「………」
セイレはふらふらとフェリスの元へ行き、背中合わせに座り込んだ。
「ククルカは…」
「く、ククルはなんだよ!?」
「この中じゃ一番軽いんだけど…」
「ほい?! 軽いのに最後ですらないんだよ?!」
「お前、化け物を産む覚悟ある?」
「ほいいい!?」
「見た目こそ近いが、ただでさえ竜族と人間族の混血は異形出産率高いってのに、
微妙だが確実に人種が違う上にチートで滅茶苦茶に弄繰り回した俺の血肉と
原初竜の血を色濃く受け継ぐお前の血肉を交えて産まれるだろうガキが
化け物にならないなんてどれくらい途轍もない奇跡中の奇跡かわかるか?」
「ほ……!?」
「奇跡は滅多に起きないから奇跡ってんだ。そして俺はチート野郎だ。
俺は奇跡なんか塵芥未満でしか信じてねぇからチートを多用して来たんだ。
いいか、それをも受け入れる度量があったとして……お前……
どんな風に産まれるかもわからないし、どんな成長をするかもわからない…
そんな、人間でも竜でもない…人間にも竜にもなれない化け物を…
お前は最後まで愛し抜いてやれるのか? なぁ、どうだ?」
「ほわああああああ!! 軽くない!! 全然軽くないんだよおおおおお!!」
良し、もうバ可愛いククルカは大人しく竜王として生き、
竜王として死ぬしかない…約束は果たしたぜ、マギードラのおやっさん…!
「さて…残るは…」
うん☆ そりゃあエリーもメルも滅茶苦茶深読みでガクブルしてんな☆
勿論言った事は嘘じゃないがぁ…ホントでもないんだなぁコレが!!
…とはいえ、チートによって予期せぬ不具合ってのも事実。
根拠もなしに「愛で乗り切るやってみせる」云々は簡単だ。
でも…それでやらかしたらもう取り返しがつかねぇ。俺は奇跡なんか
脳みその片隅でしか信じてないし。無責任な事はするが、
保険なしにそういうことはしないんだぜ☆
「アタシは…アタシは…?!」
「旦那様…?! ねぇ! ちゃんと産めた私はどうなんですか!?」
…さて…ここからが正念場だ…ぶっちゃけエリーは女しか生まれない
魔女族だが…俺の鑑定チートさんは不穏な点を今のところは何一つ見つけてない。
昔は暇さえあればガチ嘗め回し見のついでにステータスを見まくってたが…
どういうわけか魔女族は女しか生まれないっていう性決定因子の特異性以外、
まるで地球人種と変わらんのだ。だから…回避策が俺の脳みそでは
「これはひどい」のしか出てこない…俺は…ノンケで絶倫なんだぜ?
迎合の度量なんてチート野郎に期待するとかマジないからね☆
チートあるのに自分の意志曲げるってどんだけーって感じでしょ?
「……あ」
「「あ…!?」」
おっと…無用な刺激…。とりあえずメルの事をおさらいしてみるか…。
俺がこっちに来て初めて出会ったときのメルは…ガチ4歳児っていう
嘘か真かガチ幼女エルフだった。この時点でもうほぼ事案ですね。
通算278年の一番長い付き合いだが…そのせいかもう色々知りすぎた。
メルの両親はセイレ達正統エルフが信ずる神とは違う神を信仰し、
あまつさえ高祖の代にその神の血を入れたことで異端となった。
だから浅黄色とか金髪碧眼系のエルフとは違って日本人感覚(俺主観)で
馴染みやすい黒髪黒目系のある意味手前勝手な和風感漂うエルフだった。
鑑定チートさんはその辺で結構色々暴いてくれたが…うん。それも含めて
当時の俺はもうダメだったわ、ガチクズ魔法使い二年生で据え膳を食わないとか
異世界転移までしておいて迎合もクソもねぇもん、大人年齢(俺主観多々)に
達した段階でうまい事誘導に誘導を重ね…相手幼女からの付き合いだったから
結果的に洗脳に洗脳を体諸共に重ねちまって…オギャーラッシュです。
いや、ラッシュって言ってもエルフの妊娠出産率は生物学的にも
低いので、今日までに一人産まれるか産まれないかの所を
三倍強っていう結果を叩き出したんだから十分ラッシュだろ?
ただ…そういうわけだから…当然正統エルフの神々は良い顔しないし、
逆に異端エルフの神群はやや揉み手だったので…このままだと確実に
俺陣営に異端神群が後ろ盾になるが…神対神のアーマゲドン×ラグナロク不可避。
せめて神対悪魔系か邪神だったら良かったんだが…この世界の創造神が
言うまでも無く正統エルフの神々の最高神なので…つまりそういうことだ。
あー…コレ却って不安要素増やしただけのデバッグ地獄じゃねーかな?
ただ…この事実だとメルは燃える。燃え盛る。最高潮に燃え滾る。
これまでに見え隠れしてたが…メルって…俺とファイエル以外で
完全に気を許せる相手が居なかったせいで…病み系DQN要素が…。
だから「じゃあ邪魔なのを一つ残らず粉砕すればいいじゃないですか」
って…言うんじゃない…? …結構な高確率で?
…そんな虐殺ルートは願い下げだ…俺はそこまでゲスじゃあない…!
や、やっぱりエリーを残すしかないのか…?! 女しか生まれない民族に…
たった一人の男とか…「皆と試せば楽しく奇跡待ちできるよセンセーっ!」って…
そんな最初だけの天国の後から真綿首絞地獄なんて俺には無理ッ!!
だああ畜生ッ! 厨病長期疾患中だった約百年前の俺をぶっ飛ばしに行きたい!!
結局210過ぎてから厨病核爆発して自惚れた自業自得か!?
「あの…センセーっ…?」「旦那様…?」
「…はっ!?」
おい待てここまで何分経過してた!? やっべえぞ!?
「あぁ…二人とも…選ぶに足る理由と…拒む理由が…ちょっとな…」
「……はい…そう、でしたね…」
「アタシは…その…っ」
「「「………」」」
ほんの少し時間を稼いだ…のか? テオスはテオスでなにやら真剣な顔だし…
事実上振った四人のほうは兎も角…あ、ツェット干からびてる…まぁ、
それくらいで死ぬほど柔な鍛え方してないから…放って置くとして…。
「……決めたぞ」
「「!?」」
「…いよいよか」
俺は…一つの答えを…示した。
<三時限目はここまで。生徒の皆さんは明日に備えてください>