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ネノンの童話  作者: 鈴代なずな
もちろんなんにも喋らないから、ネノンはひとりで考える。
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ネノン言いたくなかった

 ゴッスたちに言われるがまま、ネノンは色々なところへ行かされた。

 最初に行ったのは公園で、ところどころに掘り起こされたような凹みのできた砂地で遊ぶ子供たちを、ゴッスたちが馬鹿にして、その子が泣くのを見て笑うという様を隣で見せ付けられた。ゴッスが言うには、「あいつらがどれだけ馬鹿かを教えてやってる。ありがたく思え」ということらしい。ネノンは心が痛んだけれど、言い返すことはできなかった。

 その次は河原で、そこには昨日、ネノンが庇おうとしていた女の子たちの姿があった。みんなで河原に集まって、絵を描いていたらしい。

 ゴッスたちはその中に入っていって、女の子たちの絵を徹底的に貶した。言い分は昨日とあまり変わっていなくて、「下手な奴が何をやっても無駄だから、無駄な努力をさせないようにしている」らしい。

 ネノンはやっぱりそれを見せられた。女の子たちもネノンを見ていた。戸惑うような、悲しいような、ひょっとしたら嫌うような、軽蔑するような目だったかもしれない。曖昧なのはネノンが見ないようにしていたのと、途中で女の子のひとりがスケッチブックを放って、泣きながら走っていってしまったからだ。他の子もそれを追って、みんないなくなった。ゴッスたちはその背中を見て、ざまあみろと大笑いしていたけれど。

 南の広い通りを歩いていると、そこにも歩いている大人の人は誰もいなかったけれど、ひとりだけ男の子がいた。

 それは大事そうに箱を抱えたエインで、もちろんゴッスたちは、また彼を批難し始めた。箱を取り上げるまではしなかったけれど、彼のガラス玉のコレクションを否定し続けた。

 そして今度はネノンにも同調を求めてきたのだ。

 お前も何か言ってやれと言われて、エインの前に立たされた。彼がどんな顔をしていたかはわからない。俯いて、とても顔を見られなかったから。

 それでもゴッスたちに威圧されて、震える声で「意味がないことはしない方がいいと思う」と言ってしまった時、彼が強く拳を握るのが見えたし、ぎゅっと息を詰まらせるのもわかった。

 ネノンはそのあとも連れ回されて、子供を見つけるたびにゴッスたちが批判するのを見せ付けられたし、時にはエインの時と同じように、ネノン自身もその仲間に入れさせられた。

 やっとそれが終わって、解放されたのは、空がすっかり赤い色に染まる頃だった。雲でもあればよかったのに、何も異物が飛んでいない赤色の空だ。

 いつもなら綺麗な夕焼けだと思えたかもしれないけれど、今のネノンには少し恨めしかった。血の色だ、なんて考えてしまうくらいに。

 だから、時々ネノンの頭に何かがべちゃっと降ってきても、それはきっと空が流した血に違いない。だって頭に手を当てて、落ちてきたものに触ろうとしても、濡れてすらいなかった。ただ手を見ると、夕焼けに染まって真っ赤に見えるのだ。

 目が焼けてしまうような気がして、ネノンは空を見るのをやめた。そして足元だけ見つめて歩く。もちろん家に帰るためだ。赤く染まった街には誰の姿もなかったから、誰かとぶつかる心配もない。

 ネノンは、タコの像が建つ噴水の広場までやって来た。じっと見つめている足元の石の形が少しだけ変わったから、そこが噴水の広場だとわかった。

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