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ネノンの童話  作者: 鈴代なずな
だけどネノンは、今は一緒に遊べる気分じゃなかった。
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ネノン正義に燃えた

 ネノンが見つけた男の人は、だけど全然見たことがないわけじゃない。紺色のスーツに、同じ色のベストと帽子。ごちゃごちゃした変な道具を腰に下げて、ビシッと姿勢よく立っている。

 顔はオウイよりずっと若いけど、自分よりはずっと大人だった。顔も身体も、町で見かける普通の優しい男の人という感じがする。だけどその服を着ているとちょっとだけ普通じゃない。

(わ。警察の人だ)

 ネノンは少しびっくりして、思わず立ち止まった。

 町の人は基本的にいい人だけど、たまには悪い人もいる。だから警察官だっている。そして警察官はネノンと同じように町を見回って、ネノンと同じように困った人を助けているのだ。

 しかもネノンとは違って、悪い人を捕まえたりもするわけで、ネノンは尊敬していたし、同時に少し怖かった。自分がうっかり悪いことをしたら、捕まってしまうのだから。

 だけど今は誰かを捕まえているわけでもなくて、どこかの家の主婦のような女の人と話していた。警察官は真剣な様子だし、女の人はすごく困った顔をしている。まだちょっと遠いから、何を話しているかはわからない。

 近付いたら怒られるかな? と思いながらも、ネノンはそれでも気になって、少しずつゆっくりと歩み寄っていった。こそこそしながら近付くと、だんだん声が聞こえてくる。

「それで、この灰色のコートの男に、何か心当たりのようなものはありますか?」

「いえ、特には……私は少し前に引っ越してきたばかりなので」

「引っ越してきた?」

「三ヶ月ほど前です。ここは夫の祖父の家で、祖父が亡くなったものですから」

「?」

 最後に首を傾げたのはネノンである。警察官の方はは「なるほど」と言いながら手帳に話をメモしている。

 ネノンにはよくわからなかったけど、とりあえずそのまま話を聞いていると、少ししてそれも終わるようだった。

「わかりました。では捜査に進展がありましたら、またご連絡いたします」

「はい、よろしくお願いします」

 と言って話は一区切りついたらしい。それを見計らって、ネノンはそこに声をかけた。

 今ではこうして、自分から大人に声をかけることもできるようになったのだ。

「え、えとっ! ど、どど、どうかしたんです、か?」

 まだ少し緊張してしまうのは仕方ない。

 だけどふたりはちゃんとこっちを向いてくれた。

「おや、キミは?」

 身を屈めた警察官に問い返されて、思わずびくっと震えてしまう。だけど怖いのを必死に堪えて、どうにか答える。

「えとその、わたし、ネノンって言います。それで、えと、何か困ったことがあったのかなと思って」

 すると警察官は顔を優しくしながら、敬礼のポーズをしてみせてくれた。

「僕はジューンズだよ。困ったこと、というか……そうだね」

 少し考えてから、立ち上がって言ってくる。

「実は最近、この近所に空き巣が出るんだ」

「空き巣?」

「泥棒ってことさ。留守の家に入り込んでお金や物を盗む、っていうね。だから僕は、そのための調査と見回りをしてたんだよ」

 ちらっと女の人を見やる。どうやらその人も被害者らしい。ジューンズはさらに続けた。

「まあ今回の犯人は、お金を全く盗まないんだけどね。狙うのはだいたい古い本や絵、あとは写真とか置き物とかで……いまいち狙いがわからないんだよなぁ」

 と言って腕を組みながら、片手を顎に触れさせる。

「荒らされた部屋も水浸しだったり砂まみれだったり……窓が内側から割られてたっていうのもあったっけ。なんなんだろうなぁ」

 それはネノンに話すというより、喋りながら自分で推理しているという感じだった。おかげでネノンはきょとんとしたまま、彼を見上げるだけになってしまった。

「あぁごめんごめん、ついね」

 少しするとジューンズはようやくハッと正気に返り、ネノンの方を向いてくる。

 申し訳なさそうに苦笑して、ぱたぱたと手を振って。

「とにかく空き巣は昼間に出やすいから、明るいといっても油断しないようにね。何度も家の周りをうろうろしてたり、変に家の鍵を弄ったりしてる人を見かけたら、すぐに僕や近くの大人の人に知らせること」

「はあい」

 素直に頷く、ネノン。

 ジューンズはその返事に満足して頷くと、女の人にも別れを告げて、また見回りか調査かに戻っていった。女の人も、後ろにあるのが自分の家だったみたいで、そのまま中に入っていく。

 残されたネノンは、警察官がすっかり見えなくなるまで、はへーっと見送ってから、「よし!」と大きく頷いた。

「困ってるなら、助けなくちゃ! その空き巣っていう悪い人を見つけて、捕まえようっ」

 鼻息荒く意気込んで、ぐぐっと両手で拳を握る。

 泥棒なんて少し怖い気はしたけれど、人助けのためならそんなこと言っていられなかった。ハスラットは頑張っているし、自分ももっともっと困っている人を助けたい。その気持ちがネノンの中でとても大きくなっていた。

「昼間に出るって言ってたから、今から探せば見つかるかもしれないよね」

 きっとそうに違いないと考えて、ネノンは早速、見回りを始めることにした。警察官の人と同じ方向に行っても仕方がないから、別の方向を目指す。

「うーん。悪いことをするんだから、きっと、もっと人が少ないところにいるはずだっ」

 さっきのジューンズの真似をして腕を組みながら、真似して推理みたいに言ってみる。思い付いたのは大したことではなかったし、そもそも今いる道も人はほとんどいなかったけど。

 それでも、もっと人が少ない道を求めて、ネノンはとりあえず、すぐ横にあった脇道の奥へ行ってみることにした。

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