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ネノンの童話  作者: 鈴代なずな
ネノンはそのまま転がって、壁にぼふんっとぶつかった。
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ネノン走った

 ぽんぽんに留守番を任せて、ネノンは外に飛び出した。

 家は町の隅っこにあって、裏は森になっている。奥まで入るときっと迷子になるから、外で遊ぶ時は家の前にある原っぱしか使わない。今は冬だから花が少ないのは寂しいけれど、とにかくネノンは家を見上げた。

 知らないうちに煙突でもできたのかなと思ったけど、布の家の屋根はいつも通り。

丸っこい三角形で、鳥の石像が飾ってある。トカゲやヘビみたいな顔をした、変な鳥だ。どことなくカマキリにも見える。形が変なせいか、時々気のない相槌みたいな音が出して、それがいいやら悪いやらだ。

 他の飾りは何もなくて、尖った石の先っぽがいくつか地面から顔を出しているくらいだった。

「うーん。街の方かな?」

 家はなんにも変わりがなかったから、ネノンはくるっと回って街の方を向いた。丘のようになっているおかげで、ネノンの家からは町がよく見渡せる。

 ネノンの家とは違って、石や木を使ったしっかりした建物ばかり。みんな好き放題に建っているおかげで、ごちゃごちゃしているけど、自然と道ができている。そんな町。

 目の上に手を当てて、それをぐるっと見回してから、ネノンはなんとなく頷いた。

 そうと決まれば家に戻って、急いで着替える。白のケープに赤と黒のチェック柄をしたフリルスカートは、最近自分で作ったものだ。それをぽんぽんたちに見せ、拍手みたいに跳ねてくれるのを確認してから、ネノンはぱたぱたと原っぱを下りていった。

 平坦な石の道になると、街に来たんだと思えてくる。普段はほとんど家から離れないせいで、少し緊張してしまう。ネノンは変じゃないかなと気になって自分を見下ろしながら、自分より身体一つは大きいような大人の人たちが歩く中を、こそこそ隠れるように進んでいった。

 そうして少しずつ、だんだん気が落ち着いてきた頃に、ようやく周りを見回し始める。ネノンは小さいから、上を見るのは少し大変だった。

 それでも見えたのは、ほとんどがお店の看板。古書屋、骨董屋、鉱物屋、御呪い屋に神像屋。変なお店ばかりで、ネノンは半分くらいわからなかったけど、きっとそういうものなんだろう。大人になればわかるかもしれない。

 けれど、どれを見ても管とは関係なさそうで、ネノンはまた首を傾げた。

「上じゃないなら、下かな?」

 閃いて、ネノンは地面の方を気にすることにした。小さいおかげで、真っ直ぐ前を向くだけでも地面を見られるけど、それよりもう少しだけ下を向く。

 石を並べた道に、歩いてくる大人の足が見えた。大きかったり、そんなには大きくなかったりする足だ。履いている靴は色々で、スニーカーもあれば革靴もあるし、ハイヒールだったりブーツだったりもする。時には何も履いていなくて、水かきが付いていることもあった。

「……あれ?」

 何か不思議な気がして、ネノンは顔を上げた。けれど周りに不思議な人はいなかったし、また下を見ても不思議な足はなくなっていた。

「そんなこともあるんだよね、きっと」

 気にしないことにして、ネノンはまた前を向いた。すると。

「こっちこっち! いい場所見つけたんだって」

「よし、そこであれやろうぜ!」

「またかよ、今度はあれの方がいいって」

「それよりまたあれがいるんじゃねえの?」

 口々に言い合いながら、何かが走ってきた。ネノンよりは大きいけど、大人よりはずっと小さい人の影。ネノンと同じくらいの歳らしい、男の子たちだった。

 知っている子というわけじゃない。というより、ネノンは町にいる人たちのことを、大人でも子供でもほとんど知らなかった。家が隅っこにあるせいで、いつも家の中か、周りの原っぱで遊んでいたからだ。

 その四人組は、通りの人を避けながら、ばたばたとネノンの横を通り過ぎていく。もちろん声はかけられなかったけど、ネノンはその子たちを追って振り返った。

 そしてついつい、ネノンは同じ方向にとことこ走り出してしまった。仲間に入れてとは言えないけど、あんまり見ない自分と同じくらいの子たちが、少し気になってしまったからだ。

 けれど男の子たちは足が速いし、慣れた様子で角をくねくね曲がるせいで、だんだん遠くなってしまう。

 最初のうちは「こっちの方かな?」と追いかけることができたけど、そのうちさっぱりわからなくなって、ネノンはとうとう立ち止まった。

 そこは……なんと森の中だった。

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