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ネノンの童話  作者: 鈴代なずな
ネノンはそのまま転がって、壁にぼふんっとぶつかった。
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ネノン転がった

 ネノンは――

 ころんっと穴の出口から転がり出た。

 そしてそのまま転がって、壁にぼふんっとぶつかった。

 目は回っていたけど、痛くはない。だってそれは、布の壁だったから。

「……はへ?」

 逆さまになった格好で、ネノンはきょとんとまばたきする。最初に見えたのは、金色のピカピカ光る鉄の管だった。そして次に、それとの間に白い毛玉がぽんっと落ちてくる。ぽんぽんと鳴きながら飛び跳ねて、ネノンの鼻にちょこんと乗る。

 そこでようやく、ネノンは逆さまじゃなくなった。木の色をした布の壁からずるずる動いて、布の床の上に倒れる。そうしてから立ち上がって、改めて見回す。

 他の部屋に続く扉があるけど、テーブルも椅子もなくて、絨毯もない、遊び場になっている広間。そこは間違いなく、ネノンの家だった。

 そして自分が転がり出てきたのは、いつの間にかそこに現れていた、金色をした鉄の管。ネノンが入れる大きさじゃなかったけど、間違いなくネノンはそこから転がってきたのだ。

「なんだろう? 何が起きたんだろう?」

 よくわからなくて、もう一回部屋の中を見回してしまう。

 だけどもちろん、変わらない。テーブルが急に出てくることも、椅子が急に出てくることも、絨毯が急に敷かれることもない。ただ、ぽんぽんが跳び回っているだけ。

「あれ?」

 だけどそれを見て、ネノンはまたきょとんとまばたきした。跳び回っているぽんぽんが、いつもより多い気がする。

 ちゃんと数えたことはなかったけど、きっと今朝見た時より増えている。だってぽんぽんは、まるで新しく入った子を歓迎するように、その子を囲んで跳ねていたから。

「あ、そういえば」

 そんな時、ネノンはふともう一つ気が付いた。ぽんぽんが増えている代わりのように、金色の管が一本減っているのだ。一番端っこにあった管、ネノンはそこから出てきたように思うのだけど、そこはただの壁に戻っている。

「なんでだろう?」

 首をひねって考えてみるけど、わからなかった。

 ただ、わからないけど、ネノンはなんだか嬉しかった。ぽんぽんが増えてくれたことも、ハスラットにちゃんと謝って、お礼を言えたことも。

 思い出すとまた恥ずかしくなってきちゃうけど、やっぱり嬉しい方が大きい。

「わたし、できたよねっ?」

 ぽんぽんたちに向かって言うと、みんなも褒めてくれるように飛び跳ねて踊り始めた。

 それを見て、ネノンも一緒に飛び跳ねた。飛び跳ねて、一緒に踊った。

 ぽんぽんたちと遊びながら、ネノンは少しだけ、大人になれたような気がしていた。

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