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こちら悪役養成科

作者: ゆきまろん

拙作ですがよろしくお願いします。

「ミラ=ヴァーミリア!今、この場を以って貴様との婚約を破棄する!」

「なっ…!」


高い高い天井に吊るされた、光り輝くシャンデリア。高級感あふれる絨毯や壁紙。


全てが煌びやかな空間の中に、一人の男の声が響き渡り、会場に不気味なほどの静寂を生み出した。やがてそれは観客たちの喧騒に姿を変え、その場を渦巻く。


声を発した男が、目の前にいるつり目気味の女性に指を突きつけながらもう一方の手で抱きしめるのは傍の小動物のような女性だ。


あり得ない宣言に、信じられない光景に、公爵令嬢、ミラ=ヴァーミリアはワナワナと震えながら、拳を握りしめ顔を真っ赤にした。


「どういうことですの…!レイナルド殿下、この婚約は我が公爵家と王家の間で結んだ正式なもの。破棄など認められるはずが…っ!」

「それは違うぞミラ。お前はヴァーミリア家の名に泥を塗った。よってお前を公爵家から追放とする」

「お、お父様!わたくしが…わたくしが何をしたというのですか!」

「まだ惚けるか!貴様が殿下の恋人であるマリア嬢に悪質ないじめを行っていたのは既に周知の事実だ」

「…っ!そのような事存じ上げませんわ!」

「黙れ!確固たる証拠があるのだ、今更言い逃れできるものか!この者を捕らえよ」

「そもそも…その女が悪いのですわ!殿下の婚約者はわたくしだったのに…っ!この、放しなさい無礼者!」

「ミラさん…レイナルドは貴女とのことで随分と悩んでいました。もう彼を解放してあげてください」

「この女狐がっ…!殺す、殺してやるっ!」


この国の第一王子であるレイナルドが手を振り命令した途端に周りの兵がミラを押さえつける。髪を振り乱し、呪詛の言葉を吐くミラを庇護する者は、もう誰もいなかった。


「お前の処刑は明日だ」

「殿下…っ!わたくしは、ただあなたの為をと思って…!平民など御身の血を汚すだけではありませんかっ!」

「マリアは俺のことを、身分じゃなくて俺自身を見てくれた人だ。貴様ごときよりもよっぽど尊いだろう。…何をしている、早く連れて行け」

「はっ!ほら、早く立て!」


兵士がレイナルドの命を受け、ミラを連行する。


そして会場から出る、ちょうどその時、ミラは最後の抵抗かのように狂った笑い声をあげ、声を張り上げた。



「お前ら…全員呪ってやる!許さない…許さないんだからっ…!」

「ほら、黙って歩け!」

「みんな醜く死ねばいい…あははははっ!」


バタン!


金の装飾に彩られた大きな扉で、ミラの狂った笑い声は途切れた。訪れた静寂に、安心したようにレイナルドとマリアは見つめ合い、そっと抱き合う。


その後誓い合うかのような熱い口づけを交わした二人に、人々は先ほどの修羅場も忘れたようにただ、祝福の拍手を鳴り響かせた。






その頃、地下牢にて。


先ほどミラを連行した兵士たちは揃いも揃って寝こけていた。ただし、彼らを襲ったのは睡魔などではなく人為的で物理的な攻撃であったが。


ふー、と息を吐いたその犯人は、不安げに瞳を揺らすミラに微笑んで見せた。続いてパチパチとその手から鳴らされた拍手は、がらんとしたその地下牢によく響く。


「いやぁ、素晴らしかったですよ、ミラ=ヴァーミリア!先生は実に満足しています」

「先生…それでは…!」

「えぇ!文句のつけようのない合格です。あぁ、一つ減点がありましたね…まぁ、一先ず学園に帰りましょう。話はそれからです」

「はい、了解ですわ」


ぱちん、と軽快な音が鳴らされた直後、そこには気絶した兵士しか残っていなかった。











ーーいきなり音もなく降り立った二人に、その場にいた人物達は驚くことなく顔を輝かせた。そのうちの一人、軍服を身にまとった青年が前に進みでる。


「…ミラ、結果を報告しろ」

「わたくしを誰だと思っているのカイル。失敗するわけがないじゃない!そっちこそどうだったのかしら?」

「愚問だな。任務は遂行するに決まっているだろう」


上から見下すように笑うミラに、嘲るような笑いでカイルと呼ばれた青年は返した。それを皮切りに周りの性別も服装もバラバラな人物達が、次々にミラに話しかける。そんな彼らに共通することといえば、全員どこか悪役らしい雰囲気を漂わせているということか。


「はい、そろそろ席に着きなさい。じゃないと全員減点ですよ。…はい、よろしい」

「先生ぇーミラは満点だったんですかぁー?」

「お前、ミラはこの学年のツートップの片割れだぜ?もちろん満点に決まってんじゃねーか」


「それが…わたくしとしたことが、どうやら失態を犯してしまったようですの」

「…ふん、油断しているからだ。ちなみに俺は満点だそうだ」

「喧嘩を売っているのかしらカイル。いいわよ、言い値で買ってあげましょう」

「ほぉ…俺は女だからといって手を抜くほど優しくはないぞ」


「こらエリートカップル、教室でいちゃつくんじゃありません。これから話をするんですから黙って聞きなさいね」


ごつん、と落とされた拳骨に、ミラとカイルは揃って顔を歪めた。静かになった教室に満足したように頷いた眼鏡の教師は、ツカツカと教壇まで歩を進める。


「それではキャラ育成学園悪役養成科第57回生諸君の卒業試験の結果を発表します」


真剣な面持ちで告げられた言葉に、誰かがゴクリと唾をのんだ。また誰かはガタン!と席を立ち上がり、その後ろはガタガタ!とより勢いよく机を押しのけ、はたまたその後ろはガタガタガタ!ドンガラガッシャーン!と壮大にぶちこけた。もちろん教師からの拳骨三連続である。


ごほん、と咳払いした教師は手元の資料をペラペラとめくり、しばらくした後顔を上げた。


「まずアイザック。役回りは、勇者のパーティーで親友として彼を長年支えてきたが、実は魔族に通じた裏切り者。その事実を知ってたじろぐ勇者から聖剣を奪い取り、魔王に献上するものの用ナシとして魔族に切り捨てられる。最後の力を振り絞り勇者に聖剣は魔王城の宝物庫にあることと、魔王の弱点を告げ力つきる…ですね?」

「おう!」

「まず結果は合格です。あの最後の『俺は…金に目がくらんじまった大馬鹿ものだ。けどお前は道を違わないでくれよ…勇者様。世界は、頼んだぜ…』はよかったですね」

「あ、改めて言われると恥ずいっつうか…やめて欲しいんだけど…」

「しかし点数は72点です。減点の理由はいくつかありますが…主なのはこれですね。自分が裏切り者だったと告げる際のゲス顏が微妙でした」


アイザック、と呼ばれた槍をもった青年は合格という言葉に顔を輝かせつつ、72点という批評に肩を落とした。


またぺらり、とめくられる資料。


「そして篠崎雪菜。いじめに遭っていた女の子に優しく接し唯一の親友となるものの、彼女が自分の好きな人と付き合い始めたのが許せず影ながらいじめに加担する。彼と彼女の仲を引き裂こうともするが失敗し、結局は悪質ないじめがバレて退学処分…という役回りでしたね」

「そうなんですよぉ〜。けどぉ〜あたしあんな男の子全然タイプじゃなくってぇ〜」

「結果は合格、点数は82です。よかった点は…『なぁに?あんたあたしのこと友達だと思ってたの?だっさ!』これが一番悪役らしかったです。しかし退学になる際、もう一セリフ…『謝ったりはしないわ…けど、頑張んなさいよ!』くらい添えれると奥手な二人を後押しできたのですがね」


制服を着たツインテールの少女は、教師からの言葉にぺろっ、と舌を出しながらも合格という言葉に笑みを浮かべた。


「ユーリ、合格77点。レイオル、合格83点。ゴルドフ、不合格53点。優也、合格ーーー…」


細かいデータがそれぞれ書かれたデータを一人一人に渡しながら教室を回る教師。


渡された紙を見て、歓声が上げたり泣崩れたりと様々な反応を示すクラスメイトを、ミラは横目で眺めていた。その、どこか物憂げな表情に、その隣に座ったカイルが思わず、といった風に声をかける。


「…なんだ、寂しいのかミラ=ヴァーミリア」

「わたくしのことはミラ、とだけ呼びなさいカイル。…いきなり何のお話しかしら?」

「卒業、についての話を俺はしている」


クラスメイト達に向けていた視線をカイルに向けながら、ミラが浮かべたのは嘲るような笑み。いかにも悪役らしいその表情に、目を反らすことなくカイルはじっとミラを見つめている。


「寂しい、なんて思ってませんわ。だってわたくし達はやっとこれで解放される…自分達の運命を歩めるのよ?どこに嘆く要素があるというの」

「俺と、会えなくなってもか?」


指摘した事実にぐっ、と言葉に詰まったミラに追い打ちをかけるようにカイルは床に跪いて、ミラの白く綺麗な指もそっと持った。


抵抗するかのように手を引こうとするミラを押し止めながら、下からその瞳を見つめる。


「俺はお前と会えなくなるのは寂しい。同じ世界にいるならいい、たとえ何を滅ぼしてでも、本物の悪になっても俺はお前を探し出そう。…しかし」

「いいわ、カイル。その先は言わないで。…どうにもならないことじゃない。私たちは卒業する、そして別々の世界に転生する。学園長が、神がお決めになったルールよ、従わなくちゃ」


何か言いたげなカイルを目で制して、ミラが思いを馳せるのは、この学園のこと。



生まれた時には彼女はもうここにいた、否、この学園で生まれた。教師達が親代わり、周りにも大勢いる同じような境遇の子供達は兄弟のようなものだった。


その中でも頭一つ抜けて大人びていたミラとカイルは、自然とみんなの姉と兄ポジションに収まり、そういった経緯の中で意気投合していった面もある。


そしてある程度歳を経て、知ったこの学園という場所の存在意義、自分達の役割。


ヒーローがいなければ救われない世界がある。


モブがいなければ成り立たない世界がある。


怪人がいなければ停滞する世界がある。


そして、悪役がいなければ幸せになれない世界がある。


ここ、キャラ育成学園は学園長こと神の下でそれらの人材を育成する場所。学園長に生み出された命であるミラ達は、ヒーロー養成科、モブ養成科、怪人養成科、悪役養成科の何れかに属して各々のキャラを磨く。


そして卒業試験と称して悪役養成科なら悪役をこなすのだ。不合格のものはまた1年後に再試験(学園内での時の流れは特殊だが)を受け、合格のものはこの学園での記憶をなくし、尚且つそこで磨いたキャラとスキルは持ったまま転生する。


ここで生まれ育った生徒達は、幼い頃からの教育で転生することを第一としている。それが世界のためだから、と。ミラもその一人だが、合格という言葉を、どこかで否定したい自分がいるという矛盾を抱えている。


原因はミラ自身、分かっているつもりだ。今自分の手を握り、端正な顔でこちらを見つめてくるカイルのせいだと。


基本、学園で恋愛は禁じられていない。そしてカイルとミラは学園でも有名なエリートカップルだ。


ぶっきらぼうな常の中、たまに見せる優しさと笑顔に惹かれたのはいつからだったか。そしてカイルも自分のことを好きなのだと、気づかないほどミラは鈍感でもなかった。


いつしか好き、という感情すら超えて、隣にいて当たり前の存在だった彼。しかし転生すれば、その彼のことすら忘れてしまう。心の中に生まれた葛藤、それにどう折り合いをつけていいのか、分かるはずなどなかった。



「俺は、この学園のルールよりお前が大事だ。お前は、俺のことをどうとも思っていないのか?」

「…じゃない」

「声が小さい」

「なんとも思ってないわけないじゃないっ!」


それだけに目の前で飄々としているカイルが、ミラは憎らしかった。どうにもならないことを訊ねてくる彼に、苛立ちが募る。


「わたくしだって…わたくしだって、一緒にいたいわよ!けど仕方ないじゃない、どうにもならないじゃない!…どうしようもないのよ…」


じわりと滲む涙も、次第に大きくなる声も、抑えることができない。混乱したように泣き噦るミラを、そっと立ち上がったカイルは抱きしめる。


「ふん、それでも稀代の悪役令嬢と謳われたミラか?悪役なら最後までずる賢く頭を働かせるものだ」

「…なにか、方法があるっていうの?」

「なに、単純ではないか」


抱きしめていた手をそっと離し、カイルは悪役らしいニヤリとした笑みを浮かべた。軍服を見にまとい、両手に彼の愛武器である魔法銃を構え、悠然と佇む姿は、正に悪巧みをしている悪役軍官そのものである。


「合格がチャラになるくらいの不祥事を起こせばいいのだよ」


「先ほどから声が大きいし、いちゃつかないでください。あと、馬鹿ですか、あなた方は」


ミラは、黒い笑みで近づいてきていた教師に気付いてはいたが、どうにも出来ず二人揃って拳骨を落とされる。


「…斯くなる上は教官殿を襲撃し合格を取り消してもらうほかないか」

「教官じゃなくて先生と呼びなさい、カイル。人の話は黙って聞くものです」


メガネのその人に押さえつけられ渋々座るカイルにつられてミラも席につく。


頭が痛い、といったようにこめかみを押さえる教師は、一枚の紙をミラとカイルにそれぞれ差し出した。


「ミラ、役回りは第一王子の婚約者である公爵令嬢。性格はワガママで傲慢、王子と学園にて仲睦まじいようすの平民マリアに嫉妬し、集団で悪質ないじめを仕掛ける。王子の十八歳の誕生パーティーにて悪事を暴かれ、処刑を命じられる…ですね。いやぁ、本当に見事でした。見ていて鳥肌が立ちましたよ」


「…ありがとうございます、先生」

「もちろん合格、しかし98点です。理由は言わなくてもわかりますね?」

「いえ、先生。わたくし全くわかりませんわ」

「ミラ、とぼけないで」

「…最後まで純然たる悪役を通したこと」

「その通り」


渋々といった様子で答えたミラに満足げに頷き、教師はまた教卓に立って教室をグルリと見渡した。


「みなさん、いいですか。悪役に大切なものはいくつかあります。あくどい笑み、ずる賢い思考回路、しかし最後にはヒーロー側が勝つような隙を残す…。そんな悪役の一番主な役割は最終的にヒーロー達の背を押してあげれるような存在になったりすることですね」


たとえば、と教師は槍を持った青年を指差す。


「アイザック、君の世界で勇者は簡単には騙されない慎重さを持ちました。裏切り者ながらも幼馴染の死、というものを体験した勇者は心理的にも成長し、無事魔王を倒せましたよ」

「あ、そうか。よかった〜」


あと、君も、と次に指差されたのはツインテールの少女。


「雪菜、あのカップルは君が最後に見せた笑みに背を押されて今はゴールインです」

「まぁ〜あたしにかかればそんなものじゃない?」


「という風に悪役は最後の最後には何故かいいやつ風の言動などをチラつかせるのがデフォです。例外ももちろんいますがね。しかしミラ、君は最後まで呪詛の言葉を吐き続け彼らにとっての悪役であり続けた。理由を聞かせてもらえますか?」


クラス中からの視線が降り注ぐものの、ミラは動じずに小さく肩を落とした。


「だって、わたくしがいつまでもあの子達にとっての悪役であり続けなければ、第二の悪役が現れてしまうかもしれないではありませんか。あの子達はあれでハッピーエンド、第二、第三幕はなくてよろしいもの」

「実に甘いな、ミラ。しかし俺は君のそういう所が好きなのだが」

「その減らず口閉じなさい、カイル。誰が甘いですって?」


「まぁまぁ、二人ともお静かに。ミラ、あなたはこの学園から少しでも弟や妹にあたる子達の悪役を減らしたいのですね。…うん、やはり君には賞賛を込めて満点を送らせてください…といっても元から君は満点ですけど」


「へ?」

「いえ、ただ理由が聞きたかっただけなのですが嘘をついてすみませんでした」


教師からの言葉に目を丸くして手元の紙を覗けば、そこには『キャラ育成学園悪役養成科第57回生ミラ、満点で合格』の文字。


「そして、カイル。君も満点合格…ここから先は初めていうことなのですがね、満点の子には学園長からのご褒美として、なんでもお願いを一つ聞いてもらえるんですよ」


「それ、って…」

「行くぞミラ!」


教師から告げられた言葉は即ちーー、


「考えている暇があるならさっさとするぞ、学園長に会いに行こうではないか」

「え、けど…みんな卒業するのにわたくしたちだけこんな…」


クラスメイトを置いて自分だけ望みを叶える躊躇いにたたらを踏むミラの背に、誰かの手が振り落とされた。


「いっ…つ!」

「あっれ〜悪役養成科のエリートがこんな時に躊躇って無様ですねぇ〜」

「ゆ、雪菜…」


「何してんだよカイル。お前強引にでも連れていかねぇならミラ俺がもらってもいいのか?ミラって結構いい体してんよな」

「アイザック…貴様」


「覚えてなさいよあんた達!私たちだって幸せになって見せるんだから!」

「フハハ…早く行かねば我が貴様らを滅ぼしてくれよう…!」

「別に僕たちはあんたらのことクラスメイトとも、ましてや兄とも姉とも思ってないからね。何勘違いしてるの?」

「確かにそうだね、だから…こっちなんか気にしないでよ、ミラねぇ、カイルにぃ」

「さっさと行きやがれ!バカ兄ども!」


「あんた達…」


嘲り、見下し、不敵に嗤う彼らは。


もはやミラとカイルに守られるような可愛げのある悪役ではなかった。立派に、人のハッピーエンドを支えるという矜持と誇りを持った、一人の悪役だ。


ぐっ、と涙が浮かぶのをこらえて、ミラは腕を組み顎を上げて高らかに別れの言葉を叫ぶ。カイルは寡黙に、そして不敵な笑みで別れを告げる。


「あなた達ごときに背を押されなくても、わたくしは前に進みます!…元気にやりなさい、この悪役ども!」

「行くぞ、ミラ」

「ええ!」



カイルはミラを抱き抱え、走り出した。遠ざかるその背を、彼らには見せられない涙で見送りながら、第57回生悪役養成科の卒業試験合格者は、転生するべく、教室に現れた光の渦へ飛び込む。


「…皆さん、頑張ってくださいね」


また寂しくなります、と小さく呟いて教師は教室を後にした。残された不合格者達は感動の余韻に浸っていたものの、暫くして思う。…あれ、俺らは?


















「ねぇカイル」

「なんだミラ」

「これからどうしましょう?」

「ふむ、二人して世界征服も良いな」

「裏ボス目指すのもいいのかもしれないわね」

「実に楽しみだ」

「ええ、ステキだわ…!あはははは!」

「クハハハハ!」




『…記憶持ったまま二人して一緒の世界に行かせてくれ、なんて願い、聞くんじゃなかったかの…』



あの卒業試験から十八年後、学園にはとある世界の神から、自分の世界が未曾有の危機に陥っている、という報せが入る。ヒーロー科を全員動員する大事件になったのだが、学園長は苦笑するのみにとどめたという。



















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― 新着の感想 ―
[一言] 斬新な設定で面白かったです。 これからも頑張ってください。
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