10/26:初めての盗賊退治で
前にも言いましたが、この小説ではR15タグの通りで、殺人や暴力表現を一切遠慮しません。
ご了承を。
火の光で照らされる坑道の中。
破壊の轟音に混じって男女が会話する声が木霊していた。
『ラストの五周目になるっていうのに、疲れているようには全然見えないんだが……。一応聞くけど、オセロって一般人だよな?』
「逸般神のあんたが言うなって話だけど、あたしは普通のはずよ、たぶん」
迫りくるモンスターにハイキックを繰り出しながら、オセロはまったく気力切れを起こさない自身の体に驚きを隠せないでいた。
確かに時々息切れは起こすものの、それは単にずっと動き続けたからであって、休んで息を整えれば問題ない。
しかし回復スピードが極めて遅く、魔法で断続的に消費される気力はそうはいかない。
なのに、二百回以上も魔法を使ってすら何故か尽きる気配がないのだ。
(変ね。普段はもうとっくの昔に気力丸の十や二十使っているところなのに……体調がいいのね!)
単純にまだ知らないカルマや大雑把な性格のオセロは知る由もないが、その原因は【パルテの腕輪】にあった。
腕輪の効果を詳しく記すと【パーティー内で各一番ステータスが高い者の値×0.01を小数点以下切捨にして加算する】というものだ。
一般人の平均値が各百なので、1%を加算したところでたったの一しかステータス値は増えないが、あいにくオセロの隣にいるのは逸般神。
気力と知力に限り、彼女のステータスは成人男性千人分、十万の値が加算されている。
まさに一騎当千。
雑魚を何匹蹴散らそうが気力が尽きないのは必然であった。
理由が分からないままでも、オセロの進撃はとまらない。
猫人の脚力を利用したサマーソルトで敵を打ち上げ、瞬時に片足だけで六連撃。
モンスターが壁に激突してバウンドしたところを“サンダースピア”で貫く。
回避不能な空中コンボによって頭蓋が潰れたゴロダンゴは、数本の針で壁に縫い付けられ、痙攣してから動かなくなった。
「ふぅ、こんなところね。とりあえず波は引いたから、先に進みましょ」
『了解。しかし、誰にも会わないな。この迷宮って余り人気ないのか? その割りに、同じ道を通っても前の周で倒した残骸ないし……』
すでに迷宮入り口とボス部屋を五回も往復しているが、まだ二人は誰にも出会っていない。
その疑問に、洞窟の奥へ歩きながらオセロが答える。
「人気はあるわよ。ステルゲンブルグから近くて元炭鉱だけあって鉱石も豊富に採れるわ。誰にも会わないのはあたしの気配探知で避けながら進んでいるだけだし、モンスターの残骸がないのは単に他のモンスターの食料になっているからね」
先ほどは自分達が生み出す破壊の音で聞こえなかったが、歩きながら耳を済ませていると遠くからわずかに剣戟の音がする。
坑道は幾筋もの通路が存在しているうえ反響しているので、簡単に場所は特定できそうもない。
それでも、スキル持ちなら容易なのだろう。
『人を避けて歩くって、何かまずいことでも?』
「……」
この疑問にオセロは答えない。
前を向いて平然と歩いているように見えたが、その頬は少し赤く、猫耳がぴくぴくと震えている。
『……あ』
オセロの反応を見て、鈍感なカルマが珍しく意図に気付く。
彼女はカルマの能力が他人に見られないように、人を避けて迷宮を案内してくれていたのだ。
『ごめん……ありがとな』
「な、何のことかしら。よく分からないけど、荷物持ちがいなかったら一回一回ステルゲンブルグまで往復する羽目になってたんだから、お、お互い様ね!」
少しほっこりしたカルマと、赤くなって視線を逸らしながら口笛を吹くオセロ。
二人は無駄話をしながらも苛烈な攻め手は緩めず、下手をすると落盤事故を起こしそうな威力で坑道内を進んでいく。
しかし、あと数十メートルで最後のボス戦というところまで近づいた途端、
『……どうした?』
オセロの歩みが止まった。
坑道の途中で目を瞑っている彼女を見て、カルマの頭に疑問符が浮かぶ。
「この先に人がいるわ」
『別に問題ないだろ』
ボス部屋の近くにいるということは、向こうもこれからボス戦に挑むと言うことだ。
焔神状態を見せられないため、相手が討伐中なら順番待ちをすることになるが、それくらいならいいだろう。
「そう簡単に行きそうにもないわよ。相手の数は合計二十人。脈拍や呼吸は正常。心拍数がかなり安定しているから全員仲間。坑道の途中にある隠蔽された裂け目に六人。ボス部屋の扉前に二人。傍の休憩所に……十二人。この配置で休憩中や順番待ちの訳がないわ」
オセロの気配探知スキルはそこまで分かるのかと感心するカルマ。
そして、関心を他所において、彼女の言っていることを理解する。
『つまり……盗賊か?』
「たぶん、いいえ、確実にそうとしか考えられないわよ。ボス部屋前の二人が獲物を選別して、カモに出来ると分かったら討伐中とか理由をつけて休憩部屋で挟み撃ち。強敵と判断したら、そのままボス部屋に通すってところでしょ」
相手も然る者。
戦略的にも練られたものだ。
おそらく何度も同じ手を使って獲物を狩ってきたのだろう。
『どうする?』
カルマにとってここは依頼人の指示を仰ぐのが妥当であったし、彼女はBランクだ。
対人戦闘経験がないカルマよりは適切な判断が出来る。
「そうね……別に今撤退してもいいんだけど、それだとまた明日も同じ場所にいそうだから意味ないし……襲ってきたら殺しちゃいましょう」
『了解』
カルマにとって他の魔法と物理攻撃はともかく、凶器の水だと先手を打つ前に殺さなければ殺される。
ハガネコガネと戦闘中に油断して泥水を踏み、身代わり魔法の“火華熾”が無ければ死んでいたという珍事もあった。
水聖魔法を使ってくるかもしれない相手に容赦をかける必要などない。
(それに、俺が死んだら樫咲と大園は泣くだろうしなぁ……)
彼は自惚れる性格ではないが、拠り所のない異世界で自分が死んでしまえばどうなるかの予想はつく。
彼女達の為にも、人殺しの恐怖に怯えるわけにはいかなかった。
「もし戦闘になったら、あたしが相手の使う魔法を判断して水聖魔法師を優先的に撃破するわ。あんたはそれ以外を頼むわね」
『その心配はないさ。向こうも同士討ちを恐れているだろうから、俺達が休憩所に入った直後は外から奇襲の魔法を受けることはないだろ。手はある。依頼人を護るのも仕事だから、オセロは見ているだけでいい』
その言葉にオセロは少しの間呆けていたが、「じゃあ、あんたがヘマしたらフォローするわ」と言って苦笑した。
さぁ、人狩り行こうぜ。
覚悟を決めたカルマは、焔神状態を解除すると回復剤を一口飲む。
そして、一応持ってきていたオセロのランタンをかざしながら道を進んで行った。
焔神を解除した理由は、盗賊ではない確率も微レ存で、盗賊の場合はわざわざこちらの手の内を最初からさらすべきではないと判断したからだ。
幸いにして通常状態の体力自体はそこそこある。
致命傷で即死しない限りは焔神になって反撃も可能だろう。
ちなみに、途中で「今カルマの左手にある壁はフェイクよ」とオセロが小声で言ったが、彼にはまったくもって分からなかった。
(ただの土壁にしか見えないんだが……)
カルマは気付かれないようにチラッとだけ見たものの、そこは周囲とは変わらない茶色の土。
さすが獣の感性である。
背後を警戒しながら先へ進み、ついに扉の前までたどり着く。
そこには皮の鎧を着た、スキンヘッドに浅黒で無骨な外見の男と、同じくスキンヘッドで頬に傷が入った男の二人。
扉に近づいてくる二人を値踏みするかのような目で見ている。
「ボス戦に挑みたいんだ。そこを通してくれないか?」
二人の前に立ったカルマが話しかけているはずなのに、二人の視線は後ろにいるオセロの方に動いていた。
下卑た目で見ているのは、彼らが求めているのが女だからだろうか。
いや、たとえ目的が女ではなく金であったとしても、かなりの美少女であるオセロは奴隷商人に売り飛ばすことで大金が手に入る。
彼らにとってはどう転んでも美味しい餌なのだ。
「……今は前のパーティーがボス討伐をしているんでな。少し休憩部屋で待ってろ」
頬に傷が入った男の方が、カルマの質問に答える。
この時点で、男達はまず最初の分岐点を間違えた。
オセロがこれ見よがしに溜め息をつくと、休憩部屋へと向かっていく。
彼女が休憩部屋に入る直前で口から出した言葉が、次の分岐点だ。
「そこの裏側にいる三人。邪魔だからどきなさい。あたしに触れたらその首、蹴り折るわよ」
奇襲するつもりだったのか、入り口の裂け目からごそごそと動く音がした。
第二の分岐点はセーフだったようだ。
休憩部屋は二十畳ほどの広さがある洞穴になっていて、中は複数のランタンの炎によって煌々と照らされている。
洞穴の外周に沿って一定間隔で置かれている幾つものランタンの傍には、それぞれ一人ずつ男が陣取っていた。
部屋の中ほどまで行くと、一番奥には髭面で斧を持った大柄の男がいた。
彼はカルマに侮蔑の死線を、オセロに情欲の視線を向ける。
だが、入ってきた二人に一番露骨な反応を返したのは、その隣にいる、
学生服を着た男だった。
「お、おまえ……近衛か?」
その男の名は、野口克也。
今日の朝、街中で晴香を探し回っていた男。
晴香を傷つけ、一度は精神崩壊に追い込んだ男。
克也は驚愕を露にしていたが、カルマにその表情はない。
ただただ、静かな怒りが体に染み込んでいく。
「ああ、そうだ。みんなは俺が死んだと思っていたようだけどな。俺はちゃんと生きてるぞ」
「そ、そうか。ってことは、こころちゃんも生きて……」
ランタンの光で照らされた無表情のカルマを見て、克也はどう返していいか分からないようだった。
彼の反応など、もはやどうでもいい。
「で、ここで何をしているんだ?」
克也に問いかけてはいるが、カルマは何故彼がここにいるか大体の察しはついていた。
魔法が使えるだろう克也は、盗賊の主戦力として協力することで、殺した相手からの金品を分けてもらうつもりなのだ。
晴香を傷つけるだけでは飽き足らず同族の命まで奪おうとする彼を、カルマは一緒に日本へ帰るべきクラスメイトどころか人間と扱うことすらしなくなっていた。
「それは……」
勝也が口を開こうとすると、隣にいる斧の大男が割り込んでくる。
「おい、カツヤ。こいつ、お前の知り合いか?」
「知り合い……仲間……」
「カツヤ。どうなんだ!?」
盗賊仲間から問い詰められる克也。
少しだけ悩んだ彼はゆっくり顔を上げ、右手で腰に刺していた銀の短剣を抜く。
左手には風の刃が生まれる。
目に宿るは狂気の色。
「い、いや……こいつは知り合いなんかじゃない! こ、こころちゃんをいつも独り占めして! 俺だって好きだったのに! 今も別の女を連れてるし……こ、こいつさえいなければ、こころちゃんは俺の、くそっ! くそっ、くそっ! ころしてやる、殺してやる……殺してやる!!」
その叫びを聞いて、外からドタドタと洞窟内に入ってくる足音が響き渡る。
盗賊の仲間全員が休憩部屋内に入ってきたのだ。
いや、まだ盗賊ではない。
盗賊だったとしても、例えオセロとカルマを全員で取り囲んでいたとしても、『まだ』何も牙を剥いていない。
「ひひ、ひひひっ。お、お前にも俺と同じ目にあわせてやる! こころちゃんを取られたように、俺もお前の女を取って奴隷にしてやる! 俺のモ、」
「つまらないわね。負け犬の遠吠えなんて、猫の耳にも念仏過ぎて聞くに堪えないわ」
克也の狂気に満ちた慟哭を、静かな声が遮る。
カルマがふと目を横に向けてみれば、天井を見ながら面倒そうに貧乏ゆすりをするオセロ。
「色恋話は好きだけど、魅力で負けたブ男の言い訳はあたしの一番嫌いなモノなの。玉ねぎの方がまだマシよ。あー、やだやだ。カルマ、お昼の残りのジャーキーちょうだい」
「いや、あれオセロが一人でほとんど全部……」
「ええっ!? あたしそんなに食べてないわよ!」
「出発前に街で十本も調達してきてたのに、俺が食ったの二本くらいなんだけど……」
周囲を取り囲む二十人を、まるでいないかのように扱う二人。
克也の顔が、怒りで赤を通り越して白に歪んでいる。
それを見て相手の主力格らしい斧男が口を出し、周りも心底楽しそうに笑いながらオセロに下卑た目を向けていた。
「ガッハッハッハ! おい、ガキども。お前ら自分の状況分かって喋ってんのか?」
「おう、姉ちゃん。ガキの小せぇ棒じゃなくて俺らのもしゃぶってくれよ」
「どうせ逃げられねぇんだ。ぶっ壊れるまで輪してやっからよ!」
「ガキの方は適当に身包み剥いでモンスターに食わせてみるか? 何秒で死ぬか賭けようぜ!」
「まぁ、大方隣にいる女を差し出せば見逃してくれるとでも思ってんだろうが、場所がバレちまった以上は逃がしてかえさ、」
オセロが退屈を紛らわせるように蹴った地面の砂が、彼女自身の鼻をくすぐった。
「くしゅんっ!」
「大丈夫か?」
「ずずっ……問題ないわ。あ、そうそう。こいつらの気配探ってみたんだけど、水聖魔法使うヤツはいないわね」
「そういうのも分かるのか。汚いなさすが気配探知汚い」
「ふっふーん。獣の勘よ」
「勘かよ!?」
相変わらずの二人。
さすがにここまで馬鹿にされては斧男も黙っていられなかったのだろう。
彼の手が背中のバトルアックスにかかり、静かな声で命令を下した。
「やれ」
すぐさま周囲を取り囲む男が剣を、槍を、斧を、掌を構えて戦闘態勢を取る。
そして、すぐに思い知ることになる。
最後の分岐点を間違えたのだ、と。
『“焔戒”』
洞窟の中央から流れ出すものは真紅の闇。
人が手を出すのもおこがましい原初の業火。
彼らの行為は、決して勝てはしない神に対する唾棄。
筆舌に尽くしがたい恐れが男達を襲った。
人型の炎から溢れ出るは紅の殺気。
まるで龍にでも睨まれているかのように男達は体の自由が奪われ、流れ出る冷汗は瞬時に大量の水蒸気となる。
誰もが刹那の時すら耐え切れずに凶刃を地へと落とし、体内の気力が全て消し飛ばされるほどの凄絶な威圧に膝を屈して這い蹲る。
男達の股間からアンモニア臭のする液体が漏れると、それすらも瞬く間に炎熱で気化して惨劇の予兆を奔らせた。
唯一無事に立っている人間は、臭気で嫌そうに鼻を噤む猫人族の少女だけ。
立ち上がることすら出来ない恐怖の中で、指を鳴らした焔がゆっくりと周囲を見渡した。
『それで、俺をどうするつもりだったんだ?』
問いに答えねば死。
彼らは分かっていても答えることは出来ない。
唯一威圧で縛られていない口の端でも、見開いた睫毛の一本であっても、真紅一色が支配する空間で動かせばどのみち死ぬ。
威圧の中で猫人族の少女が斧男を見つめていると、彼女がふと気付いたように声を上げた。
「どこかで見たことあるって思ってたら……。カルマ、多分そいつ何人も冒険者を殺してる賞金首よ。確かDEADorALIVE(生死問わず)だったから、そいつの首だけは持って帰りましょ」
『分かった』
焔と対等に話すことの出来る少女が、無慈悲にも斧男に最初の死刑を宣告する。
喋れば死ぬ。
分かっていたとしても、唯一動く口からの懇願は止まらない。
「ま、待ってくれ! 金ならいくらでも! だ、だから!」
『正直、オセロの言葉を聞いて安心したよ。最初の人殺しが善人だったら今日は寝れなかっただろうからな。“バーンランス”』
斧男の話は遮られ、煌々と照らす火が自らの安堵を口から紡ぐ。
そして、焔の指先から出現した爆炎の槍が、無防備な男の喉仏に突き刺さった。
ボンッ
「あぎゅっ!!」
刺さった箇所が爆発し、胴体と離別した頭が宙を舞って、別の男の眼前に落ちた。
黒く焼け爛れた首の断面から血を噴水のように流しながら、残された肩から下がゆっくりと地面に倒れる。
元から動けないはずの全員の体が、さらに石のように固まった。
それからも淡々と、焔は男達の首を飛ばしていく。
ボンッ
「ぎゃあっ!!」
ボンッ
「ぎぇふっ!!」
ボンッ
「あがぁっ!!」
まるでごみ掃除をするかのように淡々と。
洞穴の壁に鮮血の花を咲かせながら淡々と。
ボンッ
「ぎゅがっ!!」
ボンッ
「ごぼっ!!」
ボンッ
「ぎゃあぁっ!!」
そしてついに、残るのは学生服を着た男ひとりのみとなった。
「こ、近衛、ごめん! 俺が悪かった! 頼むから命だけは!!」
下半身に尿の跡を残して懇願をたれた学友の少年。
その願いは、彼が虐げた少女とは逆の形で叶えられることになる。
『ああ。俺はお前を殺さない』
「ほ、ほんとか!?」
思わぬ救いに声を上げる。
だが、続く言葉でその表情を青くした。
『俺がお前を殺しても、大園が救われるわけじゃないからな。お前が左足を折ったやつかどうかは知らないが、大園を気にかけなかった時点でお前も同罪だ』
そう焔はのたまうと、爆炎の槍で少年の左膝を貫く。
仲間の少女が無慈悲な暴力で折られた場所。
ボンッ
「ぎゃあああああああああぁぁっ!!」
彼の足が宙を舞って岩壁にぶち当たり、地面に鮮やかな赤を散らしながらビクビクと最後の痙攣を繰り返す。
残された膝上の断面は黒く炭化していて、例え繋ごうにも繋ぐことが出来ないだろう。
彼への断罪は、死すら温い苦痛の中で生きる事だった。
『お前はやりすぎだって思うかもしれないけどな。お前らは大園の女としての尊厳を殺すつもりだったんだ。殺し返されても文句は言えない。命まで奪うかどうかは大園が決めるから、それまで精々生きとけよ』
「ああああぁぁっ! いでええええええぇぇ!! たすけてくれ! たすけてくれえええぇぇ!! あああああぁぁっ!!」
苦痛で落涙する彼の悲鳴を淡々と流し、“焔戒”を解く。
この空間で動くことが出来る者、息がある者は、たったの三人だ。
『オセロ、とりあえず賞金首の頭を持って帰るか。これ、アイテムボックスに入るのか?』
「アイテムでもないのに入るわけないでしょ」
『えー。さすがに人の頭を持って歩くと何か言われそうだな……舌がダランッって垂れてるし、リアルお化け屋敷だよ』
「それじゃ、こいつらの服を剥いで頭を包んでおきましょ。あと、武器も持てるだけ持って帰って売り払えば結構な値になりそうね」
『そうだな。……ボス討伐が一回残ってるけど、このまま焔神状態で瞬殺させてもいいか?』
「いいわよ。ステライト水晶は既に二つも手に入ったんだから大儲けよ!」
『は、ははは……』
まったく声音の変わらない、いつもどおりの空気で会話する二人。
遺体から金目の物を剥ぎ取って鮮血の花が咲く洞窟を抜け、カルマとオセロは最後のボス討伐に向けて進んでいったのであった。
悲鳴を上げ続ける、一人の男を残して。
「あああぁぁっ! いでええええええぇぇ!! ああああぁぁっ!!」
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近衛カルマ (17歳)
種族:焔神
職業:冒険者
レベル:3
経験値:4101/102400
体力:3/1[+2]
気力:9963408/9999999[+1]
腕力:1[+1]
脚力:1[+5]
知力:9999999[+0]
スキル:【ザ・スキルセレクター】・【焔神威】・空きスロット
装備品:学生服・ブラックレインコート・アテムの指輪・パルテの腕輪・サバイバルナイフ・リュックサック
所持金:38000ELC
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オセロット・キャットボルト (16歳)
種族:猫人
職業:獣戦士
レベル:23
経験値:???/2740
体力:???[+0]
気力:???[+99999]
腕力:???[+0]
脚力:576[+0]
知力:???[+99999]
スキル:【上級雷撃魔法師】・【蹴撃マスター】・【暗殺者の心得】・【気配探知+】・【気配遮断+】・【???】・???
装備品:スケイリーフットアーマーセット・鋼のダガー・スマッシュブーツ・パルテの腕輪・リュックサック
所持金:???ELC
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主人公の“火華熾”は重傷を一度だけ無効化する能力です。重傷というのは欠損以外にも体力が一定割合以上減ることを示すので、主人公の場合は体力十割となる水濡れも一度だけ無効化します。
人の身代わりとして畑に立つ案山子から技名をとっているのはそういうことです。
まぁ、水濡れってスリップダメージなので瞬時に乾かさないとどの道死ぬんですけどね。




