心の扉
やっと、奏太の記憶が戻ってほっとする環那。2人の恋の行方は……!?
最終話になります!
「環那、こんな所で何やってるの?」
奏太君の誕生日の次の日。
学校に来たものの、なかなか教室に入れないでいたら、夏芽に声をかけられた。
「おはよー。夏芽」
私はさっそく昨日のことを、夏芽に話した。
昨日は結局、奏太君とは話ができないまま、奏太君のお母さんには記憶が戻ったことを伝えただけ。
「確かに、杉山君の女関係をはっきりさせたほうがいいわ」
「うん。そうなんだけど……。なかなか聞く勇気が……」
なんだか、聞くのが怖い。
「あ、ほら!噂をすれば……って、メガネかけてない!本当に記憶が戻ったんだ~」
夏芽が、教室の中を指差した。
私達に気がついたのか、奏太君がこっちに歩いて来た。
「おはよー。2人で、何話してるの?」
「杉山君。記憶が戻ったんだって?」
「ああ……。宮本にも、心配かけたな~」
奏太君が、すまなさそうに夏芽に言った。
「私はいいんだけどさ~。環那が一番心配してるんだけどね。今だって、女関係が……」
「ちょ、ちょっと。夏芽!」
私は慌てて、夏芽が言うのを止めた。
「女関係……?」
奏太君が、じっと私を見た。
「あ、あのね。な、何でもないの!あ、ほら。予鈴が鳴ってる。行こう!夏芽」
聞くのが怖くて、さっさと自分の席についた。
奏太君は私のこと好きって言ってくれたけど、昨日から未優ちゃんとのキスが頭から離れない。
「環那。今日、一緒に帰ろうぜ。正門の所で、待ってるから」
奏太君が、私の近くに来ると耳元で囁いた。
「今日は、夏芽と帰るから……」
「それでも、待ってるから」
「……」
私は、なんて言ったらいいかわからず言葉に詰まった。
「ねえ、環那。私のことはいいから、杉山君と帰りなよ」
私達の話を聞いていたのか、前の席に座っていた夏芽が私の方を振り向いた。
「夏芽~」
「この間は、私もついムキになって杉山君に言っちゃったけど、よく考えたら環那に告白してた時の杉山君、真剣だったんだったし。他にも付き合っている子がいるとは思えないけど」
夏芽は首をかしげた。
「……」
でも、それは記憶をなくす前のことだ。
「とにかく、2人で話し合ったほうがいいよ。ね?」
「……」
結局、夏芽に押されて奏太君と帰るからことにした。
学校が終わると、正門の所に向かう。
奏太君が、正門の所で待っているのが見えた。
「……!!」
でも、奏太君の横には未優ちゃんが楽しそうに話しているのが見えた。
「あ!環那ちゃん~」
未優ちゃんは、私に向かって手を振った。
「未優ちゃん……」
「やだな~。そんなに驚かなくても。私、奏太にメールで一緒に帰る約束したのに、一緒に帰れないとか言うから変だと思ったら、環那ちゃんが原因かぁ」
私の耳元で未優ちゃんがボソッと囁いた。
「……」
未優ちゃん、奏太君のメアド知ってるんだ……。
私は急に不安になる。
「帰ろう」
奏太君は私の腕を掴んで、歩き出した。
「待ってよ~。奏太」
未優ちゃんも、慌てて後からついて来る。
せっかく、夏芽が気を使ってくれたのに、これじゃ聞くこともできないよ~。
「私たち、こっちだから。環那ちゃん、ばいばい」
未優ちゃんが、私に手を振った。
何も話ができないうちに着いてしまった……。
「未優もそっちだろ!」
奏太君が言う。
「え~。奏太のうちに寄って行っちゃだめぇ~?」
甘えるように、奏太君の腕に自分の腕を絡ませた。
「だ~め!」
奏太君が、未優ちゃんの腕を振り解いた。
私は、ただただ2人を見ていることだけしかできなくて、つい顔を背けた。
「私……。帰るね。また、明日」
胸の奥が締めつけられる。
「あ、環那ちゃん。途中まで一緒に帰ろ~。奏太、またメールするね~」
未優ちゃんは奏太君に手を振った。
また……って、そんなに奏太君とメールしてるの?
また、胸の奥がキュッと締めつけられる。
「環那ちゃん。奏太ね、私がメール送ると毎日のように返事くれるんだよ~」
未優ちゃんが嬉しそうに言った。
「……」
「環那ちゃんは、奏太とメールしてる~?」
「……まだ、メアド教えてもらってないから」
ーラッキ~。教えてもらってないんだ~。
未優ちゃんの嬉しそうな心の声が聞こえて来た。
「え、そうなの?てっきり、メアド交換してるのかと思った~」
未優がわざとびっくりした顔で私を見た。
「でも、奏太モテるでしょ?だから、ずっと私のことだけ見ててほしいと思っていたんだけど~。噂で本当に好きな子にしかメアド交換しないって聞いて、嬉しくて」 本当に好きな子じゃないとメアド交換しない……。
未優ちゃんの言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。
奏太君、私のこと好きって言ってくれたのは嘘って言うこと?
どうしていいかわからず、未優ちゃんの声が遠くに感じられた。
「昨日は、ごめん!」
次の日。席に座りながら、夏芽と話していると、奏太君が私の所にやってきた。
「別に……。気にしてないから」
そうは言ったけど、昨夜はなかなか眠れなかった。
「今日は、未優はこないから。一緒に帰ろうぜ。話したいこともあるし」
「……」
私だって、聞きたいことがある。でも、怖くて勇気がでない。
『環那。昨日、何があったのよ?せっかく2人っきりにしてあげたのに』
奏太君を気にしながら、夏芽がひそひそと言った。
『昨日、未優ちゃんが正門の所にいて……』
私もヒソヒソと夏芽に言う。
「なによ~!それ」
夏芽がガタンと椅子から立ち上がった。
「ちょ、ちょっと夏芽。声が大きい……」
私は、慌てて夏芽を落ち着かせた。
奏太君もクラスの子もびっくりして、夏芽を見ている。
「ごめ~ん。何でもない」
夏芽は苦笑いすると、椅子に座りなおす。
「じゃ、今日は昇降口の所で待ってるから」
奏太君はそれだけ言うと、さっさと自分の席についてしまった。
「その未優って子、杉山君とキスしてた子だよね?」
奏太君が行ってしまった後、夏芽が聞いてきた。
「うん……」
「まさか、真剣な顔で環那に告白しておいて、その子と付き合ってるってことないよね?」
「……未優ちゃんだけじゃなくて、他にも付き合っている子がいるかも……」
奏太君のうちにあった沢山のプレゼントがあったのを思い出す。
「環那……」
「……男の子がメアド教えてくれないのってどうしてかな?」
「え、杉山君メアド教えてくれないの?」
夏芽が、びっくりした顔で私を見た。
「教えてくれないって言うか、そんな話してないんだけど……」
「な~んだ。ただたんにメアドの話にならないだけで、気にすることないんじゃないの?杉山君に聞いてみたら?」
夏芽に言われて頷いた。
「お待たせ」
放課後、昇降口で待っていると、奏太君がすぐにやって来た。
私達は、肩を並べて歩き出す。
「環那。昨日、宮本が言ってたことだけど……」
奏太君が真剣な顔で私を見た。
「前にも言ったけど、誰とも付き合ってないから」
奏太君がきっぱりと言った。
「で、でも。誕生日のプレゼントだって、沢山貰ってたじゃない……」
「あれ?あれは、これで最後だからとか言って勝手に置いていったんだ。母さんに聞けばわかるよ」
「……」
本当かな?付き合ってた子が5、6人いたとか言ってたけど、それより多かったような……。
「もう解決した?」
「ん……。ちょっと、待って!」
まだ、未優ちゃんの問題が残ってる。
私は、それとなく聞いてみた。
「未優とも付き合ってないよ」
「で、でも。未優ちゃんとキスしてじゃない……」
また、胸の奥が締めつけられる。
「別れたはずなのに未優が急にマンションに来て、絶対別れないっていきなりキスされて……。でも、あの時は記憶がなかったし、わけがわからずにいたんだけど」
奏太君が、気まずそうに言った。
「……」
私に出逢う前だろうけど、付き合ってたんだ……。
「俺、前にも言ったけど。環那のことは大切にしたいんだ。だから、信じてくれないかな?」
真剣な瞳で私の顔を覗き込んだ。
「……私だって奏太君のこと信じたいよ。でも、未優ちゃんから聞いたの。奏太君は本当に好きな子にしかメアド教えないって」
私は、しょんぼりとした。
「そんなこと気にしてたのか~」
「そんなことって……。未優ちゃんは知ってるのに」
私は、頬を膨らませた。
「あの通り未優は、しつっこくてさ。勝手にメアド交換したんだ」
「……」
未優ちゃんならありゆるかも……。
「環那とは、本当に付き合いだしてから、メアド交換したかったんだ。」
「ごめん。奏太君のこと、疑ってて……」
反省した顔で謝った。
「本当にひどいな~。信用してないなんて」
今度は奏太君が、顔を膨らませた。
「本当にごめん……」
「悪いと思ってるなら、何か作ってくれないか?俺のこと心配で最近、母さんが飯作りに来てたんだけど。今日は、来られないみたいなんだ……。久しぶりに環那の料理が食べたい」
「別にいいけど」
「じゃあ、決まりな。それと、今日から俺の彼女になってほしいんだけど」
奏太君が、優しく私の手をつないだ。
「……うん」
私は、恥ずかしそうに頷いた。
マンションに到着して、部屋まで行くと、ドアの前で未優ちゃんが立っていた。
「奏太~、お帰り」
未優ちゃんは、パッと顔を輝かせた。
「未優……」
「遊びに来ちゃった~」
未優ちゃんが奏太君の腕を掴んだ。
「悪い……。もうここには、来ないでくれないかな?」
奏太君は玄関の鍵を開けながら言った。
未優ちゃんの方は、泣きそうな顔になる。
「どうして?環那ちゃんは、部屋に入れるのに」
「俺、環那と付き合うことになったんだ」
「……私、嫌だよ。奏太、他の子と別れてやっと私の方を向いてくれると想ったのに」
未優ちゃんが寂しそうな顔をした。
未優ちゃんって、一途だな~。
「振り向いてもらうって言ってもな~。俺、別れるって言ったはずだけど」
奏太君は未優ちゃんにきっぱりと言う。
「私は別れるの了解してない。奏太、あんなに優しくしてくれたのに……」
「それは、未優にだけじゃないよ。みんなに優しくしていたし……。それに、これから優しくしたり、大切にしたいのは環那だけだから」
奏太君が私の肩を抱いた。
「奏太君……」
奏太君の気持ちが、ヒシヒシと伝わってくる。
「そうゆうことだから。もう、俺のことは諦めてほしい」
奏太君が、私の肩を抱きながら部屋の中に入ろうとした。
「奏太!待って、わかったから……。最後に一つだけ私のお願い聞いてほしいの」
必死に、奏太君を見た。
「お願いって?」
奏太君は、ふと未優ちゃんを見た。
「あのね……。お別れにキスしてほしいの。そうしたら、本当に諦めるから……。ね?」
未優ちゃんの言葉に、私は耳を疑った。
私の目の前で、また奏太君と未優ちゃんがキス……。まさか、最後だからってしないよね?
そう思っていたら、
「わかった」
と、奏太君はあっさりと返事を返した。
そして、奏太君は未優ちゃんの前に立つと、顔を近づけて行った。
未優ちゃんは、勝ち誇った顔で、そっと目を閉じた。
ー奏太が私のこと振り向いてくれないなら、環那ちゃんと付き合うなんて許せない!環那ちゃんの前でキスしてやるんだから
未優ちゃんの声が聞こえて来た。
未優ちゃんが本当は、そんなこと考えているなんて……!
私の胸の奥がキュッと締め付けられて、瞳には涙が溢れた。
私は、その場いられなくて駆け出そうとした瞬間。
奏太君は未優ちゃんから離れると、いきなり私の腕を掴むと奏太君が私にキスをした。
……!!
一瞬、何が起きたのかわからずにいた。
「ちょ、ちょっと!奏太。どうして環那ちゃんなのよ!」
未優ちゃんが愕然とした顔をした。
「お前の考えていることは、ばればれなんだけど」
奏太君、未優ちゃんが何考えているのか、わかってたのか……。
「や、やだな……。わ、私が何考えているって言うのよ……」
未優ちゃんがしどろもどろに言う。
「とにかく、いくら最後だからって、環那以外の子とキスするわけがないだろ」
奏太君が私の肩を抱いた。
「……変わったね、奏太。誰とでも、キスしてそうだったのに。そんなに、環那ちゃんのこと好きなんだ……。あ~あ。もう奏太のこと諦めた。バイバイ」
未優ちゃんが寂しそうに手を振ると駆け出した。
未優ちゃんが帰った後、私達は部屋の中に入る。
「環那、ごめんな」
奏太君は私に頭を下げた。
「どうして、奏太君が謝るのよ?」
「ま、いろいろと……」
「……」
いろいろって、まさか未優ちゃんが言ってた誰にでもキスしてそうなこととか!?
そう言えば、奏太君。キスだって上手だった……。
お父さんに対する反抗心で、遊んでたことはわかったけど、まさかキス以上のことも!?
「とにかく、ごめん!!」
私があれこれ想像しているのに気づいたのか、奏太君が私を優しく抱き締めた。
「これからは、環那だけだから!」
「本当に~?」
私は、奏太君の顔を覗き込むと、奏太君が真剣な顔で私の唇にキスをした。 それも、さっきより強烈なキス。
私は、思わず奏太君を突き放した。
「な、何するのよ!さっきも突然だったけど……」
私は顔を真っ赤にさせた。
「さっき、未優にも言ったけど。こうゆうことするのは、環那にしかしないけどな」
奏太君が自信満々に言った。
「も~!キスでごまかされているような気がするんだけど」
私は頬を膨らませる。
「キスじゃダメなら、キス以上のことをすれば信じてもらえるのかな?」
奏太君は真剣な瞳で自分のおでこと私のおでこをくっつけた。
ドキンドキン……!!
私の心臓の鼓動が早くなる。今度はお猿さんのように、顔を真っ赤にさせた。
「あはは~!冗談だって。からかいがあるな~」
「奏太君!!」
「ごめんごめん。でも、環那のことは大切にしたいから、そう簡単に手を出したくない」
奏太君がまた、私を優しく抱き締める。
奏太君の心臓の鼓動が私と同じくらい早くなっているのがわかる。
私は、クスクス笑う。
「何、笑ってるんだよ?」
「奏太君も、同じ気持ちなんだなと思って」
「あたりまえだろ!」
奏太君が私のおでこを小突いた。
「それより、久し振りに環那の料理が早く食べたいんだけど」
「じゃあ、奏太君の好きな物、作ろうかな?」
「ラッキ~。じゃあ、ロールキャベツ」
奏太君が、ニカッと笑った。
「わかった!」
私も、とびきりの笑顔で返事を返した。




