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心の扉  作者: 夢遥
2/6

心の扉

環那と奏太と悠生の恋はどうなるのか?心の扉の第2作目です。


「おはよ~。環那って、どうしたの!?そのほっぺた」

 次の日、学校に行くと夏芽が驚いた顔で私の頬を見た。


 昨日叩かれた所が、朝になっもピリピリしていておまけに赤く腫れていた。 私は、昨日あったことを夏芽に話す。


「ふ~ん。そんなことがあったのか……。私、噂で聞いたんだけど。杉山君、何個もマンション、アパートを経営している社長の息子らしいよ」

 夏芽はヒソヒソと私に言った。


 だから、あんな広い部屋に独りで住んでいるのか……。


「いくら御曹司でもね~。裏でいろんな子と遊んでちゃな……」

 夏芽が溜め息をついた時、急に教室の中がざわめいた。


 みんなどうしたんだろう……?


「ちょっと環那……」

 夏芽が唖然とした顔で私の袖をクイクイ引っ張った。


 後ろを振り向くと杉山君が立っていた。


「おはよう。委員長」

「……おはよう」


 どうしちゃったの……?杉山君。いつもの格好じゃない。

 ー杉山君って眼鏡とるとイケメンだったんだ~。髪も決まってる~。

 ー誰よ。ダサイとか言った人。


 みんなの心の声が聞こえてきた。


「どうしたんだろうね?杉山君。環那、何か知らないの?」

 夏芽が私にヒソヒソと聞いてきた。

「さあ……」

 私は首を傾げる。


「委員長。ちょっといいか?」

 杉山君が私を廊下に呼び出した。

「なあに?杉山君」

「昨日はごめん!俺さ。昨日、青山に言われたこと一晩考えたんだ。それで、本当の自分を出そうと決めた」

「……」

「うちの親、金にいとめをつけない親でさ。それが嫌で、反抗して裏ではいろんな女の子と遊びまくってた。その中に彼氏がいる子もいたから、普段学校では、目立たないようにしていたけど、これからはやめるよ」


 どうしてそんな話、私に言うの?でも杉山君って結構、話すんだ~。


「今まで付き合ってた女の子とも全員別れた。それに、委員長みたいに本音で付き合える子は今までいなかったし……」


 ー今までのこと委員長には知っててほしい。それに委員長のこと好きになったなんて、信じてくれるかな……。


「!!……」

 杉山君の思ってることを知って、私はどうしていいかわからなくなった。

 悠生にも告白されて、おまけに杉山君にもだなんてどうすればいいのかな……?


「俺さ……。委員長のこと好きになったんだ!信じてもらえないかも知れないけど、俺と付き合ってくれないか?」


 杉山君は真剣な瞳で告白してきた。


 周りで聞いていた男の子達は私達をひやかした。


「告白かよ~。廊下でやるぅ~」

「早く返事してやれよ~」


 恥ずかしいよ~。


 私は顔を真っ赤にして俯いた。


 廊下で杉山君が告白したことは、たちまち学校中の噂が広まった。



「環那、ちょっといいか?」

 昼休み、悠生が教室にやって来た。


 校舎裏までついて行く。

「環那、杉山に告白されたんだって?」

 悠生が真剣な顔で聞いた。

「う、うん……」

「……俺もこの間、環那に告白したの途中になったままだったけど、本気だから……。俺と付き合ってくれないか?」



 どうしよう。夏芽のこともあるし。


「少し考えさせて……」

「……わかった」

 悠生は頷いた。


 ーやっぱ。返事、すぐってわけにはいかないか……。杉山にも告白されてるし。


 悠生、杉山君のこと気にしているのか……。


「環那、そのほっぺどうした?」

 悠生が私の頬が赤いことに気づいた。


 悠生の手がそっと私の頬に触れる。


「あ、これ……。ちょっと、ドアにぶつけちゃって」

「相変わらず、ドジだな~。環那は」

 悠生が私の瞳を覗き込んだ。

「悪かったわね。ドジで!」

 私は、悠生の手をどけようとした瞬間、悠生がいきなり、私を抱き締めた。

「!!……」 

 私は戸惑ってしまった。

「返事……、やっぱり今欲しい!」

「で、でも……」

 言葉に迷ってる時だった。


「環那……」

 急に呼ばれて声がする方へ振り向くと、いつの間にか夏芽が泣きそうな顔で立っていた。

「夏芽!」

 私は、慌てて悠生から離れる。

「なかなか環那が戻って来ないと思ったら、そうゆうことだったんだ……」

 夏芽が悲しそうに私達を見た。

「あ、あのね夏芽……」

「俺たち、つき合うことになったんだ」

「え!」

 突然、悠生が思いがけないことを言い出したので私は呆然としてしまった。

「あはは……。そうなんだ。わ、私。先に教室戻ってるね」

 夏芽は引きつった顔で苦笑いすると、体を翻して駆け出した。

「夏芽!!」

 夏芽を追いかけようとした時、悠生が私の腕を掴んだ。


「どうして?どうしてあんな嘘つくの?夏芽、悠生のことが好きなんだよ……」

「夏芽ちゃんが俺のこと好きなんじゃないかなって、なんとなく気づいてはいたんだ……」

「え……」

「夏芽ちゃんのことは友達としては好きだけど……。でも、恋愛対象としては見れない……。変な期待させるのも可哀想だから、これでよかったと想ってる」

「……」


 話がややっこしくなってきた~。夏芽にどう説明すればいいのよ……。


 教室へ戻ると、夏芽に説明しようと近づいた。

「な、夏芽……」

「環那……。どうして、教えてくれなかったの?悠生君と付き合い始めたなんて知らなかった……」

「あ、あのね。悠生とは付き合ってないの……」

「嘘つかなくてもいいよ……。私のことは気にしなくていいから。悠生君、環那のことが好きだったんだね……。告白しなくてよかった……」

 淋しそうに言った。

「夏芽……。私、悠生に告白されたけど、本当に付き合ってないから。それに悠生……。夏芽が悠生のこと好きなの知ってたよ」

 気持ちを落ち着かせて、本当のことを打ち明けた。

「悠生君、知ってたんだ……。でも、環那と付き合ってるって嘘つくってことは、私には望みがないってことか……」


「夏芽……」

 なんて言ったらわからず、キュッと唇を噛み締めた。

 夏芽は、悠生が自分に気持ちがないことを知ったのか、

「あ~、もう。すっきりした!」

 自分の顔を軽く叩いた。

「夏芽…」

「それで、環那は悠生君と杉山君どっちの告白をOKするの?」

「どっちって言われても……」

 急に言われて戸惑ってしまう。

「噂をすれば」

 夏芽が口に手をやった。


 後ろを振り向くと杉山が立っていた。

「委員長。今日の帰り一緒に帰らないか?」

「ごめん。私、日直だから日誌書かないといけないから」


 噂されるようになってから、杉山君はできるだけ私に声をかけないようにしているみたいだったのに、急にどうしたんだろう?




「ふ~。やっと終わった~」

 放課後、日誌を書き終えるとシャーペンを机の上に置いて窓の外を見た。


 さっきまで、青空だったのにいつの間にか雨がポツポツ降りだしている。


 うそ~!さっきまでは、あんなに天気よかったのにぃ。天気予報で1日晴れとか言ってたからまた、傘持ってきてないよ~。


「委員長。終わった?」

 杉山君がひょいっと教室に顔を出した。

「う、うん。杉山君いたんだ……?日直だからって言ったのに」

「ごめん。でも、一言謝りたかったから……」

 杉山君は改まった顔で私を見た。

「噂になるようなことになってごめん!委員長が困ると思ってあまり近づかないようにしてたんだ。」

 杉山君が頭を下げた。

「いいよ。気にしてないから。でも、杉山君。初めてあった頃より変わったね。表情が明るくなった」

「それは委員長のお陰さ」

「ううん。杉山君が自分で変えたんだよ……」


 杉山君、本当に変わった。格好もだけど、学校では人と関わることを避けていたのに、今は自分から関わるようになって、男女問わず杉山君のファーンが多くなった。 


 ザァ~!!


 先生に日誌を渡して昇降口に着いた頃は、本降りになっていた。


「委員長傘使って」

 私が傘を持っていないのに気づいたのか、自分の傘を差し出した。


「私はいいから。また、杉山君が熱を出しても大変だし」

「じゃあ、一緒に使おう」

 と、言うことで結局、杉山君の傘に入れてもらうことになった。


「……」

 告白の返事もまだなのに、相合い傘なんていいのかな……? 杉山君は、さっきから黙ったままだし。


 いろいろ考えていると、後ろから車が猛スピードで走ってきた。


 このままだと、水溜まりの水が跳ね返ってびしょ濡れになっちゃう!

 その時、杉山君が私の前に出てかばった。


 バシャ~ン!!


 勢いよく水溜まりの水が飛んできた。

 杉山君がせっかくかばってくれたのに、2人ともびしょびしょに濡れてしまった。


 もう~!なんなのよ。あの車!!


「ごめん。かばいきれなくて……」

 杉山君ががっかりした顔をした。

「ありがとう。でも、杉山君のほうがびしょびしょ……」

 杉山君を見ると、頭はもちろん、服まで滴れ落ちるくらい濡れていた。

「うち近いから、服を乾かして行ったほうがいいな……」

「え……」

 確かにこのままじゃ帰れそうもないけど……。

それに、なんだか寒くなってきた。風邪引きそう……。


「このままだと風邪引くから。ほらほら早く」

 杉山君が私の腕を掴んで走り出した。

 結局、杉山君のマンションによることになってしまった。


「はい、タオル。よかったら風呂入っておいでよ。その間に乾燥機で服を乾かしておくから」

「……」


 まさか、変なことされたりしないよね……。


 ー急がないと、委員長が風邪引く……。


 私の考え過ぎか~。


「委員長、何もしないから大丈夫だよ。だから、風呂入っておいで」

 私が心配しているのがわかったのか、杉山君が安心させるように言った。


「うん……」

 少しためらった後、杉山君の言葉を信じてお風呂を借りることにした。



 体操着を持っていたのでお風呂に入ってから着替えて少し落ち着くと、杉山君が温かいミルクを入れてくれた。

「ありがとう」

 ミルクを飲むと一息つく。

「もうすぐ、服乾くから」

 そう言うと杉山君は私を見つめると、そっと私の頬を触った。


 え?ちょっと、待ってこの状況って……。まさかキス!?  悠生の時もこんな状況があったような……。

「この間、叩かれた所。もう大丈夫みたいだな」

「え?あ、うん……」

「ごめんな。委員長は悪くないのに……」

「……」

 杉山君って、こんなに優しかったっけ?やっぱり眼鏡をかけていた時の杉山君とキャラが違う……。 


「もう、いいよ。そのことは……。それに委員長って言うのやめてくれない?なんか名前が委員長みたいで嫌なの」

「ごめん。じゃあ、環那」

 私の顔を覗き込んだ。

「ど、どうして。下の名前になるのよ……」 

 女の子に慣れてるだけあって、サラッと言えちゃうんだ……。

「いいだろ。親しみやすくて」

「そうやって、女の子口説いてたんでしょ?それで何人と付き合ってたわけ?」

「ん~。5、6人かな」


 え!カフェにいた女の子は三股かけられたとか言ってたけど、5、6人!?


 私は唖然としてしまった。


「でも、環那のことは本気だから。大切にしたいと思ってる。」

 また、真剣な瞳で杉山君は言うと私の顔を覗き込んだ。


 ドキンドキン……。


 やだ、そんな真剣な顔で言われたら、心臓の鼓動が速くなっちゃうよ。


「ふ、服。もう乾いたかな?見てくる!」

 私は、慌てて乾燥機の所に向かった。


 やだ、私。何ドキドキしているんだろう……。


「服、乾いたか?」

 乾燥機の所に行くと蓋を開けて服を出していると、杉山君が声をかけた。

「か、乾いたみたい。ありがとう杉山君……。私、帰るね」

 玄関に向かおうとした時、慌てていたので足がもつれて倒れそうになった。


 た、倒れる!!

 私は思わず目をつぶった。


「危ない!!」

 杉山君も慌てているみたいだ。


 バタ~ン!!


 すごい音が部屋中に響き渡った。


「……?」

 ん?倒れたはずなのに痛くない。


「……!!」 

 なんと、杉山君が私を抱きかかえる状態で倒れていた。

「大丈夫!?杉山君」

 私は慌てて起き上がると呼びかけた。

「いたた……。俺は大丈夫だから。環那はケガないか?」

 頭をさすりながら、杉山君も起き上がった。

「私は大丈夫。ありがとう……」

 私がお礼を言うと、杉山君が私をギュッと抱き締めた。

「よかった~。環那に何かあったらどうしようかと思った」

 杉山君がホッとした顔をする。

「本当に、ごめんなさい」

 私は、謝ると溜め息をついた。


 どうして私って。そそっかしいんだろう。


「環那、本当に大丈夫だから……」

 杉山君が、私の頭を優しく撫でた。

「……!!」


 でも、杉山君。急に右の手首を押さえて顔をしかめた。

「杉山君!?」

 私は慌てて、杉山君の手首に触れた。


 見ると、右の手首が少し赤く腫れている。


「大変!?湿布で冷やさないと。杉山君、救急箱どこかな?」

「テレビの横の棚の中だけど、これくらい平気平気」

「ダメ!冷やしたほうが腫れ引くと思うから……」

 私は急いで救急箱をとってくると、杉山君の手首に湿布を貼った。


「サンキュー。環那」

 急に杉山君が私の頬にキスをした。

「ちょ、ちょっと~!!」

 私は顔を真っ赤にさせた。

「お礼のつもりだったんだけど」

「お礼はいらないから!!とにかく怪我したの私せいだし、杉山君の右手の助けになるね」



 それからというもの、杉山君の怪我が長引いて、授業中ノートを書いてあげたり、杉山君のマンションに行ってご飯を作ってあげたりと5日くらい続いた。



「環那。今日もあいつの所に行くのか?」

 放課後、上履きを靴箱に入れて帰ろうとした時、悠生に呼び止められた。

「うん。私のせいで杉山君に怪我させちゃったから……」

「ずいぶん右手の助けになってあげたし。もう、いいんじゃないか?」

 悠生が眉間にシワをよせる。

「うん、わかってる。一応、ご飯作ってあげるの今日までにしようかなと思って」

 私は昇降口を出て歩きかけた。

「行くな!環那」

 悠生が私の腕を掴んで引き寄せた。

「ちょ、ちょっと。悠生……。こんな所でやめて」

 私は、悠生から体を引き離そうとした。

「あいつには告白の返事したのか?俺もまだなのに……」

「ごめん。それどころじゃなかったから、2人に返事もしてなくて……」


「返事まだしてないのに、どうして彼女のようにあいつの所に行けるんだよ……」

「……」


 そうだよね……。何でだろう?


「裏で女の子と遊んでたあいつにだけは、環那を渡したくない!」

 悠生の必死さが伝わってくる。

「ごめん、悠生。杉山君、そんなに悪い人じゃないと思うの……。いろんな女の子と付き合っていたのだって、親への反抗心みたいたものだし……」


 別に杉山君をかばっているつもりじゃないのに、私どうしてこんなこと言ってるんだろう……?


「あいつのことかばうんだ……。もしかして好きなのか?」


 悠生の質問に私は顔を真っ赤にさせる。


 ーどうして、あいつなんだよ……。俺の方が付き合い長いのに。


 悠生の心の声が聞こえた。

「顔を赤くしただけで、どうして杉山君が好きなことになるのよ?」

「また、読んだんだ?」

「ごめん!」

 私は両手を合わせて謝った。

「そうやって、杉山のも読んでるのか?」

「え……」


 そういえば最近、杉山君の心の声は聞こえないことないような?


 そのことを悠生に話したら、

「それって、環那が前に好きな人の心の声は聞こえないってお母さんから聞いたやつじゃないのか?」

 悠生は顔を曇らせた。


 私が杉山君のことが好き?まさか~。悠生といる時よりドキドキは多いけどー。


 悠生は真剣な顔で、

「環那が、杉山のこと好きでも俺諦めないから」

 と、言った。

「諦めないって……。まだ、悠生に返事だってしてないのに。それに杉山君のこと好きかどうかはっきりしないし」


 私の気持ちがはっきりしないせいで、悠生を困らせているのはわかってる。自分の気持ちを確かめないと……。


「とにかく自分の気持ち、確かめてみる……」

「俺の告白の返事はいつしてくれるわけ?俺にも限界があるんだけど」

 悠生が溜め息をつく。

「ごめん悠生。小学生の時からいつも一緒にいるから、それが当たり前だと思ってて、もう少し時間ちょうだい……」

「杉山のことが好きかも知れないのに、待っていられるかよ!」

 悠生がいきなり私の肩を掴むと、キスをしようとした。

「……イヤ!!」 私は思わず悠生を突き離した。

「……俺とはできないってことか」

「ごめん……。今、わかった。悠生とは友達でいたい」

「あ~あ。俺のことは男として意識してないってことかぁ。でも、杉山のことは信用でないから一緒に行く」

 悠生が言うので結局、一緒に行くことになった。


 買い物してマンションに行くと、杉山君がコーヒーをカップに注いで出してくれた。

「堀川も一緒なんて珍しいな」

「……」

 悠生は、黙ったままコーヒーを飲む。


 ー環那、独りじゃ。なにされるかわからないしな。


 と、悠生の心の声。


 もう~!悠生ってば何考えてるのよ~。


「そろそろ、ご飯作るね。杉山君、何か食べたい物ある?」「ん~。オムライスかな」

「わたかった。オムライスね」

 私が頷くと悠生が、

「俺も食べたい!」

 と、言った。

「わかった~」

 私は、台所に行くとさっそく準備にとりかかった。


「随分、怪我もよくなったし。俺、手伝うよ」

 杉山君が、台所に入って来た。

「じゃあ、お皿用意してくれる?」

 フライパンで軽く卵をお箸で混ぜながら答えた。


「環那。俺も手伝う」 

 悠生も台所に入ってきた。


「じゃあ、悠生はできたやつ運んでくれる?」

 オムライスを盛りつけしながら悠生に言う。

 なんだか、さっき悠生にキスされそうになったのが嘘みたいに、普通に話せているのが不思議なくらい。


「いただきま~す!」

 悠生が両手を合わせるとスプーンを持った。

 ーって、何やってんだ。俺は……。環那が心配だから来たのに。


「心配しなくてもいいから、召し上がれ」

 私は、にこにこしながら言った。


 杉山君に変なんことされると思って、着いてきたみたいだけど、そんなに心配することないのに。

 そりゃあ、この間はほっぺにキスされたけど、外国人がするのと同じようなものだし。


「本当、環那の作るのはどれも美味しいな~」 杉山君が、美味しそうにスプーンですくってパクパク食べた。

「杉山。環那がご飯作るのは今日までだからな」

「うぐっ……!!」

 いきなり、悠生が言ったので杉山君が食べた物を喉に詰まらせて目を白黒さた。

「み、水!」

 私は慌てて杉山君に持って行った。

「環那、今日までってどうゆうことだ?」

 いっきに水を飲み干すと、杉山君は私に聞いてきた。

「ほら。杉山君の怪我も治ってきたし。私の役目も今日までかなと思って」

「……怪我が治るまでって約束だったな」

「……」


 これでおしまいか……。なんか淋しいな……。

 私、何考えているんだろう……。これじゃ、まるで杉山君と離れたくないみたいじゃない。


 食事が終わると、私たちは片づけを始める。

 私がお皿を洗ってると、杉山君が横でお皿を拭いてくれた。

「ありがとう」「あ~あ。明日から、環那の作ったご飯が食べられないのか~。飢え死にするかも」

 杉山君が、お皿を拭きながらぼやいた。

「大げさな~」

 お皿を洗いながら私は苦笑いをした。

「マジで。環那の作ったご飯、美味しかったし。告白の返事OKなら、このまま彼女になって時々でいいから作りに来てくれると嬉しいんだけど」

 杉山君が真剣な顔で言った。

「ようするに、環那を彼女にして飯作らせたいだけだろ?」

 悠生が、途中で口を挟んできた。

「俺、そうゆうつもりじゃ……」

 杉山君が困った顔をさせた。

「杉山だったら、いくらでも飯作ってくれる女の子がいるんじゃないか?」


 悠生がいやみぽく言うと、杉山君を見た。

「そんな子、いないから。全員と別れたし」

 杉山君はきっぱりと言ってのけた。

「どうだか」

 悠生がいまいち信用していない顔をしている。

「私は、杉山君のこと信じるよ!」

 別に杉山君の肩を持つ訳じゃないけど、信じたい。


「環那……」

 悠生は、がっかりと肩を落とした。


 ーそんなに、杉山のことが好きなのか?


「……」

 杉山君の心の声が聞こえなくても、眼を見ればかわかる。


「ありがとう。信じてくれて。俺、環那のそうゆうところが、好きになったんだ」

「杉山君……」

 私の胸がキューンとする。


 悠生の方は面白くない顔をしている。


「とにかく、もう洗い物終わったんだろ?帰ろうぜ。じゃあな杉山」

 悠生が私の腕を掴んだまま部屋を出た。



「離して!悠生。離してってば!」

 私は、思いっきり叫んだ。


 私の腕から悠生の手が離れた。

「急に帰るなんてどうしたの?悠生」

「……このままだと、告白の返事OKしそうだったから」  

 悠生は、キュッと唇を噛みしめた。

「私、まだ自分の気持ちわからないのに告白するわけないでしょ?」

「ごめん。でも、環那があいつのこと選んでも。俺、まだあいつのこと信用したわけじゃないからな。環那を泣かせるようなまねしたら絶対許さない」  

 悠生は、ギュッと拳に力を入れた。

「悠生……」

 ひしひしと、私に対する気持ちが伝わってくる。

「はあ~。ダメだなー俺。環那に友達でって言われたのに、全然、諦めつかないんだから」

 両方の手で、自分の髪の毛をくしゃくしゃとやった。

「ごめん。悠生……」

 私はただただ謝るだけしかできなかった。




「委員長~。次、資料使うから職員室まで取りに来てくれ」

 次の日。朝のホームルームが終わると、佐山先生が私に頼んだ。


 次は、国語の時間だ。

 それにしても佐山先生、人使い荒いな~。


「環那。私、手伝おうか?」

 夏芽が気を使ってくれたけど、

「ううん、大丈夫。資料って言っても持てないほどじゃないと思うから」

 私はニコッと微笑んで見せた。


 前に頼まれた時は、持てるくらいだったから大丈夫だと思ったら、とんでもない。職員室に行ったら、この前より量が倍になっていて、持って行くのが大変そう。


「先生。これ、全部持って行くんですか?」

 私は思わず、聞いてしまった。

「悪いな~。持てないほどじゃないから、頼むな」

 佐山先生がニコニコしながら、資料をポンと叩いた。


 先生の笑顔に負けて私は、仕方なく資料を運ぶ。


 確かに持てないこともないけど、さすがに重い……。

 こんなことなら、夏芽も連れてくればよかった……。


 そんなことを思っていたら、ふいっと急に荷物が軽くなった。

 振り向くと、杉山君が無表情のまま立っていた。

「す、杉山君……。ありがとう」

 私は慌ててお礼を言った。

「環那。ちょっと、話しがあるんだ」

 杉山君は私の腕を掴んで、近くの部屋に連れ込んだ。


 倉庫になっているから、誰もいない。

 し~んと静まり返った部屋で、私は声をかけた。

「あ、あの。杉山君。どうしたの?」

「告白の返事まだかな?」

 杉山君が反対に聞いてきた。

「ご、ごめん。もう少し待って」

 まだ、自分の気持ちがわからなくて、返事もできないままだった。

「いい加減、もう待てないんだけど。それに堀川と随分、仲がいいよな?昨日もさっさとあいつと帰ったし。もしかして好きなのか?だから、返事はほっといて、あいつと仲良くやってる訳か」

 杉山君が、私の肩を掴むと睨みつけた。


 怖い……。

「わ、私。そんなつもりじゃ……」

 昨日の杉山君と違って不良ぽい感じだし、前にカフェで見かけた時の杉山君を思い出す。


 杉山君が私の髪に触れる。

 私は、思わず身体をびっくっとさせた。

「……」

 杉山君が私のおでこにチュッとキスをした。

「!!……」 

 私はおでこに手をやると、顔を真っ赤にさせる。


「ごめん。怖がらせるつもりはなかったんだ。環那はそんな子じゃないって分かっているのに。それに、堀川と仲がいいからつい勘違いして……」

「私の方こそごめん。なかなか返事できなくて……。でも、悠生には告白されたけど断ったし……。ずっと友達のままだから」

 声を振り絞って伝えた。

「ふ~ん。そんなことがあったんだ?でも、断ってもまだ、君のこと諦めていないんじゃないかな?」


 確かに昨日の様子だとそんな感じだった。


「堀川のことはわかったけど。俺の方は返事、いつもらえるのかな?俺のこと嫌い?」

 杉山君が私の顔を覗き込んだ。

 さっきと違って、怖い感じの杉山君が消えていた。

 私は少しホッとする。

「嫌いじゃないよ。他の男の子といる時より杉山君といる時のほうが、いつもドキドキしてるし」

「じゃあ、もっとドキドキすることしてあげるよ」

 そう言うと、私の唇に杉山君がキスをした。

「……!!」

 私は、また顔を真っ赤にさせる。

 心臓の音も早くなった。


「どう?ドキドキした?」

 また杉山君が、私の顔を覗き込んだ。

 私は何度も頷く。

「……」

 悠生にキスされそうな時は、嫌だったのに。杉山君だと嫌じゃない。


 それに遊んでいただけあって、杉山君のキスって、すごく上手。何人の女の子とキスしたんだろう……って、何考えているのよ~。私!?

「ごめん。やっぱり、告白の返事。もう少し時間ちょうだい。杉山君のことが好きかどうかちゃんと確信してから」

「じゃあさ。明日休みだしデートしよう。俺のこと好きかどうかわかるかも知れないし。緑公園に噴水の前で10時な」

 杉山君は、それだけ言うとさっさと部屋から出て行った。


「私、行くなんて一言も言ってないんだけど」

 私は、独りで呟いた。


 杉山君が怪我した時は、責任感で、面倒見るのが優先的になっていていたからな~。明日、デート気分を味わえば、自分の気持ちがわかるかも知れないし……。

 とりあえず、行ってみますか。





 次の日。待ち合わせ場所に行くと、杉山君が噴水の前で待っていた。

「杉山君。ごめんね遅れて」

「俺も今、来たところ。それより、今日は杉山君はなしな。下の名前で呼んだほうがデート気分が味わえるから」

「……」

 さすが、女の子と遊んでいたことはある。

「ほら、言ってみろよ」

「……そ、奏太君」

 私は、恥ずかしそうに呼んでみた。

「よくできました。じゃあ、さっそくだけど。あれ乗ろうぜ」

 奏太君が私の手を掴むと、ボートの方に走った。


 私達はボート乗り場に行くと、手漕ぎボートを選ぶ。

「ボート漕げるの?ペダル式の方がよかったんじゃないの?」 心配になって、奏太君に聞いてみる。

「まかしとけって」

 奏太君が自信満々に言ってみせた。


 本当に大丈夫なのかなと思ったら、漕ぐのが上手~。


 2人で池にいるアヒルや鯉にエサをあげたりしていたら、あっと言う間に時間がきてしまった。


「あはは~。すごい鯉とアヒルの大群だったな~」

 奏太君がおかしそうに、笑った。

「もう~。笑いごとじゃないってば!」

 私は、頬を膨らませた。


 奏太君は笑っているけど、私の手が滑って、エサをどっさりと池の中に落としちゃって。その後、アヒルと鯉が押し寄せて来て大変だった。


「それより。そ、奏太君。この近くに美味しいクレープ屋さんができたんだって行かない?」

 ドジぷりに恥ずかし過ぎるので話を変える。


 わざわざ調べてきた訳じゃないけど、前から美味しいって評判は聞いていた。

「いいよ。行こう」

 奏太君が頷いた。


 公園を出てすぐある歩道橋を渡って2、3分歩いて行った所にある。


 歩道橋の階段を上る。


「環那。また、手つなごうか?」

 奏太君が私に手を差し伸べた。

「うん……」

 私は奏太君と手をつないだ。

 さっきは、無意識のうちに手をつないでいたけど、意識するとドキドキしてしまう。


「こら!しょうた!走ったらあぶないわよ」

 私達の後ろから、3才くらいの子が走って来た。

 その子のお母さんが、慌てて後ろから追いかけて来た。

 男の子は鬼ごっこと勘違いしているのか、キャキャふざけながら時々、後ろを振り向いて走って行く。


 でも、階段を下り駆けた時、男の子が足を滑らせた。

「きゃっー!!しょうた」

 男の子のお母さんが悲鳴をあげた。


 落ちる!!


 私は思わず助けに行こうと駆け出そうとした時、奏太君が先に駆け出すと男の子を抱きかかえた。


 ダダダ……!!

 2人一緒に階段から転げ落ちた。


「奏太君!!……」

 私は慌てて駆け寄った。


「うえ~ん!!」

 男の子は、大声で泣き叫んでいる。


「しょうた!!」

 男の子のお母さんが、駆け寄ると男の子を抱き締めた。


「奏太君……?」

 男の子はだったけど、奏太君の方は瞼を閉じたまま動かない。


「奏太君!起きて?奏太君!」

 私は身体を揺すってみたけど、びくともしない。


 嫌な予感が頭の中でグルグル回っていた。


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