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心の扉  作者: 夢遥
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心の扉

 私には秘密がある。

 それは、周りの人の心の声が聞こえたり読んだりすることができる。

 でも、お母さんの話だと好きになった人の声は、それができないと言うこと。


「ねえ、環那。今日転校生が来るみたいだよ」

 前の席の宮本夏芽が後ろを振り向いた。


 私、青山環那かんな16才。

丸顔で、くりっとしたネコ目なのでちょっと子供っぽく見られがち。


 ー転校生か~。男だったらイケメンだといいな~。


 さっそく夏芽の心の声が聞こえてきた。


「夏芽。転校生、男だったらいいね~」

 ニヤニヤしながら夏芽を見る。

「あ!環那。読んだでしょ?」

 夏芽はふぐのように頬を膨らませた。

「あはは~。ごめんごめん」

 私は思わず苦笑い。


 唯一、友達の夏芽と小学校からくされ縁の堀川悠生ゆうきだけが、私が相手の心が読めることを知っている。こんな私でも気味悪がらないで友達でいてくれるから、友情を感じるんだけどね。


 そして、ホームルームが始まって、佐山先生と一緒に男の子が教室に入って来た。


「転校生を紹介するぞ~。杉山奏太そうただ。みんな仲良くしてやってくれ」

「杉山奏太です。よろしく」

 頭はぼさぼさ。黒縁眼鏡をかけた男の子が挨拶をした。


 ーなにあれ~。ダサ~イ。

 ーイケメンじゃないのか~。

 次々とみんなの心の声が聞こえてくる。


「じゃあ、席は青山の後ろな」

 と、佐山先生が言った。


 え~。私の後ろ?


「学級委員長。昼休みに杉山に校内を案内してやってくれ」

「え!」

 私は思わず席から立ち上がった。

「青山、頼むな~」


ー環那、可哀想~。


 また誰かの心の声が聞こえてきた。


 私、学級委員長をしている。だからって、校内案内する人なんて誰でもいいじゃない~。




「ここが、音楽室でそっちが図書室」

 昼休み。私は仕方なく杉山君に校内を案内している。


「杉山君。聞いてるの?」

 私はついつい大声を出してしまう。


 貴重な昼休みに、案内してるのに杉山君ときたら、携帯と睨めっこしているし。


 ー……そんなに大声出さなくたって、聞こえてるよ。ばーか。


 と、杉山君の心の声。


 ちょっと何よ。ばかって!ダサ男に言われたくないわよ!でもよく見るとストラップがクリスタル系になっていてダサくない。


「お~い。環那」

 悠生が、手を振りながらこっちやって来た。

「どうしたの?悠生」

「今日の帰り、一緒に帰らないか?」


「いいけど……。夏芽も一緒でもいい?」

「……いいよ」

 悠生はしぶしぶ返事をした。


 ー環那と2人で帰りたかったけど。ま、いっか。この次で。  

「悠生、ごめんね」

 私は両手を合わせて、謝った。

「あ!環那。俺の考えてること読んだだろ?読まないように言ってるのに」

 悠生はムスッと頬を膨らませた。

「ごめん。今度から極力、読まないようにするから」

 また、私は両手を合わせた。

「あのー、もう教室に戻っていいかな?次の授業の準備もあるし」

 杉山君がおずおずと、私達の間に入ってきた。

「あ、ごめん。杉山君……。だいたい、校内案内したし教室に戻ってもいいよ」

 すっかり、杉山君のこと忘れてた。


 ー俺がいるのに、忘れて他の男と喋ってるんじゃねえよ。


「……!!」

 杉山君の心の声に唖然とした。

 

 ダサ男なのに、そんなふうに思ってるなんて信じられない!


「あれ?初めてみる顔じゃん」

 悠生が、杉山君に気づいた。

「今日、転校生してきた杉山奏太君」

「俺、堀川悠生。よろしくな!」

 悠生が元気よく挨拶したのに杉山君は、

「よろしく」

 ボソッと挨拶して行ってしまった。

「暗っ!なんだよ。あれ」


 悠生は不満そうな顔をした。

 悠生の気持ちはわかる。あれじゃ、彼女もできないんじゃないかな?



 放課後、3人での帰り道。

「ねえ、あそこのカフェ。新しくできたんだって。ちょっと寄ってかない?」

 夏芽が近くのカフェを指さした。

「いいよ。悠生も大丈夫?」

「ちょうど、喉も渇いたし。いいぜ」

 悠生も賛成してくれたのでカフェに入ることにした。


 バンガローぽいちょっとおしゃれなカフェだ。

「おしゃれ~」

 夏芽が目を輝かせた。

「本当だね~」

 私も夏芽につられて目を輝かせる。


 椅子に座って私達はわいわいお喋り。


「でも、今日の杉山君には参ったよね~。私が話かけても暗くて」

 夏芽が、溜め息をついた。

「確かに。暗すぎる」

 悠生も納得しながら頷く。 

 杉山君の心の声が見かけと違って、本当に杉山君が思っているのか疑ってしまう。


「何よ!バカにしないで!!」

 いきなり、女の子の怒鳴り声が聞こえて振り向くと、近くの席のショートヘアーの女の子が一緒に座っていた男の子の頬を思いっきり叩いた。


「うわ~。修羅場かよ」

 悠生が目を丸くして見た。


 ーなによ!三股かけてたなんて悔しい!


 女の子はさっさと店から出て行ってしまった。

 そうゆう理由か……。


 女の子の心の声を聞いて納得。


「ねえ、環那。女の子何だって?」

 夏芽が、私が心を読んだのに気づいたのか聞いてきた。

「男の子が三股かけていたみたい」

「二股じゃなくて三股?すご~い。」

「どんだけいい加減な男なんだよ」

 夏芽と悠生は、興味ほんいで男の子に目を向けた。


 私も男の子を見る。


 ーなんだよ。他に付き合っている女がいたからって叩くことはないだろ。柚季のやつ。


 ……全然、反省のいろがないみたい。

 でも、まって。この男の子の声、どこかで聞いたことがあるような……。

 そうだ!!杉山君の声に似ている。


 思わずじっくりと男の子を見た。


 少し不良ぽいし眼鏡もかけていないけど、杉山君に似ている。

 あ!携帯にクリスタル系のストラップ……。


「環那。どうした?あの男の心の声、聞こえたか?」 

 悠生が私の顔を覗き込む。

「す、杉山君……」

 私は唖然としてしまった。

「杉山……?」 

 また、悠生が男の子の方に目をやった。

「あはは~。やだなあ~。環那ったら。あの男の子が杉山君のはずないじゃない」

 そう言いながら、夏芽は笑った。


「杉山ってあんな態度でかかったか?この世に似てる人が3人いるって言うし、勘違いじゃないのか?」

 そう言って悠生は座り直した。


 勘違いなのかな~?ストラップだって同じだし。携帯の色も同じなんだよ?

 納得いかない顔で、もう一度男の子を見た。

 いくら近くの席って言っても、もう少し近くじゃないとな~。


 そんなことを思っていると、男の子は席を立って店から出て行ってしまった。


「はあ~。ああゆう彼氏は欲しくないわ……」

 男の子がいなくなった後、夏芽は頬をつきながら溜め息をついた。


「俺もああならないように気をつけよう」 

「あはは~。悠生はそうならないから、大丈夫だよ~」

 私はからかうように笑った。

「どうゆう意味だよ!」

 悠生が私の髪をくしゃくしゃにする。

「もう!悠生。やめてよ」

 悠生の腕を掴んだけど、私は慌てて悠生の腕を離すと、夏芽の方に目をやった。


 ー環那はいいな~。悠生君と仲良くて。


「……」

 夏芽は悠生のことが好きだったんだ……。まだ、告白はできないみたいだけど、私には打ち明けてくれた。

なのに、悠生にちょっかい出されたからって、夏芽の前でこんなこと……。


『ごめん夏芽!』

 私がコソコソ夏芽に謝ると、

『もう!また、読んだでしょ?あまり読まないでよ』

 夏芽は恥ずかしそうに言った。

「なに2人で内緒話してるんだよ……」

 悠生はムスッとしながら私達を見る。

「な、なんでもない……」

 私は慌ててごまかした。


 夏芽の気持ちも、なるたけ読まないように気をつけよう……。




 翌日、学校に行くと杉山君が、席に座ってまた携帯を見ていた。

 今日も髪はぼさぼさでおまけに、眼鏡にマスクという格好だ。

「おはよう、杉山君」

 私は元気に挨拶した。

「おはよう」

 杉山君は、ボソッと挨拶をする。


 相変わらず暗いな~。やっぱり昨日の人は人違い?それとも……。 


「ねえ、杉山君って双子のお兄さんとかいる?」


 それしか思いあたらない。


「いないけど」

 杉山君は、またボソッと答えた。


 ー双子だったらどうだっていうんだよ。


 杉山君の不機嫌そうな声。

 ……この声。やっぱり、昨日の男の子の声にそっくり。


 私はじっと杉山君を見つめた。

「何かよう?」

 杉山君は私に見つめられているのに気づいたのか、顔を上げた。


 ……!!



 それほど目立たないけど、マスクの下から杉山君の頬が赤く手の跡がついていた。


 間違いない!昨日の男の子は杉山君だ!


「おはよう、環那。どうしたの?」

 呆然としていた私に、夏芽が挨拶をする。


「おはよう、夏芽。ちょっと……」

 夏芽の袖を引っ張って、杉山君から離れた。

「どうしたの?」

 夏芽は不思議そうな顔で私を見た。

「昨日、カフェにいた男の子。やっぱり、杉山君だった」

「まさか~」

「だって杉山君の頬に叩かれた跡が……」

「じゃあ、私も確かめてくる」

 夏芽は恐る恐る、杉山君に近づいて行った。


 しばらくすると、私の所に戻って来た。

「環那の言う通りだった……。信じられない。昨日と全然、別人……」


 私と夏芽は呆気にとられた。



 その日の放課後、傘を持って来ていないのに運悪く外は雨が降っていた。

「どうしよう……。傘、持って来てないよ」


 夏芽は、用事があるとかで先に帰っちゃったし。悠生も今日は休みだし……。

 昇降口で立ち往生していると、杉山君が傘を持って出てくるのが見えた。


 杉山君だ!昨日の男の子なんて今でも信じられない。


 私はまた杉山君を見つめた。


「委員長。何かようか?」

 杉山君が私に気づいて話かけてきた。

「別に用って言うほどじゃ……。ただ、杉山君って彼女とかいるのかなと思って……」

 慌ててごまかす。

「……いるけど」

 杉山君が一言、言っただけで会話が途切れた。


 そこは、否定しないのか~。昨日の女の子は三股かけられたとか言っていたみたいだけど、本当はあと何人、彼女がいるんだろう。それに、どうしてこんなに違うの?なんか興味ある~。


 ー委員長のやつ。朝から、俺のこと見てたよな……。俺に気があるのか?


「……」

 杉山君のこと見ていたからって、なんでそう思うのよ~。

 でも、昨日私達がカフェにいたことは気がつかなかったみたい。


 杉山君は、傘をさして歩き始めていた。


「杉山君。また明日ね~」

 杉山君の反応が知りたくて、私は思いっきり手を振った。


 でも、杉山君は無視してそのまま正門の方へ歩いて行った。

 やっぱり無視ですか……。


 それに私の方は傘もないのにどうやって帰ろう?濡れる覚悟で走って帰ろうかな……。


 覚悟を決めて、走り出そうとした時、私の前に傘がさし出された。


「……?」

 私は、振り向くと驚いた。

 だって、そこには杉山君が立っていたから。

「貸してやる」

 杉山君は、ボソッと言うともう一度、私に傘をさし出した。

「え?でも、杉山君が濡れちゃうし……」

「いいから、使えよ」

 それだけ言うと、杉山君は私に傘を持たせて走って行ってしまった。


 返事する暇もなかった~。


 私は、仕方なく杉山君の傘をさして帰ることにした。


 でも、杉山君って、どうゆう人なの……。カフェで見た時は、心の声も含めて不良ぽい感じで遊んでる感じだったのに……。

 なんだか、訳がわからず立ち尽くした。



 そして次の日、杉山君に傘を返そうと思っていたのに休みだった。

「先生。杉山君は今日休みですか?」

 朝のホームルームが終わると佐山先生に尋ねた。

「風邪で休むと、本人から電話があったぞ」

「え……」

 昨日、濡れて帰ったからだ……。


 ー困ったな~。プリントもあるのに。杉山は転校してきたばかりだから、まだ友達もそれほどいないし。誰か届けてくれる子がいればな……。


「……」

 佐山先生、そんなこと心配してるのか……。

 私も傘返すついでがあるし、それに杉山君が風邪引いたの私に原因があるよね……。

「せ、先生。良かったら、私が杉山君にプリント届けます……」

 おずおずと、言い出した。

「よくわかったな~。先生が杉山にプリント届けるのに困ってたの」

「や、やだなぁ~。先生の考えてることならわかりますよ~」

 私は苦笑い。

「そうかそうか!じゃあ、これ頼むな!」

 嬉しそうに佐山先生は、私にプリントを渡す。

「ついでに、杉山の様子も見てきてくれないか?あいつ1人で暮らしてるみたいだから、倒れてても心配だから」

 と、佐山先生が言った。


 1人暮らし!?そうなんだ……。



「ここだな……」

 悠生が、地図と見比べながら目の前に建っているマンションを見た。


 放課後、1人で杉山君のうちに行くのも気が引けるから、夏芽を誘ったけどバイトの日で断られてしまった。

 でも、ちょうど昇降口でばったり悠生に会ってなぜかついて来てくれることになった。



 私達はマンションに入ると、部屋の番号を確認しながら進んで行く。

「203、20……。あった!ここだ」

 私は部屋の前に立つと、インターホーンん押した。


 ピンポ~ン!


「はい」

 インターホーンから杉山君の声が聞こえてきた。


「お、同じクラスの青山環那です!佐山先生からプリント預かって来たんだけど……」

「ちょっと待って。今、開ける」

 そう言ってから、ガチャッと鍵が開いた音がしたけど、いっこうにドアが開く気配がない。

「どうしたんだ?杉山のやつ……」

 不審に思った悠生はドアのノブに手をやるとドアを開けた。

「……!!」

 玄関先で杉山君が倒れてたから、私はびっくり。


「杉山君!!大丈夫!?」

 私は慌てて杉山君の体に手をやった。

「すごい熱!!」

「大変だ!急いで寝せないと」

 悠生が杉山君の体を起こすと部屋に運んだ。

「私、氷枕持ってくる!杉山君台所借りるね!」

 私は慌てて、台所に行った。

 でも、杉山君が独りで暮らしているわりには、部屋が広いな~。


「悠生。持ってきたよ」

 水枕の中に氷を入れると急いで持って行く。

 悠生は杉山君の頭の下に氷枕を置こうとした。

「あれ?」

 悠生の手が急に止まった。 

「どうしたの?悠生」

 私は、きょとんとした顔で悠生を見た。

「環那がカフェにいたヤツは、杉山だって言ったよな?……」

「え?うん……」

「本当だったんだ……」

 杉山君が眼鏡をかけていないせいかはっきりと確信したいみたいだった。


 眼鏡をかけていない時の杉山君って、間近でよく見たことがなかったけど、よく見ると顔立ちが整っていて瞼を伏せている睫毛も長いしイケメンだ。


「環那。杉山のこと見すぎ」 

 悠生がムスッとしながら、私を見た。

「あ、ごめんって。どうして悠生が怒るのよ?まるで妬いてるみたい~」

「……妬いてるんだけど」

「え?……」

 私は呆然と悠生を見つめた。

「俺、昔から環那のことが好きなんだ。なるたけ、読まれないように気持ちは隠してたけど」

 真剣な瞳でいきなり、悠生が私の髪に触れた。


 ドキンッ!!


 初めて悠生の気持ちを知った気がした。



「わ、私。杉山君におかゆ作ってくる!」

 ぱっと立ち上がると、台所に向かった。


 どうしよう……。夏芽、悠生のことが好きなのに……。




「今日も、プリント頼むな~」

 次の日の放課後。今日も杉山君が休みだったので、佐山先生がプリントを私の所に持って来た。

「は~い」

 私は仕方なく返事をする。


 昨日あれから、悠生と気まずくて先に帰って来ちゃったし、今日は夏芽とも気まずくて、

まともに顔が見られなかった。

 その夏芽が、

「環那。今日はバイトないから一緒に行けるよ」

 と、言ってくれたけど、

「ありがとう。でも、大丈夫。独りで行ってみる」

 と、断ってしまった。


 ーどうしたんだろう?環那。昨日は頼んだのに。


 夏芽の声が聞こえてきた。


 夏芽が不審に思ってる……。ごめん!夏芽。



 

 ピンポ~ン!


 さっそく杉山君の住むマンションに行くと、思いきってインターホーンを鳴らした。

「はい」

 杉山君の声が聞こえてきた。

「青山環那です。プリント届けに……」

 私が言い終わらないうにち、玄関の鍵が開いてドアが開いて、杉山君が顔を出した。

「す、杉山君。具合どう?」

「……昨日は迷惑かけてごめん」

 珍しく、杉山君が謝ってる。

「ううん。今日は大丈夫そうだね……。あ、先生から預かってきたプリント」

 私は、プリントを杉山君に差し出そうとした時、急に腕を掴まれた。

「す、杉山君?」

「ちょっと、あがっていかないか?」

 杉山君の言葉に、びっくりして足がすくんだ。

「で、でも。プリント届けに来ただけだから……」


 まさか!私に変なことする気じゃ!?

 一瞬、そう思ったけど、杉山君が思っていることは違った。


 ー昨日、委員長が作ったおかゆうまかったから、もう一度、作ってもらいたいな。


 そうゆうことか……。


「杉山君。わかったから手、離してくれない?」

「ごめん」

 杉山君は慌てて、私の腕から手を離した。


「お邪魔しま~す」

 杉山君を信じてって言っても嘘になるけど、とりあえず、おかゆ作るだけだからね!

 でも、ちゃんと食べてくれたんだ……。


「昨日、委員長が作ってくれたおかゆ……」

 杉山君が言おうとした時だった。


 ピンポ~ン!


「ごめん。ちょっと待ってて」

 玄関の方に行ってしまった。


 それにしても、眼鏡かけてない時の杉山君って全然、学校の時と性格が違う~。


「……どうして?別れるのはイヤ!!」

 玄関の方で、泣きそうな女の子の声が聞こえてきた。


 そっと玄関を覗いて見ると、カフェにいた女の子とはまた違う女の子が、杉山君の胸もとにしがみついて泣いていた。


「そう言われても、困るんだけど」

 杉山君は冷たく、女の子を突き放した。

「どうして?私のこと嫌いになったの!?それとも、他にも付き合っている子がいるから!?」

 だんだん女の子は興奮気味になってきた。

「は~あ?もともと、おまえのことは、好きでもなんでもなかったのに、無理やり付き合わせたのそっちだろ!?」

 杉山君も、だんだん声を荒立てた。


 うわ~。ちょっと、どうすればいいのよ。この状況……。


 恐る恐る覗いていたら、女の子が私に気がついたのか、急にツカツカと部屋に入ってきて、いきなり私の頬を思いっきり叩いた。


 パチ~ン!!


 痛っい!!

 何するのよいきなり!!


 私は頬に手をやった。


「見たことない顔だけど、あなたどうやって奏太に言いよったの!?」

 女の子は私の胸ぐらいをつかみかかってきた。

「紗英!!やめろ!!その子は関係ないんだから」

 杉山君が慌てて止めに入ったけど、

「どうして、この子をかばうのよ。奏太のバカ!!」


 パチ~ン!!


 杉山君の頬も一発叩いて、泣きながら出て行ってしまった。

 私は呆気にとられてその場に座り込んでしまった。

「委員長ごめん。大丈夫か?」

 杉山君が冷やしたタオルを持って来て、私に渡した。


 あの子。気性が激しすぎる。なんなのよ~。


「……杉山君。どうして、いろんな子と付き合ってるの?もうやめなよ」

「……」

「裏では、女の子いっぱい泣かせて。だいたい、学校の時と違いすぎるよ!どっちが本当の杉山君なわけ!?男なら隠れてないで正々堂々と表に出てくればいいじゃない……。私帰る!」

 さっさと、部屋から出て行った。

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