表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

考(カンガエ)

更新遅れる日々にすみません。

私は存分にゲームを楽しんでいます。

二次元って素晴らしいよね!


説明回でやたらと文字ばかりです。

目の疲れにどうぞお気を付けくださいませ。

まあとにかく設定の文字が躍る6話目、始まります。





 VariousOnline。

 人気の礎になっているキャラクター作成の幅は、他の多くのMMORPGと比較して非常に大きい。

 正と悪の対立が描かれる世界なのだから、正の側の種族で作れるのは当然だ。

 人族はそのまま人間を指して、能力のバランスが取れているのでおよその職業に適性を持っている。

 獣人族は動物の特性を備えた人間に近い、耳や尻尾、牙や爪などに加えて体格や性格も様々な種族で、各動物の特性を活かした職業を専門的に向いている。

 妖精族は文字通り妖精に交わりが深い種族。エルフ、ハーフエルフ、ドワーフの3種に分けられる。妖精信仰があるので神官や魔術師など魔法を得意とする職業が主になる。

 ファンタジーMMORPGによくあるこれらの3種族が基本作成できるキャラクターだけど、VOではさらなる選択肢が広がっていた。

 本来対立する相手で倒すべき敵モンスター、悪の側の種族も選択して作成できるようになっていた。

 課金制で選択できるようになる、獣魔族、妖魔族、蟲魔族。

 スペシャルユーザー(SY)にのみ解放される選択、木魔族、霊魔族、魔人族。

 後ろの3種族は基本ステータスが軒並み高いことに加えて、運営会社が定めた非常に厳しい基準をクリアしたSYの証明にもなるので、ゲーム内では非常に目立つ上に羨望の的になる。

 細かく数えればベースだけでも30近い選択肢、その上で顔や体系などのディテールを決めるので、ゲームの中で自分と全く同じアバターを見かけることはそうそうない。

 自分だけの、という特別感は年齢性別関係なく人を魅了した。


 ここでひとつ考えて欲しい。

 正悪両方のキャラクターを作成できる。なら、ゲームのストーリーはどうなるだろう?

 VOの出した答えはこうだ、4通りのメインストーリーを用意したんだ。

 正道正義のストーリー、悪役悪者のストーリー、そしてそれぞれの離反、つまり正義が悪に、悪が正義に寝返る2つのストーリー。

 その気になれば、勇者姿の悪の帝王プレイや、一日一善の人助け死神プレイができる。何だってできる。

 ありがちな世界でも、遊び方は他に類を見ない。

 VOの提供するゲームシステムは退屈していたオンラインゲームのユーザーに新たな世界を開いてくれた。

 今のすべてのシステムが始めからあったわけではないけれど、1年刻みですべてが変わる時代と技術の進歩によって少しずつ進化していったVOはついに、たくさんの人々を虜にする人気オンラインゲームの地位を得た。




 というのがオレを口説き落とそうとするシュウの熱い熱い弁論だった。

 本当に熱かった。

 1歩下がったタイチとマサが嫌そうな顔でシュウの背中を見ていたのが印象的だった。

 そっか、2人もこれで誘われた(あきらめた)んだね。


 シュイさんたちの話し合いを待つ間、オレは体育座りのままVOについて、この世界について知っていることを思い出そうとしていた。

 1ヶ月前までは毎日のように遊んでいたゲームだ。多少飛んでしまった所があっても、頭をひねっていれば少しづつ思い出して来る。

 たとえば現在位置。

 黄昏砂漠のオアシスから一番近い村と言えば、オルサン村だろう。人と獣人とドワーフが少し、小さな村だ。

 VOに置ける正義、命朋連盟に属する友好的な所なので、勇者パーティもそれに助けられたオレも温かく迎えてくれた。少しだけずきりとうずいた。


 続いてステータスについて。

 VOのステータス配分は、2年位前のバージョンアップでずいぶんと変わったらしい。

 そういうのに詳しいマサの話では将来的な技術の進歩を見越してだろうと言っていたけれど、オレにはよく分からなかった。シュウがVR、VRと叫んではタイチに叩かれていて、何故か2人とも嬉しそうだった。え、何で。

 それはさて置き、VOのキャラクター成長はLVとHP、MP、SPだけが連動する仕様になっている。なので課金やイベントアイテムのLVアップキャンディを使っても、それで各能力は1も上がらない。

 能力を成長させるためにはキャラの鍛錬が必要になる。

 剣を振るとHACK(斬撃)とDEF(防御)が上がる、魔法を使うとMGAT(魔攻)とMGDF(魔防)が上がる、と言った具合に行動に即した能力が成長する仕組みで、今のはただの例でしかないけれど実際はもっと細かく判定があって、キャラを動かせば動かすほど能力が成長する、強くなれる。

 付加的な成長方法もある。LVアップ時にもらえるSTPを振り分けることにより1Pにつき1、能力値を上げられた。LUCK(幸運)は例外で1Pにつき0.1上がる。

 他にも装備や職業、称号、スキルによって能力値に補正が加わる。そして例外的に、クエスト報酬でSTPがもらえる場合もある。

 また鍛錬の方法も色々で、モンスター相手に剣を振っても、壁や木に剣を振っても、道場で剣を振っても鍛錬になる。要はとにかく操作しろって事なんだろう。


 そして今度は、経験値について。

 LVを上げるために必要不可欠な経験値は通常、モンスターを倒して得られる。しかしここはVO、それだけじゃ普通すぎる。

 攻撃や鍛錬の際の操作でも、ごく小さな経験値が得られるんだ。数字としては1動作で小数点第2位くらいの小さなものだけど、すべての捜査に経験値がつくならこれほど嬉しいことはない。

 ゲームをすればするほど強くなれるし、やり方によってはモンスターと戦わなくてもLVが上がる。

 生産職と呼ばれるアイテムを作るのが好きなプレイヤーでも、戦闘が苦手なプレイヤーでも、苦労はあるけれどしっかりゲームを楽しめるのだ。

 つらつらと頭の中で考えている内に、ちょっとわき道にそれかけてしまった。大体シュウのせいだね。息が苦しくなる。

 もっと必要なことはなかったかな。大事なことを忘れたままだと、無事に帰るまで不便があるかもしれない。

 オレはさらに記憶の知識を掘り起こす。


 ステータス関連で、スキル。

 スキルは2つの性質を持ち、持っているだけで機能するオートスキルと、スキルスロットに装着しないと使えないアクティブスキルがある。

 オートスキルは自動の名の通りスキルを得た瞬間から発動し、プレイヤーは常にそのスキルの恩恵を得られる。スキル画面でON、OFF設定ができる。使用に一切の制限を持たず効果的だけれど、その分獲得条件が難しめだ。

 反対にアクティブスキルはスキルスロットにスキルを装着して初めて使えるようになる。スロットの数は制限があるので、目的によってつけ替える必要がある。使用に制限がある代わりに獲得しやすい。スロットはLVアップやアイテムで増やせる。

 スキルは数学で習った樹形図のように関連性と流れを持ち、獲得に条件つきのものが多い。中には、VOの中でただ1人だけが獲得できるオリジナルスキルというものまである。これも憧れの的の1つ。


 次に称号と職業。

 称号はそのキャラクターの行動や状況によって賞与または付与される。1人いくつでの称号を得られるが、表示できるのは1つに限られている。そして称号効果も表示されないと発揮しない。

 装備を限定してクエストクリアするともらえる●●の鬼、▲▲バカ、純情一途■■愛。

 参加パーティ条件でもらえる紅一点、ハーレムヒーロー、全員オレの嫁。

 称号名は真面目なものからネタなものまで様々だ。ちなみに全員オレの嫁はシュウが使っていた称号。誰を指して全員なのかすごく気になって仕方なかった。呼吸が震える。

 職業は現実の就職と同じように、就きたい職業に関連した施設で面接ならぬクエストをクリアすると獲得できる。

 一度得た職業を辞めて他の職業に就くこともできるけれど、その場合前の職業はリセットされ、さらに辞めた職業に戻りたい時に受け直すクエストは最初よりも格段に難易度が上がる。

 オフィシャルHPの掲示板で、「ゲームのくせにリアルすぎて全俺が泣いた」「もれも」「オレいつの間に書きこんだかな?」「あれ、俺がいる」と続くスレッドを見てタイチたちが笑っていた。耳鳴りがしそうだ。


 ここまで考えたオレは、一度閉じたステータス画面?を開き直してみる。


ピポン


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<


NAME:カリン(♀)

LEVEL:2  CLASS:人族

JOB:無  TITLE:異邦人

STP:5

--------------------

HP:600  MP:250  SP:700

--------------------

HACK:25  STAB:27  BEAT:19

DEF:15  MGAT:35  MGDF:28

AVD:31  DEX:32  LUCK:10

--------------------

EQUIP:女将のお古

SKILL:お茶の間のアイドル


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 さっきから何も行動していないのだから当然変化のない画面?の、気になる項目へ人差し指を滑らせた。


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<


TITLE:異邦人


異邦人:この世界に属さぬ、異世界からの来訪者。逃げるも染まるも、本人の心次第。

 この称号を自分以外の誰かが知るたび、全ステータスに人数×1%のマイナス補正を受ける。0人の時、50%のプラス補正を得る。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 名前の響きの割に効果がいっそえげつなかったです!

 何これとんでもない、衝撃でしかないんだけど!?

 称号なのにマイナス補正ってだけでも引くくらいなのに、プラスの値が聞いたこともない数字だ。

 LVが上がってステが成長すれば、恐ろしいことになりそう…。

 確認開始早々の事実に半開きで脳と口が固まる。どうにか気合で硬直した指をぎこちなく動かした。

 STPが5あるのは、LVが1つ上がってるからだと思う。黄昏の遭難で経験値があったのかな?

 人族の初期ステは確か、HACK、STAB(刺突)、BEAT(打叩)、MGATが15。

 DEF、MGDF 、AVD(回避)、DEX(命中)が10。

 LUCKが2。

 そこから比べると、やっぱりオレのはずいぶん高い。LUCKなんて10もある。

 弱いよりも助かるので、ここはよし、と。それじゃあ…。

 詳しく見るまでもないEQUIP(装備)を飛ばして、スキル欄に指で触れた。


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<


SKILL:お茶の間のアイドル


お茶の間のアイドル:(auto)愛され親しまれ可愛がられる、暮らしに身近なみんなの癒し系アイドル。

 LUCK+5 付加効果・周囲の対応が軟化する

スタンドマン:(actv)君は耐える、いつまでも。君は耐える、どこまでも。

 HP消費-1% SP消費-1% DEF+1 MGDF+1


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 ………………。

 オレは無言でスキルスロットからスキルを外し、代わりに《スタンドマン》を装着した。

 オートだったらスロットになくてもいいじゃんね、うん。オレ間違ってない。


シュン


 見る気を失った画面でいいやもうを閉じると、体育座りの膝を両腕で抱えこんで膝に顎を乗せる。

 まさか世界が変わってもアイドル言われて、癒し系言われるだなんて思ってもなかったよ。

 しかもLUCKがさらに上がるのか…ゲームの中だったら卑怯、チートって言われそう。


「…ああそっか、ここもゲームなんだっけ………」


 視界がにじむ。瞳の水分のせいか精神的な理由か、そんなのはどっちでもいい。

 ゆっくりと息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出して。

 どこにも焦点を合わせないまま、オレは前を見ていた。


「何から始めればいいのかな」

「ではとりあえず足を下ろしてはいかがでしょうか?」

「、へ?」


 独り言だったはずなのに返事があって、オレは慌てて声が聞こえた方向に振り向いた。

 どうやら、気づかない内にシュイさんたちが話し合いを終えてこちらにやって来たようだ。

 マリーちゃんはにこにこ笑っていて、メグさんはにやにや男性陣を見てる。シュイさんはあっちを、ダンさんはそっちを、クロウさんは上を見上げて…うん? 若干赤い?

 おかしな様子の5人に、オレは膝を抱えたまま背筋を伸ばして尋ねかけた。


「お帰りなさい、お話はもういいのかな? 後、今何って?」

「いえですから…カリンさん、その、足を」

「?」


 足と言われて視線を落とせば、丸く赤味を帯びた膝があった。顎を乗せていたからね、あ、じゃあ顔も赤くなってるかも。まあ別に気にすることでもないよね、これくらい。


「この程度の赤味ならすぐ消えると思うけど」

「あー……見るべき、いえ気にするべきはもう少し下で」

「??」


 上向いたクロウさんは左手で目の辺りを覆った。


「っぶ、く、っは!」

「口を削ぎ落とせ盗賊」

「ちっとも恐かねえよエロ詐欺師っ、ぐはっ、っはははっ!」

「カリンちゃん、カリンちゃん」


 らちが明かない2人を置いて、マリーちゃんが前に進み出て下を指さしながらにっこりと教えてくれた。

 示す指先は膝より下、椅子より上。


「ちらひらやーんです」

「…ぅわっ! っば! やっ!?」


 瞬時に悟ったオレは、両手を離し両足を下ろし両膝の裾を抑えて5人を見回した。

 シュイさんは両手をこちらに向けて、ダンさんは顔を塞いで、クロウさんは両目を押さえて「見てません」のポーズ、だけど。


「~~~~……見えた、よね?」


 メグさんはこれ以上ないって位楽しそうにしているし、マリーちゃんはふふふとお上品に口元を抑えて笑ってるしもう完全にこれは。


「っっっっっ!! 見、たん、だ……ね…!」


 顔が熱い頭も熱いもはや全身が沸騰しそう自覚なかったから気づいてなかった最悪っ!!!

 即刻この場から逃げてもいいですかいいですよねいいと言ってくださいお願いします!




 オレの行動のすべての責任は、オレだけが負うのだから。






ご指摘、ご感想、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ