その24~おかえり~
早朝、私の仕事は掃除から始まる。
まずドールズへ周辺の情報および警備状況の確認をして命令を出し、イスカ様の部屋を重点的に我が家の掃除をいたします。
そうそう、外の世界では我が家をノーフィリアス城と呼ぶそうです、盗賊ノーフィスの拠点であるココは
曰く、入ることが出来れば巨万の富を得ることができる
曰く、城に見えるが実は山の影が投影されているだけである
曰く、過去の強大すぎる悪魔を封じた封印の地である
などさまざまな噂が流れております。
どれもこれも噂話らしい真実味の無い話ばかりなのですが、噂話とはそういったものでしょう。
あの日マスターが、家を出られてから今日で2万回目の結界強化となります。
私への魔力供給が途切れていないことから、マスターが死亡していない事はわかりますが、人間とはこれほどまで長寿な生き物でしたでしょうか?
イスカ様の封印は徐々に薄まってきており数年以内には解かれると予測されます、ですからイスカ様の封印が解かれた時、最初に目にするのはマスターであって欲しいと私は願います。
「『アラクネ』結界付近に王都および王国の軍勢を確認しました」
おやおや、何度目のお客様でしょうか?
仕方ありませんね、そろそろ王都の国王を変える時期だったはずです、サクッと狩りましょうか。
「ドールズ、お客様です、客人の為に紅い絨毯を用意しましょう」
「「「了解しました」」」
今日もいい天気になりそうだ。
薄暗い部屋の中大きな水晶が中央に置かれているだけの部屋
水晶の表面に無数の罅がはいり、中から一人の人が出てくる。
「ナナシ・・・」
薄暗い部屋には彼女一人しかいない
ふらふらとした足取りでその部屋を出て気がつく、内装が変わってはいたがココは家であると
彼女はこの家の主を探して歩き回った、彼に会えなくとも歩いていれば誰かに会う筈だと考えて、日が落ちるまで歩き回ったが誰にも会う事は無かった。
この家の主人の為に用意した部屋に向かおうとした時、後ろから見たことも無い装備の剣士や魔道師がやってきた。
「おい!ここにはドールズ以外には誰もいないんじゃなかったのか!」
「アレもドールズなのか?」
「それよりもさっさと殺っちまって巨万の富とやらを探そうぜ」
数十人の剣士が剣を抜き、魔道師が杖を構えてイスカを囲む
封印が解けて数時間たったとはいえまだ体は万全とは程遠い状態だった。
一つの剣が彼女を捉えようとした時、剣と彼女の間に光の粒子が集まり剣士を吹き飛ばした。
「なんだ!?この魔法は!」
集まった光は色を黒く変えて次第に形を変えていく
光の粒子が収まった後には一人の男が立っていた。
「良かった良かった、かなり分の悪い賭けだったんだが、賭けは俺の勝ちの様だ・・・イスカおかえり」
「ナナシ・・・」
涙を浮かべたイスカと笑顔でそれを抱きしめるナナシ、だが無粋にもそんな二人に数百の火球が降り注いだ。
「てめぇ!俺らを無視していちゃついてんじゃねぇぞ!と言ってももう聞こえな・・・」
「彼女持ちは爆ぜろぉぉぉぉぉぉ!」
「イケメンなんて死ねぇぇぇ!!」
おそらくリーダー格だった男の台詞は周りの魔道師達の声によってかき消された
3分間ほどの間絶えず打ち込まれ続けた後には火球による煙と魔力の使いすぎによる疲労でぐったりしている魔道師たちと少しかっこつけた台詞を言わせてもらえなかったリーダーを慰めている剣士達が残った。
「おいおい、邪魔するなよせっかく人がいい雰囲気だしてんだから空気読んで帰れよ」
煙の中から現れたのは無傷のナナシとイスカだった。
「あの魔法の雨を耐えしのいだと言うのか!」
三角座りでのの字を書きそうなほどいじけていたリーダーが瞬時にテンションを上げて帰ってきていた。
「んー面倒だからこれから10秒やろうその間にここから出られたら町に返してやるよ、ひとーつ!ふたーつ!」
「あんなのに勝てるわけがねぇ!にげろぉ!」
その後は簡単だった一人の声に押されるように剣士や魔道師たちは走って出口を目指す。
来た時にはなかった、よくみないと確認できないくらい透明な板があったり槍の飛び出てくる罠、曲がり角に垂れ下がったこんにゃくや炎の吹き出る床など子供のいたずらから迷宮の罠クラスまでありとあらゆるものが仕掛けられており
「とーおっ!」
ナナシが10を数え終えた時侵入者達はあの世への葬送者となっていた。
「イスカ長い間待たせてしまって悪かったな」
「いい、ナナシもちゃんと待っていてくれたから」




