その21~喪失~
その21を考えながら作っているとエンディングがうっすら見えてきました。
『キャー』
一般的に叫び声を表すこの文字を、イスカ達は叫んでいた、ただし全て同じ言葉なのに意味が、まったく異なってに聞こえるのはなぜだろうか?
フィルは一般的な恐怖から来る悲鳴、イスカは楽しさから来る叫び、アラクネに至っては棒読みである。
どれ位長い間滑っていたのかわからないが坂の下はまたもや広間だった。
「さっきの石の話だと、ここに守護獣がいるはず」
イスカが周囲を警戒している
「この部屋に他の生物の反応はありません、この下に反応があるのでおそらく何かしらの仕掛けがあるものだと推理いたします。」
仕掛けで思い至ったのは仕掛けの王道『落とし穴』だ、今回の場合この下にいる守護獣とやらへ至る道なのだと考える、手分けして仕掛けのスイッチを探すため
、ナナシとフィル、イスカとアラクネに分かれた、もしイスカの方が先に守護獣と戦う事になった時の事を考えてイスカに予防のための魔法をかけておいた。
二手に分かれて捜索を開始した。
「いやぁ!へびぃー」
開始早々トラップを発動させフィルが蛇まみれとなる。
「おーろーしーてー」
突然現れた縄に足を釣られて逆さ吊りなるフィル
「・・・・」
仕掛けとなっていた床を踏んで水浸しになるフィル
「おかしいわッ!」
「おかしければ笑えばいいじゃないか!」
「意味が違うわッ!」
「で?何がおかしいんだ?」
「私だけ罠に引っかかるのって不公平だと思うの!」
「あっはっはっ!」
「何で笑うのよッ!」
「確かにおかしかったので笑ってみた」
「バカァ!」
地団駄を踏んだフィルの足がスイッチを踏み抜く、するとこれまでナナシ達の体を支えていた地面が消え、自由落下を始める。
「《浮遊》!!」
咄嗟にフィルを抱えて魔法を使う、《浮遊》本来魔力を使ってふわふわと浮く魔法なのだが今回はゆっくりと降りていくように設定してある、フィルは腰を抱えるように持たれているのが不満なのか顔を合わせないようにしていた。
ゆっくり降りていくと底が見えてくる、これまでの部屋とは違い壁には明かりが付いていた、地面に降り立ちそっとフィルの目を手で覆いこちらを見つめているソレに向かい合う。
「あーフィルは見ないほうがいい、きっとその方がいいそんな気がする」
「なによッ!私には見せれないっていうの?いいから見せなさいよ!」
バタバタと手を剥がそうとするフィル
「なら、見ても後悔するなよ?」
「いいから見せなさいよッ!」
俺の手を払いのけたフィルが、見たのは俺たちを一口で食べれそうなほど大きな蛇だった。
「またヘビーッ!」
「ほらいわんこっちゃない」
チロチロと舌をだしながらこちらへじりじりと、よってくる蛇を警戒しながらフィルへ指示を出す。
「フィルなるべく離れるなよ?守ってやれなくなる」
「わわわかかってるわよ」
OK、全然大丈夫でないことがわかった。
後ろにいるフィルを守りながら巨大な蛇の相手をする・・・難易度高いな
相手に攻撃させるとマズイ!こちらから攻めまくるか!
「《アイスランス》」
蛇がこちらへ突撃してくるのにあわせて氷の槍を召還して飛ばす。
蛇に向かって鋭利な氷がいくつも飛んでいくが、蛇に当たった氷は砕けてしまう、ナナシを喰らおうとする蛇の一撃をかわし、着地の瞬間を狙った尻尾による攻撃を避ける
「まだまだッ!《氷塊》」
大きな氷の塊が出現して蛇を押しつぶそうとするが蛇の尻尾の一撃を受けて砕け散る、その勢いのまま薙ぎ払う尻尾による攻撃を避ける。
「《アイスストーム》」
全てを凍てつかせるであろう魔法は蛇の尻尾を一瞬で凍らせ、さらに辺り一面に砕けた氷の破片が散らばっていたこともあり、部屋の温度はどんどん下がっていき蛇の動きも目に見えて遅くなっていった。
「止めはお任せください」
いつのまにか現れたアラクネの鎌が蛇の頭を二つに切り裂いていく。
真っ二つに切り裂かれた蛇はしばらくのたうち回っていたものの、その動きも緩慢になっていきやがて動かなくなった。
「マスター、守護獣もとい今晩のご飯が手に入りましたね」
「いや、なんか呪われそうじゃないか?」
「ナナシ、せっかく倒したんだから食べないとあの蛇に悪い」
たしかに生き物を殺したんだからその命を無駄には出来ないよな・・・と思っていたら蛇の亡骸が黒い液体となり地面に染み込むようにして消えた。
やめてっ!そんなナナシがモタモタしたから逃げられちゃったじゃないって目をするのはやめて!?
「イスカ、アラクネ?、戦闘してない私が言うのもおかしいんだけどそのあたりで許してあげたら?」
「「「おかしければ笑えばいい【よ】【と思います】」」」
「なにこれ!?何でこんなに息ピッタリなの!?」
「では番人も排除したことですし宝物をいただきに行きましょうか」
「えっ!?スルー?」
「ほらフィルも遊んでないで行くぞ?」
もはや人語ではない何かを叫びながら暴れているフィルを見て、今はこんなのでも一応王女だったんだよなと感慨深く眺めていると暴走したフィルに蹴り飛ばされた。
蛇が元々いた場所の奥に死角になるように隠し通路がありその奥は一面金貨に包まれていて台座にはまった3つの宝石があった、台座には【愚かなる者に災いを、賢き者に祝福を】と書かれていた。
「この場合、愚かなる者って言うとこの宝石に手を出したものだよな、何も取らずに帰れって事か?」
「マスターの考えで間違いようです、台座にはこの宝石を外すと発動する仕掛けがいくつも見受けられます」
「ナナシ、奥に何か落ちていないか?」
部屋の片隅、よほどしっかりと確認しないと見落としそうな所にブレスレッドが落ちていた。
「アラクネ、あれに罠は?」
「見受けられません」
ブレスレッドを拾う、銀色のブレスレッドは内側に文字が刻まれており、魔法の加護が付加されているようだ。
「装着者を守る効果を持ったブレスレッドのようですね」
「私はナナシにもらった物があるから、フィルが持ってるといいよ」
「私がもらっちゃってもいいの?」
「ええ、私が持っていても発動しないと思いますし、フィル様のようなドジッ子・・・失礼、超ドジッ子が持っているのがよいかと思われます」
「言い直してさらに酷くなった!」
「申し訳ございません、人形なので嘘がつけないのでございます」
「それ余計に傷つくッ!」
「ふふふ、冗談でございますよ、フィル様は聡明でございますから」
「冗談なら・・・」
「まぁ、嘘ですが」
「人形なのに嘘ついた!そして何が嘘なの!?」
「それよりもフィル様よろしいのですか?」
「これまでの話をスルーして急に真面目な声を出さないで、で?何なの?」
「皆様に置いて行かれてしまいました」
「ちょっとぉぉぉぉ!待ってよぉぉぉ!」
ナナシはアラクネとフィルが問答し始めたので、イスカと二人で出口を求めて先へ進んでいた。
トンネルから抜けだしたナナシ達を待っていたのは杖を奪っていった覆面の方々だった。
「待っていたぞ、『化け物』さんよ!」
覆面の一人がナイフを片手に一歩前へ出る
「何か用なのか?こっちとしては、あの杖に興味はないし、王様の敵をとる気もないんだがな?」
真実を軽い感じで話しながら、相手の出方を見る。
「相変わらず庶民風情が偉そうな口をッ!私を忘れたとは言わせんぞッ!」
「・・・誰だっけ?」
「きっさまぁ!我が名はレイナルド!レイナルド=スフィーリアスッ!偉大なるスフィーリアス家の次男だッ!」
レイナルドの手には覆面の人たちにより奪われた杖が握られていた。
「あぁ、そんなのもいたっけか・・・」
正直、ダリルの方が印象強すぎて覚えていなかった。
「貴様に焼かれたこの顔の怨み、今ここで万倍にして返してくれる!『時空の杖よッ我が魔力に応えその力を示せッ』《堅時空牢》」
レイナルドの言葉に応え、杖が輝きだす。
「ダメッ!」
大抵の魔法ならばナナシに傷一つ付ける事などできない、何せ《無》の魔法は効果対象を全て『無』にすることが出来る。
だからナナシは動かなかった、動かないというミスを犯してしまった。
獣の第6感なのか、乙女の直感なのか、イスカは咄嗟にナナシを突き飛ばした、『ナナシにこの魔法を受けさせてはいけない』その直感を信じて。
強化、付加効果を受けたイスカに突き飛ばされたナナシは、木を3本ほど巻き込んで吹き飛んだ。
「何するんだよ、イス・・・・・カ?」
起き上がったナナシが見たのは、一抱えはありそうな黒い水晶に閉じ込められたイスカの姿だった。
「イスカッ!お前いったいイスカに何をした!」
「チッ!獣が邪魔しやがって!貴様もそんな獣の心配より自分の心配したらどうだい?次は貴様の番なんだからなッ!」
再び輝きだす杖だが、杖から魔法が使われる事は無かった。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
杖を持っていた右腕はいつのまにかナナシの手の中にあった、レイナルドの右腕からは忘れていた事を思い出すかのように血液が噴出した。
「ぎゃあぎゃあ騒いでるんじゃねぇよ、さっさとイスカを元に戻せ」
「はっ!誰が貴様の言葉など聞くかっ!と言いたいところだがかけた魔法くらいは教えといてやろう、私が使ったのはベルリア王家秘奥中の秘奥魔法《堅時空牢》、対象の周囲ごと時間を切り取る魔法だ!どんな防御もこの魔法の前には無意味!さぞ悔しかろう!化け物と呼ばれた貴様にかけてやるつもりだったが貴様にかけるよりそっちの獣にかけたほうが貴様には堪えたようだなッ!」
それだけ言うとレイナルドは魔法で逃げ去る。
「申し訳ありませんマスター!おや?イスカ様は・・・まさかこれはイスカ様ッ!?」
「コレはイスカなの!?イスカ!イスカ!」
アラクネとフィルが遅れて追いついてきたが、全てが遅すぎた。
「おい、貴様」
覆面の一人がまだ残っていたようだ、イスカがこんな姿になってしまって動揺してるのか俺は・・・
「俺はこれから独り言を言う、コレは貴様への助言ではないあの娘は紛れも無く強者だった、その娘に対する敬意を払って一つ言わせてもらう、今貴様が持っている『時空の杖』はただの媒体にすぎずあの魔法を解く事は出来ない、ただ『魔王』と呼ばれた者ならば、もしかすると何とかできるかもしれない、その杖ももともとは奴の持ち物らしいからな、『魔王』は現在、魔都イスルギにいると聞く」
「なぜ、そこまで教える?」
「あの娘とは再戦の約束をしていてな、こないだは不覚をとったものの、貸しは返さねばならない、それだけのことだ。」
覆面の人が去った後にはクリスタル化したイスカとアラクネ、フィル、ナナシが残る、誰もがイスカを見つめるが何も言わなかった、数分が過ぎ静寂を破ったのはナナシだった。
「アラクネ?イスカを、イスカを家へ運んでやってくれ、家に着いたら今度こそイスカを全ての敵から守りぬけ、手段は問わない守りぬけ」
「かしこまりました、全力を尽くします」
アラクネは、イスカを抱えて魔法を使い転移した。
「クソォォォ!イスカァ!」
地面に崩れ落ち涙を流すナナシを同じように涙を流しながら抱きしめるフィル。
二人はしばらくその場にて涙を流した。
遠くに見えるは魔都イスルギ、『魔王』と呼ばれた者がいると言われた場所である。
イスカ封印です、暫く獣耳や尻尾封印・・・おのれ!レイナルド!耳尻尾の怨みは恐ろしいと知れ!酷い最後を迎えさせてやるっ!(予定)




