その13~世界征服はコツコツと?~
一段落したせいで次の展開に困ってしまった
「いたぞ!こっちだ!」
フィルナ王国は深夜にもかかわらず真昼のような明るさだった。
もちろん太陽が出ているわけではない、松明、ライトの魔法光源はいろいろだったが、その所有者達は皆ある者を追いかけていた。
「ノフィスは武具通りへ行ったぞ!」
《ノフィス》:2、3ヶ月前に突如として現れた盗賊、盗賊と言えばある程度の人数が集まり略奪、殺しを行うものとされていたが、その者は違った。
たった一人で誰も殺さず獲物を奪う。
必ず何かしらで顔を隠して現れ、所有者に一言告げてから逃げていく。
「こんばんは、ノフィスです、獲物・・・もらって行きますね?」
男の声だった、女の声だった、そんなことはないモンスターの声に違いないなど、ノフィスに関していろいろな情報はあったもののどれも数が多過ぎてどれが正しいものなのかさえ判別不可能だった。
「追い詰めたぞ!ノフィス!さぁ今夜こそ牢屋へぶち込んでやる!」
捕り物はクライマックスを迎えていた、路地の突き当たりで黒いローブをまとい布で顔を隠したノフィスを囲む数十人の見回りの兵士達、ノフィスは今夜の獲物の入った麻袋を担ぎなおすと空を指した。
「追い詰めた?空ががら空きじゃないか」
兵士達の中には魔法使いもいたが皆人族で空を飛べるような者はいなかった。
盗賊が空を飛んで逃げるなど聞いたことが無い、そんな魔法が使えるのならば城に召抱えられ、盗賊などしなくても暮らしていけるからだ。
ゆえに兵士達は想像すらしなかった盗賊は走って逃げるものだと決め付けていたから
「それでは・・・ごきげんよう」
ノフィスは走った、空を。
まるでそこに地面があるかのごとく。
兵士や魔法使い達はその姿を見送る事しかできなかった、魔法を使ったと唖然とした者、何も出来ずに呆然とした者、とっさに魔法を放った者もいたがノフィスに当たる前に何かに当たり届かなかった。
今夜も逃げられてしまった兵士達が目を向けるのは、「残念でした、次はがんばろう!」と書かれた壁だった。
「追っ手はいない・・・か」
森の中を盗賊は森の奥へと進んでいった。
ノフィスの噂はすぐに広まった、ギルドもノフィスの情報、討伐に賞金を掛けた
が冒険者達は相手にされ無かった、いや、遊ばれるだけだった。
槍の得意な竜人族の冒険者は槍で突こうとしたが槍を奪われ後日リボンをつけて返された。
弓の得意なエルフは気配を隠して矢を射たが素手で掴まれた、2本目を射ようとするも矢束に矢が固定され矢が抜け無かった、数時間後には何事もなかったかのように矢束から矢を抜く事が出来た。
魔法を使った人族はいつされたのかもわからないうちに顔に落書きされた、その落書きは3日は消えなかった。
等々被害といった被害は無いのだが精神的にダメージを残すノフィスのやり方に冒険者達は一部を除いてかかわらなくなった。
ノフィスが奪うとされる《獲物》になる条件は、これまでの獲物から察するに貴族の屋敷の侍女もしくは奴隷だという。
過去に貴族の令嬢が、ノフィスと出くわした事があったそうだが、令嬢には何も告げず傍にいた侍女へのみ質問したそうだ。
町ではある噂が人から人へと語られる。
あの盗賊はどのような場所であっても、薄幸の星の元に生まれた者の前に現れ、蔑まれるだけの生活から助けてくれる使者で、私欲を肥やす貴族は、かの盗賊により天罰を受ける、このような噂まで立っているから私欲を肥やしていた貴族達はなお一層警備を固めていった。
「うん、見事に作戦通りだな」
・・・そのようだ・・・
町のオープンテラスから町の様子を観察しながらそうつぶやいた。
事の始めは世界征服だった、耳・尻尾のために世界征服しよう!なら何が必要だろう?世界を征服するのだから征服する国が必要だ!この国には国が3つもあるぞどれを選ぼうか?どの国がこの計画に役立ちそうなのかまったく情報が無い!情報が無いなら全てをゼロにすればいい!そうだ!ゼロから始めるならば情報なんか無くても国が作れる!
国があっても人がいなければ国として成り立たない!ならば今の国に嫌気が差している人たちを集めよう!おや?そうすると耳・尻尾組も集まるのではないか?これはいい案だ!さっそく実行しよう!まずはフィルナ王国だ!
ということでナナシは、《盗賊》として使用人や奴隷等に片っ端から聞いて回っていたのだ。
「君は今幸せかい?」と・・・
NOと答えれば獲物として我が家へ御招待、YESと答えればそのままさようなら、中には怯えて話せない者もいたが、そういった人は一時的にお持ち帰りしていた。
これまでのところYESといった奴隷達はいない、ちなみに犯罪を犯した者はNOと言っても「そう?ご奉仕頑張って!」といって放置がしている。
「そろそろ第2段階といきますか」
第一段階は明らかに不当な扱いを受けている使用人達が対象だった。
第二段階の対象は貴族、それも権力に屈せざるをえない状況にあるもの達。
フィルナ王国において、権力は家が持つものとされているつまり、過去に何かしらの貢献をすれば、その家の人間ならば誰でも同等の権力を得るのだ、生まれたばかりの赤ん坊ですら公爵家に生まれれば生れ落ちたその時から公爵と同等の権力を持つ。
市場で顔立ちの整った娘がいた、運悪く馬鹿貴族の目に留まり側室として捕らえられた。
なんて事も珍しくないのがこの国である、そういったこともあり最初この町へ着いた時は、イスカとナナシ二人で市場を見て回ったのだが《侯爵》を名乗る馬鹿に出会った。
イスカの美貌に目がくらんだ貴族は、彼女が獣人族という事もありナナシの前でこういった。
「私は侯爵家の~である!そこの娘を私の奴隷とする、そこの男!その娘を私に差し出せ」
イスカを差し出せ?寝言は寝てから言おうか?
「寝言は寝てから言いやがってくださいませ私達は冒険者です、旅の途中ですのでこれにて失礼しますクズ貴族様」
ナナシにしては我慢した方だと自画自賛した
「貴様!私を侮辱したな!おい!お前ら!あの男を殺してあの娘を捕らえろ!」
十数人の護衛の人たちが手に剣を持ってやってくる。
結果は火を見るより明らかだった、無双だった。
ただし、無双したのはナナシではなく、
イスカだったが
獣人族は元々魔力が少ない、代わりに純粋な力ならば竜人族とも引けを取らないといった特徴がある、そこにナナシの寵愛とも言える付加魔法により、魔法抜きならば勝つ事はたやすいという超戦士イスカが誕生した。
目にも留まらぬ速さで、騎士の懐へもぐりこみ一撃をもって鎧と剣を砕く。
魔法を使う相手ならば勝てないかもしれないが、負ける事も無いそのための付加魔法ですとナナシ談
数分後には、呻き声を上げる騎士達とナナシに撫でられ尻尾を振っているイスカの姿があった。
貴族にはたぁっぷりとお願いして、今日の事は内緒にしてもらい事なきを得たのだが、毎回これではイスカの精神に悪いという事で、イスカが町へ出る時はナナシ同伴のもとフード着用で出かける事になった。
話を戻して第二段階はその貴族達の中でも苦しい思いをしているもの達がいるのではないかという事だった。
「それじゃあ始めようかノフィスによる選別第二段を」
大晦日に更新だぁ!




