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痛みとウサギと追いかけっこ  作者: ぎん
そしておやすみへ
12/27

その10~色恋沙汰は人傷沙汰~

マイリスト10人越えた!やったね!

「ナナシ・・・」


ここは城の地下にある牢屋、清潔とは程遠いその場所にナナシは寝かされ、その傍らにはイスカがいた。





異形と化したダリルを倒したナナシはイスカ達のもとに戻ってくると人の姿となり獣人族の娘後は任せたと残して倒れた。

国の騎士、魔法使い達が全力を尽くしてもまったく歯が立たなかったダリルを圧倒的な力で倒してしまったナナシを王は恐れ、城の最下層にある牢屋へナナシを閉じ込めたのであった、イスカは城の客室に滞在することが許されていたが一日のほとんどを牢屋で過ごしていた。

イスカは蝋燭の光しか明かりのない牢屋の中で先ほどまでの話し合いを思いだす。


「・・・なのでありまして武術大会の勝者はどうなるのでしょうか!」


王の間では武術大会についての話し合いが開かれ、開催委員会の者、ケルテュム、リィム、ナナシの代わりとしてロウエン、イスカが集まっていた。


「ナナシ、ダリル両名はモンスターである事を隠し参加していたのです!理由は確かでありませんが今すぐにでもあのモンスターを殺すべきです!」


「いや、早計ではないかケルテュム殿、ナナシ殿は我らを救ってくれたではないか、モンスターならばダリルのように我らを殺していてもおかしくなかろうか?」


「私もロウエンと同じ意見だ、ナナシは確かに異形の姿をしていたが私達に危害を加えようとはしていなかった。」


「ナナシは私を助けてくれた。」


ケルテュムは自らの奴隷にまで反論されるとは思っていなかったようで言葉を失っていた。


「ならばいかがでしょうか?もし決勝戦を行うにしても闘技場があのような状態で行う事は不可能、ナナシ選手の意識も戻っておられない事ですし闘技場を修理し修理が終わり次第決勝戦を行う、ただしナナシ選手の意識が戻らない場合不戦敗という形でリィムトゥース選手が優勝するというのは」


余計な事を言いやがってと心で毒づきながらもケルテュムは了承したのだった。

さっき聞いた話ではダリルによってボロボロになった闘技場だが5日ほどで完全に元通りとなるらしい。

ダリルの家族であるキリアン一族は公爵でありながらモンスターを息子として国家反逆を企んでいたとされ国外追放となった、死刑とならなかったのはキリアン家は代々王家に使えてきた三貴族のうちの一つで国に多大なる貢献をしていたため、形こそ国家反逆とされてはいるがこれからの彼らの身を案じての国外追放だった。

大会の話し合いが終わり、その後に王と当事者達により次の話し合いが始まる、議題はナナシとは何者なのか。

ロウエンは一国の王として自分ならどう対処すべきだろうかと思い描きつつ話し合いを進めた。


騎士隊、魔法隊から有力な情報はなくナナシの変化を目にした者も少ないと報告した時リィムが発言する


「私の故郷に『イーツ』という語り話があるんだがその『イーツ』という存在にナナシの変化した姿が似ている気がするのだ・・・です」


王の前ということを思い出し慌てて語尾に付け加えるリィム


「言葉遣いなどどうでもよい、その『イーツ』という話を聞かせてもらえぬか?」


「『イーツ』というのは私が祖母から教わった話で竜人族を助けた旅人の話です、掻い摘んで物語を説明すると砂嵐と共にやってきた旅人は全身をローブで隠して一夜の宿を取る、その晩、300を越える野党が略奪にやってくるのですが、ローブを着けた旅人が野党を一人で退治するのです、戦いの途中でローブを切り裂かれて出てきた姿を物語の中ではこう伝えています、金色の眼、額に角と強靭な尾を持ち、鱗に覆われ皮膚は剣を弾く、翼で飛翔するその者『イーツ』と名乗る」


「確かに報告にあったモンスターの姿と一致する点があるな、その『イーツ』と呼ばれるものはモンスターなのか?それとも我らのような人なのか?」


「そこまで詳しい事はわかりません、ただ野党を退治した『イーツ』はそのままどこかへ飛び去ったとあります、おそらく危害を加えない限りは無害と考えて大丈夫ではないでしょうか?」


「うむ・・・あの戦闘力は恐るべきものだもしアレがこちらに向けられた場合この国は数分と持たずに消滅するだろう、衛兵!あの者を最下層の封魔牢へ」


「なんで!?ナナシはナナシだよ!?ボロボロになっても私や皆を守るために戦ってくれたのに何で牢屋に入れられなくちゃいけないの!」


涙を流してイスカが叫ぶ


「イスカ殿、確かにナナシ殿は我らを救ってくださった、感謝しておりますですが王の言う事も確かなのだ、イスカ殿もおっしゃっていた通りあの変化の後、彼は別人のようだったと、だったら我々に襲い掛かってくる可能性も捨てきれないのですよ」


「私はナナシを信じてる!誰が何て言ってもナナシはナナシなんだから!」


部屋を飛び出すイスカ、残された者に彼女を止められる者はいなかった。



アレから今日で2日ナナシは目まだを覚まさない、イスカはナナシの胸に耳をつけるあたたかい温もりと共に聞こえるゆっくりとした、けれど力強い鼓動。


「イスカ殿少し休まれてはいかがか?私がその間見ておきますから、ナナシ殿が起きられても貴方が倒れてしまったらナナシ殿も悲しみます」


ナナシの額に口付けをして城の与えられた部屋に戻る。

医術士は身体的な問題はなくすぐに目を覚ますはずだと言ったがどうして目を覚まさないのだろうか?


もしかしたらもう2度とナナシは目を覚まさないのでは無いだろうか?


部屋に入ってふとそんな事を思ったとたん体に力が入らなくなる、嫌だ、ナナシに私は救われた、奴隷となっていた私を助けてくれただけじゃない、獣人族の私を一人の『人』として見てくれた、仲間だと言ってくれた、可愛いと言ってくれた。

そんなナナシに私はまだ何も返す事が出来ていない、なのに!このままいなくなっちゃうなんて嫌だよ!


「ナナシ・・・」


ベッドに顔をうずめた、ベッドは一人だと広かったけど寒かった。





「あの大会委員め!いらぬ事を!」


スフィーリアス邸ではケルテュムが苛立ちを募らせていた。

弟と約束した庶民らしき人物も見当たらず復讐を果たしてやる事も出来ず武術大会では優勝を決める事もできずもしあの化け物が目を覚ませばリィムには万が一にも勝ち目は無いだろう、準優勝を取ったところで家の地位は上がるとも思えないむしろ化け物に負けたということで下げられる可能性もある。


「奴隷!貴様なぜあの場で大会の勝者とならなかった!」


「すみません、ですが私は正々堂々とナナシと戦って勝ちたいのです」


「貴様はあの化け物に勝てると言うのか?あの闘技場で何も出来なかった貴様が?」


「くっ・・・」


「奴隷!最悪相打ちでもいいからあの化け物を倒すんだ!さもないと貴様を嬲り者にした挙句ゴブリン共の餌にしてやる!」


「はい・・・」


勝ちを譲ってもらえるとわかっているもののもしモンスターに精神を支配されていたらと思うと全力で戦わなければならない。

もしもの時はリィムは『奥の手』を使う覚悟をする。


3日目


イスカは城の庭に咲いていた花をいくつかもらい地下牢へ行く。

ロウエンに感謝を伝えて牢の中のナナシに話しかける。


「ロウエンさんが体拭いてくれたんだってね、これ見て?綺麗な花でしょ?このお城で咲いてたのを貰ってきたの」


花を自分の髪に挿す


「どう?似合うかな?ナナシにもしてあげるね?」


ベッドの傍の椅子に座ると語りかけるように話し出した。


「ねぇナナシ?ナナシが戦ったおかげでたくさんの人が救われたんだよ?コニード亭の女将さん達も言ってたよありがとうって、ナナシ、昨日ベッドで寝たらね、ベッドが広いの!広すぎるの!いつの間にこんなに広くなったんだろってびっくりしちゃった!・・・なんでいつもみたいに笑ってくれないの?頭を撫でてくれないの!」


イスカはナナシに泣き付く


「このまま一人は嫌だよ、寂しいよ・・・ナナシ」


ナナシの手がイスカ頭の上に置かれる


「ナナシ!?」


「どうしたんだよ、せっかくの美人さんが台無しじゃないかイスカ」


「ナナシー!」


イスカに抱きつかれるナナシ、泣きながら抱きつくイスカに苦しいので離してと言い出せずしばらくそのままにしていたがその苦しさすらも悪くないなと思った。



ナナシが目を覚ましたという情報は城中に広まり、ケルテュムの耳にも入った。


「くッ!あの化け物め!目を覚ましたか!これで決勝戦は確実に行われるわけだ!クソッ!」


身近にあった椅子を蹴り飛ばす。


「家の奴隷が竜人族とはいえ騎士・魔術隊がまったく歯が立たない相手では試合にすらならんのではないか?」


ケルテュムはどうすればあの化け物を倒して地位を守る事が出来るかだった、準決勝を成し遂げただけでも十分に快挙でケルテュムの両親も喜び浮かれていたためケルテュムの事が見えていなかった。


こうなればあの奴隷の魔力を暴走させて一緒に消し飛ばして・・いや、それだと回りに被害が出る、周りに?そういえばあの化け物は確か人の避難を優先したのだったな。ならば・・・


そこへ一人の奴隷がなにやら急ぎの様子でやってくる。


「ケルテュム様、当屋敷にこちらの文のようなものが届けられました」


「相手は?」


「わかりません、裏口に挟まれておりました。」


宛名がケルテュムとなっていた事も含めて怪しいと思ったのだろう、罠の類が無い事を確認して封を切る。

中に入っていた文を読んだケルテュムの表情が変わる。


「おい!急ぎ腕の立つ奴隷を用意するよう奴隷商と連絡を取れ!化け物が目覚めたとしてもこれなら、これならば勝てる!」


ケルテュムの笑い声が館に響き渡った。







「はい、あーん」


「えっとイスカさん、一人で食べれます」


「ダメ、ナナシは怪我人なんだから」


いつも以上にべったりなイスカに戸惑いつつ自分の気絶していた数日間のことを聞いた。


異形な姿の自分のこと、ここにいるわけ、2日後には決勝戦が待っている事イベントが目白押しすぎて泣きたくなってきた。


「なぁイスカ、武術大会終わったら逃げちゃおっか?」


「なんで?ナナシは悪い事してないよ?」


「まぁそうなんだけどこのままだと面倒事に巻き込まれそうな気がするんだ」


「悪い事をしてないんだから逃げる必要なんてないよ」


「そうだね・・・」


イスカの頭を抱き寄せ頭を撫でる。


「あー、御両人入ってもいいかな?」


ロウエンさんが牢の前で顔を赤くして頬を掻いていた。


「どうぞ?」


イスカはナナシのベッドに腰掛けているのでロウエンは椅子に腰掛けて話をはじめる


「単刀直入に聞こう、おぬしは誰だ?」


「えっと、俺の記憶が正しければロウエンさんにそれを訊ねられるのは2回目だと思いますけど?名前はナナシ、冒険者ですよただの」


「ふむ、ならばあの異形の姿はなんだ?」


「それです、本当に俺が変身したんですか?」


「間違いないこの目で見ておったからな」


「そんな変身したって言われてもねぇ、俺はまったく覚えてないし今変身しろって言われても出来ませんよ?」


「そうなのか、ではナナシ殿はこれからどうするのだ?この国を出て行く気はあるのか?」


そこまで言った所でイスカが止めに入る


「ナナシはまだ怪我人で今やっと起きたとこなんだから」


「そ、そうであったな」


イスカの全身の毛が逆立ちロウエンさんが押されている、また来ると残して早々に撤退したロウエンさん


武術大会で俺を戦闘力で圧倒した戦闘狂はどこへいったんだろうか?


「ナナシも、もう少し寝ててまだ傷が完治してないんだから・・・」


「あぁ。」


ベッドに横になり目を閉じるとまた意識が遠ざかる。





夢の中真っ暗な闇の中に白い光が話しかける。


・・・ナナシ、すまんなお主の体を使って獣人族の娘を助けたのはよかったんだが、予想以上に力を使いすぎて体が変化してしまった・・・


変化?


・・・そう変化だ、我の使う魔力は特殊でな我にしか扱えんそれを使った事でお主の体が我の魔力を使える体へと変化してしまったのだ。・・・


という事はイスカの言ってた異形の姿ってのはその変化後の姿?


・・・そういうことだな・・・


変化が起きて困る事って何かある?


・・・いや、特にこれといって無い、我の魔力を多用すれば変化するかもしれんがそれ以外は変化は無いはずだ・・・


ならいいか、なるようになるさ!それにレオはイスカを助けてくれたんだからな礼を言わなければいけないのはこっちだ、ありがとうレオ


・・・ありがとう、ナナシ・・・






暗い部屋の中窓が無いので昼間なのか夜なのかすらわからないが近くにイスカがいないことから夜だと判断する。


寝転がったまま体の調子を確認する千切られたはずの右腕問題なし、そういえば何でくっ付いてるんだろう?医者がつけてくれたのか?


足、体、頭問題なし!派手に戦闘しない限り問題なさそうだな


そこで通路の奥から声が聞こえる見張りの兵士だろう


「この奥にはあの闘技場で大暴れした怪物が封印されているんだとよ」


おっと俺怪物になったよ?


「そういえばお前も知ってるだろ?毎日あの怪物の世話に行ってる可愛い子!あの子をどこかの貴族が狙ってるって話」


なん・・・だとっ・・・!?


「確かリーデルト公爵の所の三男だったか?昨日あの子と話してる所を偶然みちゃったんだけどさ!すごかったぜ?」


あの広間の所での話なんだけどさと前置きをすると声真似入りで話し始めた。


「おい!お前!そこの獣人の娘!俺の屋敷で使用人にしてやってもいいぞ?」


男が肩に手を置く


「結構です」


肩の手を払って去ろうとする、断られると思っていなかった男はあっけに取られていたが慌てて追いかける


「貴様!この俺が声をかけてやってるというのに!」


「貴方が誰であろうと関係ないです」


アレこそ一刀両断ってやつだなすっぱりと断っていたよ


「俺はリーデルト=スペンカー!リーデルト家の三男だ!」


「そうですか、では私は忙しいので」


男を無視して去ろうとすると男は腰につけていた剣を抜こうとする


「リーデルト家である俺が下手に出ていれば付け上がりやがって!」


「とそこで男が剣を抜く前にあの嬢ちゃんがリーデルトの三男を反対側の壁まで蹴り飛ばしたんだよ」


「ははは!リーデルトの三男って言えばかなりの美形で引く手数多だと聞いたがあの嬢ちゃんには振られたか!」


イスカって強かったんだな、じゃなくてまだ貴族から狙われるのか、俺が有名になるとその分イスカにも迷惑がかかるのか、何か対策を取っておかないとな。


む、イスカの事が気になって眠れなくなった・・・。


レオ?レオー?レーオー?レーオーレーオーレオレオレーオー?


・・・一度で聞こえている・・・


レオの魔力ってどんな事が出来る?


・・・一言で表すなら『無』だ・・・


無?何も無いって事?


・・・その通り全てを消し去る力だ・・・


攻撃としてはかなり最強の部類じゃない?


・・・無論、我に敵などいないわ!・・・


そっか、身近の人々は結構最強さんでした。

牢屋の鍵はかかってる、か


風よこの城の構造を調べてくれ《サーチ》!


これで現在位置からイスカの位置兵士達の配置まで手に取るようにわかる、ん?イスカの部屋の前に誰か一人いるな誰だろう?扉を護衛してた兵士のおっちゃん?じゃないな部屋の護衛は今まで二人いたけど今の反応は一人だけ。

そして、今、部屋の中に入ったな!


《風の飛礫》!侵入者を部屋の外へ弾き出せ!


《風の飛礫》:圧縮した風を叩きつける殺傷能力は低いがそれなりに痛い。魔力量によっては壁を打ち抜く事も可能


侵入者が部屋の外へ弾き飛ばされたのを確認してイスカのベッドの周りに防音効果付属で結界を張るが、すでにイスカが自分で張ったと思われる結界を感知する。

逃げ出そうとしていた侵入者へ魔法を放つ、《鎖呪縛》(コマンド:動けばさらに締めつける)


侵入者は天井から吊るされてしばらくもがいていたが動かなくなる。


体が千切れるまで締め上げるリミットなしにしようかと思ったが骨が折れるまで締め上げる程度で許してやるよ。


イスカの部屋のドアを閉めて眠りにつく。





明日は決勝戦という前日にもかかわらず牢屋にいますナナシです。


「出してくれてもよくない?俺は怪獣じゃないよ?」


「ナナシ、出なくても大丈夫私が入ってくるから、それと昨日はありがとう、またナナシに守ってもらった。」


「ん?何の話?鎖の精霊さんじゃないかな?」


「ナナシがそれでいいならそれでいい」


「それでで侵入者ってなんだったの?」


「リーデルトって家の次男」


「そっか」


兄弟揃ってイスカに惚れたのか、確かにイスカは可愛いもんなぁ。


イスカの綺麗な顔を眺めて一人で納得していたのが気に食わなかったのか、ベッドに腰掛けて顔を胸にうずめてくるイスカ、そっと抱きしめて頭を撫でる。

その間にイスカにお守り代わりに魔法を忍ばせておく、これで俺が近くにいなくても悪い虫は駆除できる!


・・・この魔法は、運が悪ければ死にかねないぞ?・・・


イスカが嫌悪感を抱かなければ発動しないように組み合わせたから大丈夫!イスカに嫌悪感を抱かせただけで犯罪だから!


「ナナシ、私はナナシのモノだよ?」


首を傾げるイスカは最高だね!このまま押し倒そうかな?


「イスカは俺のモノだよ、誰にも渡さない。」


ちゃんと自己主張はしておこう、ちなみに押し倒したり出来ませんよ?えぇ・・・わかっています、私はへたれですよ


その日はほぼずっとひざの上にイスカを抱いて過ごす。

そういえば王から何かしらコンタクトがあると思ったんだが何も無いなと気付いたのがその日の夕方、新しい頭の撫で方を考えてた時だった。


向こうから来ないのならばこっちから行こう!


「イスカ、少しどいてくれる?」


ひざの上のイスカをどかせると牢屋から出るための魔法を使う《アンロック》

ガチッという音共に牢の扉が開く


「ナナシどこ行くの?」


「王様に起きましたよって挨拶しに行く」


「なら私も行く」


左腕にくっ付くイスカを連れて上の階を目指す。


「き、貴様!どうやって牢屋から脱獄した!」


「魔法で」


「嘘をつくな!あの牢屋は一切の魔法が使えなくなる封魔牢なんだぞ!」


いや、嘘だといわれてもなぁ


・・・今のナナシの魔力は我の魔力と同質だからなあの封魔では封じる事はできん・・・


あぁそういうこと


「どこへ行く!」


「いや、王様に起きた事報告しないとね?明日武術大会だって話しだし」


「王のもとへだと!?王の命を狙うか化け物が!」


「人の姿してるれっきとした人なんですが?」


「そのようなまやかしにはだまされん!」


あぁ、めんどくさくなってきた。


《沼呪縛》


「くッ!体が沈む!」


「さぁ先に行こうか」


首を縦に振ったイスカを連れて王の間を目指す途中で会った兵士の皆さんには、《沼呪縛》《鎖呪縛》《空間呪縛》いろいろな技で落とし縛り固めて進んでいく。

王の間へ来た俺に一同が驚く


「あの者は!」 「まさか目覚めたというのか!?」 「化け物が!」


おや、会見中だったか


「謁見終わったら呼んでくださいね?」


バタンと扉を閉じる。

しばらく近くで《鎖呪縛》で捕らえられている兵士のおっちゃんを弄るかなと思った矢先、兵士が飛び出てくる。


「貴様!どうやって脱獄した!」


「魔法で?以下略」


どうでもよさそうな鎖が適当に兵士のおっちゃんを縛り上げていく


「呼んで下さったって事は謁見が済んだって事でいいんですよね?王様?」


王の前でひざまずいている3人を見る、綺麗な顔をしたイケメン、綺麗な魔法使いっぽいお姉さん、そして魔法使いっぽいイケメンきっとどっちかは回復とか担当なのかな?どうでもいいのでシカトする。


「あ、あぁ、それで今日は何の用なのだ?」


「たいした用ではありませんよ?起きたって挨拶しておかないとダメかなって思い至っただけですので」


「おい!貴様!このリーデルト様を無視して話を進めるな!大体貴様は何なのだ!王の間へやってきて無礼であろう!」


「おっとそれはすみませんでした何せ田舎者の庶民なもので」


「さっさと出て行け!」


「では、王様?明日は闘技場へ行けばいいのですか?」


「・・・あぁ、こちらから案内をだそう」


「早く出て行け!この愚図が!」


「はいはい・・・」


イスカとリーデルトが睨み合っていた、イスカの頭を撫でながらイスカの部屋へと戻っていく。

わざわざあんな寝心地の悪いところへ戻ってやる気は無い部屋に入ったところで兵士の皆さんを解放する。

この部屋のドアは押して入ってくる内開きのドアなのだがドアを閉まった状態で空間に固定する。


部屋の中でイスカが回収してくれていた俺の荷物を確認していく、剣も回収してくれていたようだ、それにしてもよく折れなかったよねロウエンさんとかダリルとかあんなのの攻撃に耐えるとは結構な業物なんじゃ。


とにかく回収してくれたイスカを褒める意味もこめて撫でくりまわす。

しばらくすると、扉の方から潰れた蛙のような声が聞こえた。

扉を開けると顔を抑えて入ってきたのはフィルだった、固定したドアを勢いで開けようとした結果扉にぶつかったわけだ。


「もう!ひどいじゃないの!あんな罠仕掛けるなんて!」


「いや、もう少し落ち着こうよ王女様?」


「それは無理よ!せっかくナナシが地下から出てきたっていうのにお父様には会った後私を無視してイスカの部屋にこもっちゃうなんて酷いわ!」


「ほら、地下から出てくるだけであんなに兵士が騒ぐものだから王女なんかと会ってたら串刺しにされかねないし」


「ナナシなら槍で突かれても槍が折れるから安心ね!」


おや?と思う、話の感じからナナシが変身したことは知っているようだが怖がっている感じがしない。


「フィル?ほらほら怪獣だぞー?」


?を浮かべたフィルは何か思いついたようで


「きゃーなんとおそろしいけだものなの?わたしのていそうがきけんだわ」


コケた、床に突っ伏したナナシを不思議な顔で見下ろすフィル

まず、ものすごい演技が下手すぎる、あと姫ならいきなり下ネタに走らないで欲しい。


「それは反応が間違ってるでしょ?」


「男女が寝室で二人っきり、これは貞操の危機でなくて?」


「イスカが計算に入ってないよ!」


「初めてが3人でなんて・・・やさしくしてね?」


「ちーがーう!」


地団駄をふむナナシの服が引っ張られる、振り返ると


「ナナシ、私も初めてだから優しくして欲しい、出来れば初めては二人がいいけどナナシが3人がいいっていうならそれでもかまわない」


「イスカぁ・・・おまえもかぁ・・・」


ブ○ータス今なら君の気持ちが理解できる、見方に裏切られるってこういう気持ちなんだね。


「まだ少し日は高いようですが気にしては負けですわよね?ナナシは服を着たままの方がお好きかしら?」


「ホントにいじけるぞ?」


「あはは!悪かったわ!だってナナシがおかしな事言うものだからもしかしたらケダモノになって襲いたいってアピールかと思ったのよ」


「王女にするアピールじゃないだろ」


なんだかドッと疲れた・・・。


「あれ?ナナシもフィルも脱がないの?」


本気で脱いでいたイスカがそこにいた・・・。


それすら可笑しくて俺とフィル、そして?を浮かべたイスカの3人で笑い転げていた。






黒い野望が渦巻く武術大会は最終日を迎える。



さていろいろ伏線回収いたしますよー

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