序章―ハジマリの詩―
ハジマリのハジマリに
この物語はフィクションです。実在する・した人物、団体、国家、企業他固有名称で表すことの出来る物全てと名称や背景が似てこそすれ、何の関係もありません。
――始まりは唐突に。
「もう、ゲームは終わりか?」
星が瞬く天蓋の下二つの影が向き合う。
圧倒的な存在感を纏う影の前に膝をつくもう一つの影。
「……“俺たちのゲーム”は終わりだ。」
絶望に打ちひしがれていた男は手元に転がる2本の剣に体重をかけ立ち上がる。
皮肉なことに護るために揮った力の真価は失うことで得られるものだった。
「俺たちは二つで一つだった。」
気がつくべきだった。その異常に、特別なことに、大切だったことに。
「兄弟、辛いなら世界の運命に身を委ねても構わないんだ。もはや、新しい選択を作ることの方が罪というもの。」
「終わったものを終わらせる事が罪だとは思わない。」
震える膝に力を入れ剣を構える。絶対的な力に対抗するにはあまりにも非力。
友が望んだ未来、自分に託された選択、彼女の願い。その重圧を振り払うかのごとく男は咆哮する。
「俺が求めるものは、世界にとって正しくない選択かもしれない。だけど、俺はこんな世界を認めない!」
「それがお前の選択か。」
声色に失望を滲ませながら長剣の切っ先を男へと向ける。
男は双剣を構え目を瞑った。
「描いた未来の形を成すのが罪だというなら、新しく作れば良い。」
それすらも罪だと言うのなら――受け入れ、書き換えよう。
小さく呟いて男は目を開き、障害に対し殺意をぶつける。冷たい視線を感じながら障害は嗤った。
「なるほど、それがお前が世界に望むことか。」
「俺が求めるのは過去でも今でもない。もちろんお前達の言う未来でもない!俺が望むのは――」
――俺が望むのは“今から続くこれから”なんだ。
障害は、まるで駄々をこねる子供のようだと思いながら、男に対して宣告をする。
「遊戯が終わったのなら、お前の選択とお前たちの未来を終わらせる。」
その宣言を聞くも男は口元に笑みすら浮かべながら口を開いた。
「いや……これから“三人でのゲーム”がスタートだ。」
科せられた運命には準じた選択かもしれない。これが“俺達”の存在意義だと言われたこともあった。
魂に刻まれた情報?決められた選択?そんなの知ったことか。
星が瞬く天蓋の下二つの影が言葉を紡ぐ。
響くその声は世界の終わりを選択する詩。
「全てに終焉を!“Atziluth”Muspellzheimr―Turm von Ausfluß!」
「未来に祝福を!“Atziluth”Repligard―Regel Erneuerung!」
そして終わりは緩やかに――。