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1/2  作者: 由佐
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出会い

これは2人の高校生の物語

 夜の渋谷は、昼とは全然違う。

 ビルの明かり。

 人の声。

 どこからか聞こえてくる笑い声。

 駅の近くはまだ人が多い。

 そんな街を、凛は一人で歩いていた。

「……ちょっと遅くなっちゃったな」

 スマホの画面を見る。

 十時を少し過ぎていた。

 本当なら、もう家に帰っている時間だ。

 凛は普段、こんな時間に渋谷を一人で歩いたりしない。

 そもそも渋谷自体、あまり好きじゃなかった。

 人が多いし、知らない人から声をかけられることもある。

 今日はたまたま用事があっただけ。

「早く帰らないと……」

 そう呟いて、少し歩く速度を上げた。

 駅へ向かうために、大通りから少しだけ外れた道に入る。

 そのときだった。

「ねえ」

 後ろから声がした。

「……?」

 凛が振り返る。

 そこには、二人の男がいた。

 年齢は自分より上に見える。

 一人が笑いながら近づいてきた。

「今一人?」

「……はい」

「こんな時間に?」

「ちょっと用事があって」

「高校生?」

 凛は少し迷ってから頷いた。

「……そうです」

「へえ。制服じゃないから分かんなかったわ」

 男は凛の顔をじっと見る。

 その視線が嫌だった。

「あの、もう帰らないといけないので……」

 凛は軽く頭を下げ、その場を離れようとした。

 しかし、

「待って待って」

 男が横に移動して、道を塞いだ。

「ちょっと話そうよ」

「……すみません。本当に帰らないと」

「そんな急がなくてもいいじゃん」

 笑っている。

 でも、凛は笑えなかった。

 なんとなく嫌な感じがする。

「友達も待ってるんで」

 とっさに嘘をついた。

「え? 友達どこ?」

「……向こうです」

 適当に指を差す。

 男がそちらを見る。

 誰もいない。

「いや、いないじゃん」

「あ……」

 しまった。

 男が笑う。

「嘘ついたでしょ」

「……」

 凛は一歩後ろに下がった。

 怖い。

 周りには人がいる。

 なのに、誰もこっちを見ていない。

 渋谷なんて、そんなものなのかもしれない。

「まあいいじゃん。ちょっとだけ――」

「おい」

 突然、後ろから声がした。

 低い声。

 凛も、男たちも同時に振り返った。

 一人の少年が立っている。

 黒髪。

 制服のネクタイは緩んでいて、シャツのボタンもいくつか外れている。

 いかにも真面目な高校生、という感じではない。

 むしろ、その逆だった。

 少年はポケットに手を入れたまま、ゆっくり近づいてくる。

「……誰?」

 男の一人が聞いた。

 少年は答えない。

 ただ、男たちを見ていた。

 その瞬間。

「あ……」

 男の顔から笑みが消えた。

「お前……陽翔?」

 凛には、その名前に聞き覚えがなかった。

 でも、男たちの反応は明らかにおかしい。

 さっきまで余裕そうだった二人が、急に黙った。

 陽翔。

 渋谷では、それなりに知られた名前だった。

 喧嘩が強い。

 裏でいろんな奴とつながっている。

 関わらないほうがいい。

 そんな噂を持つ高校生。

 本人は、そんな噂を気にしている様子もない。

 陽翔は凛の横を通り過ぎ、男たちの前で止まった。

「その子に何してんの?」

 声は静かだった。

 怒鳴っているわけでもない。

 それなのに、妙に怖い。

「いや……別に。ちょっと話してただけだよ」

「ふーん」

 陽翔は男を見た。

「じゃあ、もういいよな?」

「……」

 男は答えなかった。

 凛はただ、陽翔の背中を見ていた。

 知らない人。

 怖そうな人。

 でも――

 今、自分を助けようとしている。

 凛はまだ、この少年のことを何も知らなかった。

 これが、二人の最初の出会いだった。

読んでいただきありがとうございました。続編ができ次第投稿します。

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