俺なりのショートショート2
頑丈な扉を開けると地下へ続く階段がある。降りていくとドアがあり、開くと真っ暗な八畳ほどの部屋に、トイレ。ホワイトボードとクロノマジック、机が一つ。その机の上には常人では決して理解が出来そうにない複雑な数式が書かれた紙が一枚。地下に作られた部屋。
部屋に明かりが点くと、目隠しをされた五人の男たちが押し込まれるようにして部屋に入れられた。恐る恐る目隠しをとる。眩しそうにしながらお互いの顔を見て驚く。みな顔なじみだった。それもそのはず、五人は高名な数学者だったのだ。一人は七十以上とみられる白髪と白髭の老人。あとは大体四十代後半から、五十代前半ほどの男たち。
彼らのうちの一人が、机の上にあった紙に気が付いた。それは何十年も解かれたことがないとされている数学上の難問だったのだ。学者たちは難問を解くためだけに、さらわれたのだった。
学者たちはさらわれた来たことなど忘れて、さっそく難問に取り組み始めた。ホワイトボードには、暗号のように複雑な式がかかれあっという間に真っ黒になっていくと思えば、全部消され待った真っ黒になる。そんなことを繰り返しているうちに学者たちは疲れ果てた次々と床の上にあおむけで眠り込んでいった。
翌日目を覚ますと、部屋の隅には五人分の食事が用意されていた。何がどうなっているのか分からなかったが、難問を解かない限り部屋から出ることはできないことは確実なので彼らは、用意された食事もそこそこに問題に向き合った。
それから数か月がったった。床の上に寝転がり天井を見つめながら何かをつぶやくもの、自分の頭部をたたきながら何かをわめくもの。殴り合いけんかをしたうえ、頭を床に打ち付けてられて動かなくなったもの、相手が動かなくなったのち自らの頭を何度も床にぶつけて動かなくなったもの。四人が難問に敗北した。残ったのは、老数学者一人だけ。彼だけが、部屋の中で唯一の生き残りとなってしまった。
老人は乾いたパンを時折つまみながら、計算を続けていた。食事は先週から提供後が止まっていた。そのため、ただでさえ粗末な食事だったのにそれを今の今まで老人は食べきらないように少しずつ口に運んでいるのであった。
老人は耳が遠くてわからなかったのだが、部屋の外では異変が起きていた。すさまじい爆発音や轟音、引きずるような物音や、カチカチとなる音。言語なのか鳴き声なのか、奇妙な発声をする何者かの足音。老人は計算に夢中で外界の音は、耳に届いていなかったようだ。
そこからさらに数週間後。老人の手が止まった。難問を解いたのだろうか?部屋から出ようとドアに手をかける。カギはかかっていない。ようやく外の空気を吸うことができる、階段を上がり戸を開けようとすると…。
残った力で懸命に扉を開けようとすると、カチッと音がして扉が開いた。外には、何もなかった。建物も、人も何も。あたり一面焼け野原だった。
老人は扉を閉めると、地下へ戻っていった。




