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25-2 頼朝軍団、京へのあらたな道筋

北条早雲に桜の婚姻をせまられ、頼朝は考える間もなく、北条早雲は桜の相手の上杉景虎を登城させていた。

断る間もなく話が進んでいくが、上杉景虎は背負ってきた多くの苦しみの片りんも見せない、忍耐強くも涼しげな青年であった。

また、頼朝と秀長は、この機会にご意見番の早雲と新しい領国の統治について相談する。


■源桜の恋


頼朝の前に突如現れた上杉景虎。

北条家当主・北条氏政の弟にして上杉謙信の養子。しかし、謙信亡き後の上杉家の内乱で上杉景勝に追い出され、居を構えた沼田城はあろうことか頼朝軍の友軍武田勝頼に攻め滅ぼされる。その後頼朝軍・義経の妻で武田勝頼の娘武田梓からの必死の助命の願いがかない、古の血筋にあたる北条早雲のもとで保護されていた。


景虎「ご挨拶が、大変遅れましたこと、深くお詫び申し上げます」


景虎から悲壮感は全く漂っておらず、頼朝に深く頭を下げる精悍な若武者であった。


景虎「頼朝様はじめ、皆様方から多大なるご配慮を賜り、こうして命を永らえることができました。さらに、頼朝様の配下としてお迎えいただけましたこと、御礼の申し上げようもございませぬ」


頼朝「これはこれは、景虎殿!」


頼朝は急な桜の婚姻話は、いまだ心の整理が追い付かないものの、目の前の景虎には好感を抱いていた。


頼朝「まことに、大変な目に遭われましたな……よくぞご無事で。

しばし我が軍団にて、辛抱していただきたい」


景虎「とんでもございませぬ。頼朝様の下でもうひと働きできること、誠に栄誉と存じます。


頼朝様が目指される道……某などには、到底成し遂げることのできぬもの。この景虎、微力ながらも、頼朝様のお役に立ちたく存じまする」


頼朝「景虎殿、ありがたきお言葉を頂戴した」


頼朝は、多くを背負いながらも静かに頭を垂れる景虎に、心を動かされていた。


頼朝「して、景虎殿は、我が娘桜とお会いになられたのかな?」


景虎「はっ! 僭越ながら、大垣城にて……。

……戦場で兵を率いる凛々しいお姿と、ふとした折に見せられた御気遣いに、この景虎、心を奪われました」


景虎は言葉を濁した。

そこに、北条早雲が悪戯っぽく口を挟む。


早雲「頼朝殿、この二人はすでに恋仲こいなかでござるぞ!


秀長に嫁いだ都姫も、なかなかの美形びけいでござったろう!この景虎もなかなかの美男子として、女子おなごたちの間ではもっぱらの評判じゃ!


何といっても、わしの血筋ゆえのう! がはは!」


横に控える秀長、今回はあえて早雲に反論しなかった。先日秀長に輿入れした美しき北条都とは、仲睦まじく過ごしていた。


頼朝「……そうであったか……。

であるならば、桜も異論はないのであろう……」


頼朝は急な娘・桜の婚姻の話は、いまだ心の整理が追い付かないものの、目の前の景虎には好感を抱いていた。

一息ついてから、あらためて口を開いた。


頼朝「景虎殿。桜の事、お願い申し上げる」


挿絵(By みてみん)


景虎「ありがたき幸せにございまする!」


早雲も、自分のことのように喜んだ。


早雲「この早雲、一層、頼朝様の御為おんため、力の限りを尽くしまするぞ!」


頼朝「……桜も、景虎殿とならば安土を任せられるだろう。

だが、わしの不安が消えたわけではない。早雲殿、景虎殿――どうか二人で桜をしっかりと支えてやってほしい」



■新しき領土の管理


頼朝「ところで早雲殿」


頼朝は、あらためて早雲に向き直り、別の話を続ける。


頼朝「これからのわが軍団の布陣について、秀長と話をしておったところじゃ。よければ、早雲殿にも聞いてもらえぬか」


早雲「はっ! それは是非とも、お聞かせくだされ」


早雲は、居住まいを正した。

そこで秀長が、口を開く。


秀長「まず、新しく拠点とする城の配属、配備について案を固めました。


安土城:[城代]桜様、[部隊配属]早雲殿の突撃隊。


長浜城:[城代]赤井輝子殿、[部隊配属]輝子殿の狙撃隊。


佐和山城:[城代] 先の戦いで頼朝軍に降った、旧浅井家臣、美濃の稲葉一族の中でも特に人望の篤い稲葉重通いなばしげみち殿。

ただ大規模な部隊配備は難しく、統治を城代に一任。


音羽城:[城代]検討中、[部隊配属]里見伏殿の狙撃隊。

音羽城は現状、城も城下町も発展しておりませぬ。ですが、城下の敷地は広く、良質な砂鉄も産出され、鉄砲生産の一大拠点にすることができるとみております。内政に優れた城代を派遣したく検討しております。


以上が新しい近江の統治の案です。

いかが思われますか、早雲殿」


挿絵(By みてみん)


早雲「うむ。良き考えかと存ずる」


早雲は、深く頷いた。


早雲「これまでは、一つの城から複数の部隊を出撃させ、多方面へと無理に派遣させざるを得なかった。じゃが、城も増え、兵力も増強されたからには、城を単位とした戦略を組めるようになった。兵力を一城に集中できることは、戦の持久力を大きく伸ばす。


一部隊あたりの兵力も格段に増える。まさにこの布陣が要となろう。

これでようやく、織田と互角に渡り合う土台が整ったのじゃ。

間違いなく、我が軍は強くなった!」


早雲は、にやりと笑った。


早雲「つまりは西の織田への対応は、桜殿と赤井殿、この二人の女将の双肩にかかっておる、というわけじゃな!」


北条早雲の言葉を聞き、頼朝が再び口を開いた。


頼朝「早雲殿に、ご賛同いただけるのであれば、まことに心強い。


では、この布陣で、決定とする。早雲殿には、安土城へのご準備をはじめていただきたい。景虎殿も、桜と共に安土へ向かってほしい」


早雲「ははっ! かしこまりましてござる! それでは、準備が出来次第、ただちに安土へ向け、出立いたしますぞ!」


最後に頼朝は、景虎に顔を向ける。


頼朝「景虎殿、くれぐれも桜の事、お願い申し上げる」


景虎「はっ!何がありましても……!」


早雲と景虎は足早に那加城を後にした。



■頼朝軍団新体制


こうして、近江をほぼ制圧した頼朝軍は、新たに領土の統治体制を固めるべく、拠点の統治に関する軍令が秀長より発せられた。


安土城:[城代] 源桜(頼朝娘) [配属] 北条早雲隊(第一突撃隊)

長浜城:[城代] 赤井輝子(譜代衆) [配属] 第四狙撃隊

音羽城:[城代] 未定 [配属] 内政官・守備隊(将来は里見伏隊)

佐和山城:[城代] 稲葉重通(旧浅井家臣) [配属] 内政官・守備隊

大垣城:[城代] 源頼光(一門衆) [配属] 第二突撃隊・第四突撃隊(渡辺綱)

清州城:[城代] 武田梓(義経妻) [配属] 第六狙撃隊(新設)

岐阜城:[城代] トモミク(譜代衆) [配属] 第二狙撃隊トモミク・第五狙撃隊(里見伏)

犬山城:[城代] 太田道灌(新参衆) [配属] 第三突撃隊・第五突撃隊(大内)・第六突撃隊(犬塚)

那加城:[城代] 源頼朝 [配属] 第一狙撃隊(頼朝直属)・第三狙撃隊(義経)


新たに任命された城代たちは、それぞれの城において、短期間で多くの課題に取り組むことを求められていた。城下町の復興と発展、破壊された城郭の修繕。さらに、新たに部隊が配属された城においては、さらなる募兵と訓練、部隊の装備の充実と物資の調達。休む間もなく、それぞれの任務に邁進した。


お読みいただきありがとうございました。

新しい領国統治の方針が決まった頼朝軍ですが、すでに国力が拮抗しはじめている織田軍が、このまま頼朝軍の領国や軍備が拡充することを見逃すわけにはいきません。

次回、但馬・山名家の娘、山名梢が長旅を終え、ついに那加城に到着します。

頼朝が心待ちにしていたのは、才女としての名声を持つ梢を、まだ空席のままの音羽城代を任せること。

その若き才覚が、軍団にどのような変化をもたらすのか――。

お楽しみに!


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