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22-3 救出、赤井輝子

太田牛一の決死の救出で死地から脱した赤井輝子。

しかし逃げる赤井輝子一団を、島左近も猛追。

いよいよ島左近の騎馬隊が赤井輝子をのせた太田牛一の騎馬にせまる。

赤井輝子を守るため、義経は自ら騎馬を率い突入する――戦場に轟くは軍神の咆哮。


■里見伏の覚悟


安土城外で、後詰として待機していた里見伏隊は、ただならぬ様子で城内から逃げ延びてくる赤井隊の兵たちを見て、城内の異変を察知していた。


そこへ、伏の副将・犬坂毛野が慌てた様子で駆け込んできた。


毛野「姫!赤井隊、筒井軍の奇襲を受け突き崩され、潰走状態にあるとのこと!


逃げ延びてきた兵たち、輝子様の安否も分からぬ、と申しております!」


伏「……あの、輝子様が、まさか……」


伏は、しばし絶句した。


伏「…すぐにでも、救援に向かいたいところですが……我が隊はここを動くわけにはまいりませぬ」


伏は、冷静に状況を判断する。


伏「織田の本隊が、すぐそこまで来ております。

毛野、義経様に早馬を。ただちに城外へ出て我が隊と合流されたし、と。

そして、佐和山にて待機されておられる梓様にも、至急援軍のお願いを。


音羽城を攻略中の、頼朝様、トモミク様にも、この状況をご報告し、至急ご判断を仰ぐようお願いしますね」


毛野「かしこまりました、伏姫!」


毛野は、すぐさま伝令を手配した。


挿絵(By みてみん)


伏「信長が近江へ戻ってくるまでに、安土城を落とす……その目論見は、叶いませんでしたか……」


伏は、静かに琵琶湖の湖面を見据え、決意を込めて呟いた。


伏「もはや、致し方ありませぬ。

我が隊がここで盾となり、信長本隊を迎え撃ちます。その間、他の部隊には安土城の包囲を継続していただきましょう。


……簡単に安土城が落ちるとは思ってはいませんでしたが……難しき戦いとなりました」


伏は、傍らの兵に命じた。


伏「鉄砲隊の一部を、城門近くに伏せておきましょう。城内から敵が打って出てきた場合に、備えてください」



■義経の決意


義経隊は赤井隊壊滅の報を受け、急ぎ安土城外へと転進し、里見伏隊と合流した。


義経は琵琶湖の湖畔に布陣し、周囲を見渡すと、状況が刻一刻と悪化しているのが見て取れる。


東からは、佐和山城を発った武田梓隊が、援軍としてこちらへ向かっている。

しかし北の琵琶湖上からは、こちらへ向かってくるおびただしい数の織田の船団が見える。

さらに西、大和方面から筒井家の更なる増援部隊が、砂塵を巻き上げながら迫ってくる。


そして、目の前の安土城内からは、城内に取り残された味方の兵たちの、忌まわしい悲鳴のような声が聞こえてくる……。


義経「……おのれ! まこと、風向きが悪いようじゃな!」


義経は、苦々しげに呟いた。


義経は状況を理解すべく、安土城内に目を向ける。その時――三の丸城門から垣間見えたのは、後方から迫る敵軍に猛追されている騎馬の一団だった。


義経「あれは……! わが軍ではないか! あのままでは危ない!」


義経は、即座に決断した。


義経「拙者自ら、騎馬を率いて、救援に向かう!

直下の鉄砲隊二千は、後から拙者に続け!急げ!


阿国殿、里、わが隊の残りの鉄砲隊は、里見伏殿の指揮下に! 筒井の増援、何よりも信長に備えよ!」


義経は、そう言い残すと、自ら手勢の騎馬隊を率い、赤井輝子隊が破壊した安土城百々橋口の三の丸城門から突入していった。


(あのままでは、輝子殿が討たれてしまう! ここで退くわけにはいかぬ!)



■島左近の猛追


太田牛一は赤井輝子を馬上にかき抱き、城外へと逃走を図る。敵将島左近も千載一遇の機会を逃さぬよう、太田牛一率いる騎馬隊を必死に追撃していた。


逃げる頼朝軍の騎馬隊に、島左近隊が追いつきそうになる。次の瞬間、頼朝軍の中から数騎の騎馬武者が反転、追撃してくる島左近隊の先頭へ死を顧みず突進する。自らの命と引き換えに、島左近隊の追撃の速度をわずかながらも遅らせる。


しかし島左近は追撃を止めない。焦りは見せない。むしろ、じりじりと獲物を追い詰める虎のようであった。頼朝軍の騎馬武者を打ち取り、すぐに追撃態勢を整え、太田牛一たちを猛追する。島左近隊が迫るや否や、頼朝軍の別の騎馬武者たちが反転。死を覚悟の突進を繰り返し、追撃の足を一瞬でも止めようとする。


それでも、数の少ない太田牛一の騎馬の一団であった。太田牛一が駆る馬にも、島左近隊の追手の刃が届こうとしていた。


島左近は、地響きのような声で、味方に檄を飛ばす。


左近「敵の大将は、もう目の前ぞ! 決して逃がすでない! 全力で、かかれぇ!」


島左近隊が、ついに逃げる太田牛一たちの騎馬隊を捉えようとした。


挿絵(By みてみん)



その刹那、正面の城門から、新たなる騎馬武者の一団が突入してきたのである。


義経が自ら率いてきた少数の騎馬隊であった。その数、百騎足らず。しかし島左近隊の追撃の足を緩めるには十分であった。


義経「おのれ!輝子殿には指一本触れさせぬ!」


挿絵(By みてみん)


猛烈な速度で突撃してきた義経隊と、追撃に気を取られていた島左近隊とが、正面から激突。一瞬にして、両軍の多くの兵士たちが、衝突の衝撃で、あるいは、交差する槍によって貫かれ、地面へと叩きつけられる。


それでも、義経隊はその勢いを全く緩めることなく、鋭い密集隊形を崩さずそのまま島左近隊の陣形中央を突破、完全に分断していく。


挿絵(By みてみん)


義経隊が島左近隊を突破した次の瞬間、義経が後続させていた二千の鉄砲隊が、隊列を組み終え、分断され混乱する島左近隊に向け一斉に射撃を開始した。


義経隊による中央突破と、鉄砲隊による集中砲火。さしもの島左近隊も瞬時にして潰走状態へと陥った。


左近「もう少しのところであったものを! …ええい、退け! 全軍、退却じゃ!」


島左近は、悔しげに叫びながら、撤退を命じた。


退却する島左近隊が城門から出たところ、今度は、城外で待ち伏せていた里見伏隊の鉄砲隊が、容赦なく狙い撃ちにする。島左近隊は、これにより、ほぼ壊滅的な打撃を受けた。



太田牛一、赤井輝子、大祝鶴らは、文字通り命からがら、安土城外へと逃れることができた。城外では大和方面からの筒井家の新たな増援部隊が、里見伏隊に攻撃を開始していた。


この新たな筒井隊の増援により、島左近はかろうじて戦線から離脱、命からがら大和方面へと退散していった。


左近「信長殿がここまで追いつめられるとはの……! だが、このまま終わることはない……」


島左近は安土城を囲む頼朝軍を一度振り返り、あらためて馬に鞭を打った。


島左近を逃がした後詰めの筒井軍は、里見伏隊の、正確無比な鉄砲射撃の前に、ほとんど抵抗らしい抵抗もできず、全滅させられた。


挿絵(By みてみん)



琵琶湖上の信長の軍船は、肉眼ではっきり見えるところまで迫っていた。


お読みいただきありがとうございました!

次章、湖上に迫る信長の大軍が、安土の戦場に影を落とします。

お楽しみに!


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