22-1 行く手を阻む、安土城城門
安土城下の攻防で加藤清正率いる守備隊を殲滅し、信長本体が戻る前に安土城を攻略すべく攻めかかる義経と赤井輝子。
敵はわずかな守備兵の安土城、頼朝軍より寡兵の筒井軍、味方は頼朝軍最強の鉄砲隊赤井輝子隊。安土城攻略は時間の問題と思われた。
そこに衝撃の報告が義経に届く。
■音羽城攻略
佐和山城にて後詰として待機していた頼朝のもとへ、斥候から戦況の報告が入った。
伝令「申し上げます! 義経様率いる先鋒部隊、安土城下の守備隊を蹴散らしました。これより安土城への攻撃を開始する、とのことにございます!」
頼朝「大義であった!」
だが、すぐに別の報告がもたらされた。
伝令「申し上げます! 安土城の南方、音羽城から織田軍が出撃、城下に布陣しております!」
頼朝「して、兵力はいかほどか」
伝令「はっ!およそ千五百から二千!」
頼朝「ご苦労であった! 下がってよい!」
頼朝は、佐和山に控えるトモミク、武田梓、そして羽柴秀長と、急ぎ軍議を行った。
頼朝「義経たちには、信長が戻る前に安土を落としてもらわねばならない。背後から音羽城の織田軍に襲われては、時を失う。手を打たねばなるまい。
秀長、そなたの考えはいかに」
秀長「はっ! 音羽城方面に織田の援軍は、今のところございませぬ。ただし、音羽城を経由して、援軍が差し向けられるのは時間の問題。
先んじて音羽城を攻め落とし、安土への道筋を塞ぐのが得策かと考えます。
今であれば、頼朝様、トモミク殿の部隊のみにて、攻略できましょう」
頼朝は秀長の言葉に頷いた。
頼朝「音羽城を責めることに賛成じゃ」
秀長「はっ!
あらゆる事態を想定し、梓様にはこの佐和山城にて友軍として待機いただくのがよろしいかと、愚考いたします」
頼朝は、梓へと向き直った。
頼朝「梓。この後の安土城での戦況をよくよく確認し、そなた自身で軍を動かすべきかどうか判断せよ。
…頼めるか」
梓「はい、頼朝様。万事お任せくださいませ。頼朝様も、トモミク様も、ご無理なされずに」
武田梓は穏やかに、しかし、力強く答える。その眼差しには戦場を俯瞰する冷静さがあった。
頼朝隊とトモミク隊、激戦が続き、出陣した当初から兵力は半分以下まで削られていた。しかし、これ以上近江攻略の戦力を低下させるわけにはいかなかった。
(信長本隊の帰還まで、そう長くはあるまい。ここで安土と音羽を落とせねば、近江の戦は再び泥沼と化す――)
頼朝軍の将兵たちは、言葉には出さずとも、皆、同様の危機感を抱いていた。
迫る夕暮れの光を背に、頼朝は馬の手綱を握り直す。
頼朝「トモミク、出陣する」
その声に応えるかのように、トモミクは微笑をたたえ、馬の手綱を握りしめた。
■安土城へ攻撃開始
天正十三年(1585年)三月。
義経率いる頼朝軍は、安土城下で激しい抵抗を見せた加藤清正隊を、激戦の末に殲滅、安土城内には僅かな守備兵を残すのみ。また、越前から急ぎ安土に向かっているであろう織田信長本隊の足音は、まだ聞こえてこない。
義経は、ただちに安土城への力攻めを決断した。
安土城攻に力攻めを開始した、まさにその時。
前方の物見から、早馬が駆け込んできた。
伝令「申し上げます! 安土城へ向け、敵の援軍接近! 旗印は大和・筒井順慶勢! 数は五千!」
義経「なに、筒井が援軍だと?」
義経は、傍らにいた赤井輝子に問いかける。
義経「輝子殿、どう考える」
輝子「ふん! 筒井の五千程度、ひとひねりにしてくれましょう!」
輝子は、鼻で笑った。
輝子「安土城内には、まとまった兵はいませんよ。たとえ背後から筒井勢に突かれたとて、挟撃される心配もないでしょう。
いかに安土城が天下無双の堅城であろうとも、守る兵の少なき城などすぐに落としてみせましょう!」
義経「…ふふ。違いない」
義経も、輝子の言葉に頷いた。
義経「よし! わしは、大手門より攻める。
輝子殿には、百々橋口からの攻撃をお願いしたい。
伏殿は、城下にて後詰として待機を。
では、参ろうぞ! 目指すは、安土城本丸、天主!」
■耳を疑う報告
赤井輝子率いる第四狙撃隊は、持ち込んだ大砲による猛烈な砲撃で、安土城三の丸、百々橋口の城門を、難なく粉砕した。
輝子「見たかい! 城の兵なんぞ、ほとんどいやしないじゃないか! このまま一気に、二の丸まで攻め上がるよ!」
輝子の号令一下、赤井隊は破壊された城門から、怒涛の如く城内へと雪崩れ込んでいく。
時を同じくして、義経率いる第三狙撃隊は、安土城の大手口、三の丸の城門へと攻めかかっていた。
(…さすがは、信長が、天下に示すべく築いた城よな)
義経は、感嘆していた。
真っ白な漆喰をまとった高石垣、その上には、織田の天下布武を象徴するかの如き、きらびやかな天守がそびえ立つ。その壮麗さに一瞬心を奪われながらも、義経は己が攻め落とすべき獲物としか見ていなかった。
安土城の城門は、想像以上に強固であり、鉄砲隊の集中射撃、破城槌による攻撃をもってしても、突破には予想外の時間を要していた。
大手口の城門への攻撃を続けながら、遥か右手、百々橋口方面から立ち上る硝煙が目に入り、喊声が聞こえてくる。
(輝子殿は、すでに二の丸へ取り掛かっておるか……)
義経は一瞬胸を撫で下ろしたが、その安堵は刹那にして打ち砕かれた。
義経隊が、ようやく大手口の三の丸城門を突破した時、一騎の早馬が駆け込んできた。
伝令「申し上げます! 敵の援軍、筒井家の部隊が突如として赤井隊の後方に出現! ただ今、赤井隊に攻めかかっております!」
(筒井軍の兵力は、輝子殿の半分にも満たぬ。輝子殿をもってすれば、問題あるまい)
義経は、あの赤井輝子が背を見せるなど夢にも思っていなかった。だが、伝令の報告は無情に続いた。
伝令「申し上げます! 赤井隊、敵の猛攻を受け、潰走状態!
後詰の里見伏様からも、『状況不明、至急、城外にて合流されたし』と緊急連絡が!」
義経「な……! 何かの間違いではないのか!?」
義経は、絶句した。
義経「あの、輝子殿に限って、そのような……! いったい、何が起こっておるのだ!」
お読みいただきありがとうございました!
最強の赤井輝子隊に何があったのか。
安土城攻防に、信長が仕掛けた予想外の策とは。
次回もお楽しみに!




