0-3 異時代英雄たちの集結 ―頼朝軍 十部隊の陣容―
時を超えて集った十部隊の隊長たちが姿を現す。頼朝の混乱の中、“未来を護る使命”が語られる――。
トモミク「それでは、頼朝様直属の部隊を率いる副将の方々をご紹介いたします」
紹介された副将は、里見伏と羽柴秀長という二人だった。
里見伏は一つ前の時代、安房の里見一族の姫君だという。いざという時に命を投げ打ち、”死兵”となり頼朝を護ると。物静かな彼女からは想像もつかないが、戦場では比類なき攻撃力を発揮するという。
羽柴秀長は、トモミクが岐阜城を奪取した際の捕虜だったが、彼女に説得され味方になった。戦での武勇に留まらず、軍団の政策立案などでも大きな力を発揮する参謀役だという。あの織田家の重臣・羽柴秀吉の実弟らしいが、なぜ兄を裏切ったのかは不明。
さらに、櫛橋光という女丈夫も頼朝隊に配属され、部隊の守護を担う重要な役目を負っているという。
*左から里見伏、羽柴秀長、櫛橋光
トモミク「続きまして、他の部隊を率いる部隊長の皆様よりご挨拶を」
他の部隊は射撃主体と騎馬突撃主体に大別され、総勢十部隊で編成されている。各部隊は一万から二万の兵を率いるという。
鉄砲主軸の狙撃隊が四つ、騎馬主軸の突撃隊が六つ。
トモミクが示した編成は、以下のとおりだ。
――<頼朝軍・部隊編成>――
[第一狙撃隊] 隊長:源頼朝 / 副将:里見伏、羽柴秀長、櫛橋光
[第二狙撃隊] 隊長:トモミク / 副将:犬山道節、犬坂毛野
[第三狙撃隊] 隊長:源義経 / 副将:武田梓、出雲阿国
[第四狙撃隊] 隊長:赤井輝子 / 副将:大祝鶴、太田牛一
[第一突撃隊] 隊長:北条早雲 / 副将:谷衛友、源桜
[第二突撃隊] 隊長:源頼光 / 副将:坂田金時、石川五右衛門
[第三突撃隊] 隊長:太田道灌 / 副将:世良田元信、柳生十兵衛
[第四突撃隊] 隊長:渡辺綱 / 副将:池田恒興、柳生兵庫
[第五突撃隊] 隊長:大内義興 / 副将:名古屋山三郎、果心居士
[第六突撃隊] 隊長:犬塚信乃 / 副将:犬飼権八、犬川荘助
時代も出自もバラバラで、大半が別の時代から召喚されたという。
*左から、赤井輝子 → 北条早雲 → 源頼光 → 太田道灌 → 渡辺綱 → 大内義興 → 犬塚信乃
一見、坂東武者のように荒々しい印象ではないが、柔和な表情の女武者も多い。中でも“桜”と名乗る十代そこそこの娘が北条早雲隊に配属されているのだという。しかも彼女は「頼朝の娘」と紹介された。まったく心当たりはない。
すでに困惑は限界に近い。
頼朝はこの洪水のような情報をただ必死に頭の片隅へ追いやることしかできなかった。
頼朝「……ところで、一つ教えてほしい」
ここまで黙して聞いていた頼朝が、重い口を開く。
トモミク「何でございましょう、頼朝様」
トモミクが応じる。
頼朝「皆がここに集ったのは、ある“使命”のためだと聞いた。その使命とは何だ」
トモミク「大きく未来を変えることは許されません。
ただし無用な死は救うことができます。私の“主”は甲斐源氏・武田家の悲劇的な滅亡を阻止するべく、私をこの時代に派遣しました。
そして源氏の血が断たれぬよう、頼朝様に討たれようとしていた義経様を、頼朝様のお側へお届けすることも任されていたのです」
期待していたわけではないが、この場に居並ぶ家臣たちの前で、しかも義経の前で「弟を殺そうとした」と明言され、頼朝は堪忍袋の緒が切れた。
頼朝「無礼者めが!」
思わず叱咤するが、トモミクはまるで動じず微笑みすら崩さない。
トモミク「私の命は形なきところから生まれたもの。どうかご容赦ください。すべては源氏の血を未来へ繋ぐため……」
義経「兄上!」
義経が進み出て頼朝の前に膝をつき、訴える。
義経「どうかお聞き入れください。
トモミク殿は誰よりも兄上に命を捧げる覚悟で、今日まで我らを導いてくださいました。こうして兄上をお迎えできたのも、ひとえにトモミク殿の努力の賜物。
ここに控える者らも皆、兄上の御心を深く慮っております。
私も兄上を恨んだことなど、一度たりともございません。
どうか……トモミク殿をお許しください」
(わしは、いったい誰に、何に対して怒っている……?)
あまりに多くの情報と感情が錯綜して頭が追いつかず、理性が働かない。
頼朝「……そなたたちの働きに、期待しておる」
そう口にするのが精一杯だった。
すると一同は、再び深々と頭を垂れる。
一同が頭を垂れたその瞬間、頼朝の胸に言い知れぬ不安が芽生えた。
(この“使命”…はたして、守るだけで済むのか?)
お読みくださりありがとうございます! 今回は頼朝軍団の全貌を一気にご紹介しました。次話では、居城の那加城に移動し、整理がつかないままにあらたに不思議な女性出雲阿国と出会います。感想・ブクマ・誤字報告などお気軽にどうぞ!




