6-2 強行軍、信濃の戦火へ
織田の壁を突破し、南信濃へ――。頼朝軍は加藤清正、前田利家を蹴散らし、神速で飯田城を目指す。狙撃と突撃の連携が、武田家の命運を握る。
◼️東美濃進撃
天正九年（1581年）五月。
頼朝軍は南信濃武田軍救援のため、頼朝自ら軍を率いて出陣した。
東美濃に立ちはだかる織田軍を突破して南信濃に至る強行軍であるばかりか、頼朝軍本隊が留守の隙に、織田軍本隊の本格的な侵攻が起きる危険性も高かった。しかし、友軍の武田家を救うためには、他に選択肢は無かった。
岐阜城トモミク隊（第二狙撃）の、那加城へ到着を待って、頼朝隊（第一狙撃）、赤井隊（第四狙撃）が出撃する。
那加城の義経隊（第三狙撃）、岐阜城の北条早雲隊（第一突撃）、犬山城の太田道灌隊（第三突撃）は、守備隊としてそれぞれの居城で臨戦態勢を整えていた。
頼朝「義経、後のことは頼むぞ」
那加城から出撃の際、頼朝は城門前で弟に呼びかける。
義経「兄上もどうかご武運を。西の織田のことはお任せを」
義経が静かに応じる。
出雲阿国が陰から見守っているのが見えるが、彼女は何も言わず微笑むだけだった。
頼朝隊、赤井隊は東へ進み、美濃太田で犬山城の源頼光隊（第二突撃）と合流。東美濃を目指す頼朝軍は、総勢五万あまりの兵力となった。
出陣早々、織田の迎撃隊として加藤清正の一隊が土田に布陣していた。
輝子「こちらは、ここで遊んでる暇なんてないんだよ。早く道を開けな！」
兵力に勝る、先鋒の赤井隊の断続的な斉射、続いて頼光隊の騎馬隊の突撃、加藤隊は瞬く間に壊滅した。
ただし、短期決戦に持ち込もうとする頼朝軍の先鋒部隊、特に敵と直接刃を交える騎馬隊の消耗は、どうしても高くならざるを得ない。
六月に入り、飯田城陥落の報は頼朝軍に届いていなかった。頼朝軍はさらに進軍を急いだ。
頼朝軍は清正隊を踏み散らしたあと、東美濃の入口にあたる鳥峰城へ到達。
案の定、城から出撃してきた前田利家率いる織田軍が立ちふさがるが、ここでも赤井隊の鉄砲隊と、頼光隊の騎馬隊の連携攻撃により、前田隊を短時間で粉砕。鳥峰城を攻略せず、素通りしながら更に先を急ぐ。
*鳥峰城に布陣する前田利家率いる織田軍(赤い軍勢)
*源頼光隊先頭に、赤井輝子隊が続き、鳥峰城に布陣する織田軍に攻撃を仕掛ける
*後から頼朝隊と、殿のトモミク隊が続く
すると、背後から先ほど敗退したはずの加藤清正が、残余兵力をかき集め再び襲撃してきた。しかし、頼朝軍の最後部で殿を務めるトモミク隊（第二狙撃）が反転、鉄砲隊を何列にも配置し、迎撃の陣を整えた。寡兵の加藤軍が突撃を加えたが、頼朝軍にはほぼ被害なく、加藤隊を撃退する。
（さすがトモミク隊。手際がいい……）
■飯田城救援
七月、頼朝軍は苗木城へ到達し、守備する遠山隊も難なく撃退した。
ついに南信濃の国境へ迫った。
ただし先鋒を務める頼光隊や赤井隊の消耗は大きかった。頼朝やトモミクの狙撃部隊と交代させたいが、秀長が地図を示しながら言う。
秀長「頼朝様、この先は山道がさらに険しく、隊列を大きく入れ替えるには時間も兵糧も厳しい状況です。頼光隊と赤井隊の消耗は激しいとはいえ、いま部隊を入れ替えるのは飯田城救援が遅れます。
ここは時を考え、今の布陣のまま山を越えるしかないかと……」
（やむを得ぬか……）
頼朝は頷く。
しかし頼光・赤井両隊は疲労を物ともせず、まさに神速と呼べる速さで山道を駆け抜け、飯田城を包囲する徳川軍の背後へ躍り出る。
*苗木状より、神速をもって源頼光隊と赤井輝子隊が山越えをして、飯田所を包囲していた徳川軍(赤い軍団)に襲い掛かかる
徳川軍も激戦続きで兵力は多くないが、本多忠勝や大久保忠世ら精鋭が残っていた。
それでも赤井輝子の斉射と頼光の騎馬突撃は圧倒的で、徳川軍を次々と粉砕していく。
輝子「死にたくなかったら逃げるんだね！」
輝子が敵に咆哮しながら檄を飛ばし、一斉射撃を行う。頼光隊は赤井隊の斉射で浮足立つ徳川軍に、猛突進を仕掛ける。
さすがの本多忠勝も、連戦の消耗と、大量の鉄砲隊と騎馬隊の連携と挟撃には耐えられず、大久保隊とともに潰走していった。
後方を進んでいた頼朝隊とトモミク隊が飯田城下に到着したときには、戦いはほぼ終わっていた。
飯田の空がようやく晴れたとき、頼朝軍の影はすでに城の麓に達していた。
■城内会談
信友「ようこそお越しくださいました、頼朝様……」
城門が開かれ、城主・秋山信友自らが出迎える。満面の喜び、というよりはどこか苦渋がにじむ表情だ。
頼朝「秋山殿、無事で何より。それより、勝頼殿は如何されたか」
頼朝が問うと、秋山信友は悔しそうに唇を噛む。
信友「北条と徳川、同時に侵攻を受け、どちらも押し返すことができず……この南信濃はご覧の有様です。
勝頼様も北条との戦でかなりの兵を失い、こちらへの援軍を出す余力がありません……」
頼朝「……そうか。厳しい状況であったな……」
頼朝はしみじみ語る。
上杉と結び、織田の西からの脅威は和らいだと思っていたが、北条と徳川に武田が苦戦を強いられるとは――。
秋山信友はうなだれた。
信友「まことに面目ないこと……頼朝様には、ただただ感謝いたします。こうして多くの兵糧まで届けていただき……我らがどれほど救われたか……」
頼朝「気にせずとも、秋山殿、我らは盟友である武田を、見捨てる事はない」
頼朝は信友の手を取った。しかし、信友の手は震えていた。
少なくとも恐怖からの震えでは無かった。それは屈辱か、悔しさか、あるいは……
頼朝の心中は、今後の不安が募るばかりだった。
苦境の中、頼朝軍に救われた武田家。だが、勝頼の姿はなく、信友の語る現実はあまりに厳しい。信濃の命運、そして次なる戦火が静かに迫る――。
