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47-2 始まりの場所

岐阜山麓の屋敷と、トモミク

ーー始まりはここからだった。


頼朝との再会を素直に喜ぶトモミク。

輿から現れた頼朝を目にして……。

頼朝一行は、大垣城を発った。

急がぬ道行きであった。

頼朝の体調を気遣い、

宿場に寄りながら、静かに進む。


出雲阿国は、何事もなかったかのように、

気丈で優雅であった。


頼朝は輿こしの中で目を閉じる。


(……死を覚悟する病にありながら、

ここまで想うようになるとは……)


触れてはならぬものに触れた、その感覚。

消えるはずもない。


同時に――

夢にあらわれた、”先代の頼朝”の最期。


阿国をかばい、

秀長の矢に倒れた姿。


脳裏をよぎる。



静かに、息を吐く。


挿絵(By みてみん)


義経の軍が駿府へ進軍する頃、

頼朝一行は岐阜城へ入った。



トモミクは、城下まで出迎えていた。

輿を見つけると、馬を寄せる。


トモミク「頼朝様!しばらくでございました!

わざわざ岐阜までお運びいただき、うれしく存じます!」


挿絵(By みてみん)


この時代に来て、常に傍らにいてくれた。

今は軍団も大きくなり、トモミクは岐阜の地を守る。


頼朝「岐阜にそなたが居れば、安心じゃ」


輿の中から、静かに返す。


トモミク「はい! お任せください!」


トモミクは、そのまま、

一行を岐阜城内へ先導する。




やがて輿は、岐阜城麓の屋敷へと運ばれる。


ここは――すべての始まりの場所。


義経、トモミクと出会い、

桜と過ごし、

“目的”を知った場所。



屋敷の中まで、輿が運ばれる。

頼朝が輿から姿を現す。


トモミクの表情が、止まった。


トモミク「……頼朝様……」


その場に、崩れ落ちる。


挿絵(By みてみん)


頼朝、トモミク、阿国の三人。

他は、すべて外へ。


頼朝「……心配をかけたくは、なかったのだがな」


トモミクは、阿国を見る。

助けを求めるように。


だが――

うつむくだけで、阿国は何も言わない。


トモミク「……そんな……」


頼朝はようやく理解する。


常に笑顔を絶やさず、無茶な戦いを繰り返す、

その理由を。


“先代の頼朝”を失い、再び出会えたこと。

同じ結末を、繰り返さぬという決意。


それだけの事だった。



トモミクは、震えながら口を開く。


トモミク「……阿国様……

……いえ、卑弥呼様……!」


顔を上げる。


トモミク「お願いでございます……!」


涙が溢れる。


トモミク「頼朝様がお倒れになる前へ……

どうか、わたくしを……!」


声が崩れる。


トモミク「薬を……

あるいは……上洛を止めるなど……

何か……何か手立ては……!」


阿国は、静かに首を振った。


阿国「……申し訳ございません。

わたくしは……もはや、巫女ではございませぬ」


その一言で、すべてが終わる。


トモミク「……」


言葉を失う。

涙だけが、落ちる。


挿絵(By みてみん)


阿国は、茶を点てる。

その手は、わずかに震えていた。


誰も、何も言わない。

ただ、時間だけが流れる。


挿絵(By みてみん)


頼朝「……トモミクよ」


静かな声。


頼朝「そなたの“主”に、感謝しておる」


茶を口に運ぶ。


頼朝「この身に与えられたもの……

思うところは多い」


茶椀をそっと置く。


頼朝「家族や、そなた、阿国殿と時を共に過ごせたこと――それは何ものにも代えがたい。


そして――そなたが、“先代のわし”を想い、

今のわしを想ってくれている。


それが、良く、分かる」


トモミク「頼朝様……」


トモミクの声は涙で濡れている。


頼朝「……何とかならぬものか、と考えておる。


だが、今の命を、無駄だと思ったことは無い」


微かに微笑む。


頼朝「神は残酷じゃが、

大きな使命を、わしと義経に託した。


これほど多くの人を殺やめ、そして救った、

……そのような“鬼”も、そうおるまい」


トモミクにそっと、手を伸ばす。


挿絵(By みてみん)


頼朝「そなたの本当の名は、“ミク”だったな」


トモミク「……はい……。

先代の頼朝様が亡くなられ、勝手ながら、お名前を……」


頼朝「……そうであったか」


トモミクは、泣き崩れた。


頼朝「……トモミク、いや、ミクよ。

頼みがある」


トモミクを見つめ、ゆっくる口を開く。


頼朝「わしがこの世を去ったならば、

わしのごうを背負うのは義経。


愚かな兄に、人生を翻弄ほんろうされ続けている……


不器用で危うげな弟を、支えてやってほしい。

頼めるか?」


トモミクは、何度も頷く。

声は出ない。


先代の頼朝が最後に残した言葉、

――義経を頼む――であった。


頼朝は、ふと目を細めた。


頼朝「そなたの“主”の望みと、

迷いながらも、我らが進んでおる道、

……隔たりは、ないか」


トモミクは首を横に振る。

涙をこぼしながら。


まだ言葉を出すことができない。

お読みいただき、ありがとうございました。

全ては、トモミクの”主”と阿国の願いから始まった。


阿国は力を失い、そしてトモミクの”主”は……。


この後の展開も、お付き合いくださいませ。

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