4-4 逆襲の号令 ―清州の野に猛将集う―
清州・那古野の織田軍を打つため、頼朝がついに反撃の号令を発す。
渡辺綱・大内義興・赤井輝子・北条早雲ら猛将たちが三方から出撃!
明智光秀の鉄壁の守り、清州の野に響く騎馬武者たちの咆哮、戦局は予断を許さない展開へ――。
■頼朝の決断
頼朝「黒雲が当初よりは小さくなったようだな。
秀長、各突撃部隊の出撃準備は整っているか?」
頼朝が問うと、秀長は力強く応じる。
秀長「はっ、いつでも出せます!太田道灌殿、犬塚信乃殿が早めに引き上げましたので、犬山城の兵も十分でございます。総勢五万を超える軍勢で清州に攻めかかれます!」
頼朝「よし、打って出る!いつまでも織田の好きにさせておくものか!
清州城に集結している織田軍本隊を一気に殲滅する!」
頼朝は砦中に響くほどの声を上げる。
頼朝「事前の作戦通りに!
岐阜城の早雲隊(第一突撃隊)と那加城の赤井隊(第四狙撃隊)は墨俣、黒田方面を迂回して清州城の後方を突く!
犬山城の大内隊(第五突撃隊)、渡辺隊(第四突撃隊)は手薄の那古野城を突破し、清州の正面へ圧力をかけよ!
我ら頼朝隊、義経隊、トモミク隊も小牧山から清州城にいつでも攻めかかれる態勢を整える。
清州城の後ろで安心して昼寝している織田の残党どもよ、叩き起こしてくれよう!」
頼朝は高らかに宣言する。
先の戦いで、織田軍を追い払ったとはいえ、いずれ牙をむいてくることは明らかだった。
秀長が準備してきた作戦とは、
小牧山に砦を築き、
砦に攻めかかる織田軍を消耗させ、
満を持して騎馬突撃隊を総動員して清州の織田主力を挟撃して叩く。
そのために、この半年、秀長は東奔西走していた。
織田軍は小牧山への進軍の手を緩めてはいなかったが、頼朝の目に織田軍勢の縮小は明らかだった。ここが勝機と見た頼朝は、ついに総反撃を命じる。
*犬山城(左中央)より渡辺綱隊、大内義興隊が出撃:那古野城(左中央)を経由して、清州城に向かう
*那加城(左下)より赤井輝子隊、岐阜城(下中央)より北条早雲隊が出撃:墨俣、黒田方面を迂回して清州城に向かう
*小牧山の砦(中央やや左上)に布陣して戦況を見守る頼朝隊、義経隊、トモミク隊
■逆襲の騎馬隊
織田軍は、頼朝軍があらたに岐阜と犬山から清州目指して進軍しているとの報を受け、急ぎ清州城まで大きく下がって防衛態勢をととのえた。
清州城と那古野城のそれぞれに部隊を配置し、二段構えの防御陣とした。
今回突撃隊に下された命は「とにかく突撃せよ」。
犬山城にて出撃の名を待っていた渡辺綱が、大内義興に声をかけた。
綱「いよいよでござるな!我ら騎馬隊は、敵の攻撃を退けるより、野を駆け、敵を攻めることこそその本分!此度の出撃、待ちわびた!」
義興「綱殿の申される通り!此度は、あの織田に思い知らせる時ぞ!」
綱「では、出撃する!」
義興「おうよ!兵の少なき那古野城なぞ、踏みつぶして進もうぞ!」
犬山城で、太田道灌隊と犬塚信乃の部隊を吸収した、渡辺隊と大内隊が、砂塵をあげて犬山城から出撃した。
*(左)大内義興隊と(右)渡辺綱隊
対する織田軍は、那古野城下に明智光秀隊など精鋭を配置して防衛を試みる。
綱「義興殿!あの部隊には鉄砲が多い。気をつけよ」
義興「あれは、織田軍の筆頭家臣と言われる明智光秀隊。よし、綱殿、二手に分かれ、敵の鉄砲を分散させるとしよう」
綱「かしこまった!」
大内・渡辺両隊は明智隊の鉄砲の的を絞らせないように、また集中して被弾しないように二手に分かれて突撃を敢行した。
自軍の損害も顧みず突撃を繰り返し敵陣を崩しにかかる。
■北条早雲、赤井輝子の進撃
その頃、墨俣・黒田方面から清州の織田軍の背後を突くべく進軍してきた北条早雲隊と赤井輝子隊も順調に前進していた。
赤井輝子の部隊は鉄砲が主力だが、自隊の火力で早雲隊を援護しながらも、輝子自らは少数の騎馬を率いて織田軍に襲い掛かる。あれほど奔放な彼女は戦場ではさらに大胆、織田軍の後衛を翻弄していた。
輝子「さあ、死にたくなかったら、道を開けな!」
赤井隊の鉄砲隊と、早雲隊の騎馬隊の連携で、清州に布陣していた織田軍は早雲という老将と、輝子という猛将に蹂躙されていた。
ーーーーーー
義経「兄上、我々も小牧山を下り、織田軍を挟撃いたしましょうか?」
砦から戦局を見下ろす義経が伺う。
頼朝「いや……」
頼朝は首を振る。
頼朝「わが軍の猛将たちにご活躍いただこう。もう勝負は決まったようなもの、手柄を横取りするのも無粋。山河でも眺めながら城へ戻るとしよう」
義経「かしこまりました」
義経は頼朝の真意を察し、笑みを浮かべる。ほぼ勝利は確定的だ。
*右手より清州城下の織田軍に襲い掛かる北条早雲隊と赤井輝子隊
*左手より那古野城下の織田軍に襲い掛かる渡辺綱隊と大内義興隊
ーーーーーー
その後、清州に集結していた織田軍は、早雲隊と赤井隊の連携攻撃によって壊滅状態に陥る。
那古野城防衛隊は、渡辺隊と大内隊に撃破されていった。
唯一健闘を見せたのが明智光秀の軍勢だった。友軍が崩壊する中、一部隊だけで驚異的に粘り、大内隊・渡辺隊の攻勢を巧みな鉄砲運用で長時間支え続けた。
しかし清州の織田軍を撃ち破った早雲隊・赤井隊に、明智隊は背後からの攻撃を受ける形となった。
輝子「綱殿、義興殿、大の男二人がかりで手こずって情けないね!」
騎馬突撃をなんとか凌いでいた明智隊だったが、後背から赤井隊の鉄砲の斉射を受け、ついに潰走を余儀なくされた。
かくして織田軍の部隊は、清州城、那古野城から一掃された。
しかし、戦況を冷静に眺めていた北条早雲は、副将であり、幼い頼朝の娘桜に呟いていた。
早雲「あの明智光秀……相当に手強い将よ。今後、織田が兵を再編して、あのものが大軍を率いたらば、手こずるであろう……」
桜「はい、早雲様!」
砦で戦況を見届けた北条早雲は、光秀の名前を深く胸に刻む。
■頼朝軍の限界
激戦を制した後、意気揚々と凱旋する早雲隊と赤井隊。その最前線で、赤井輝子が早雲に詰め寄る。
輝子「早雲殿! いまこそ清州城を落としましょう!まともな抵抗も受けず、私が先登をかけてみせましょう!」
赤井輝子は興奮気味だが、早雲は首を振る。
早雲「気持ちは分かるが、輝子殿、ここは退き時。清州城を落としたところで、今の兵力では清州を維持できぬ。
深追いは危険じゃ。素直に勝ち逃げするとしよう」
輝子「はぁーっ。早雲殿がそう言うなら仕方ないです。私の夢は一国一城の女城主になること! いつか絶対に落としてみせます、どこかのお城を!」
輝子は唇をとがらせる。
早雲「がはは! そなたほど女城主が似合う者はいまい!」
早雲は快哉を上げる。
輝子「ふふ、さすが早雲殿、分かってらっしゃる! では那加城に戻って、頼朝様にお酒でもお注ぎしながらおしとやかに待つとします。
ではごめんあそばせ!」
秀長の知略をもってしても手を焼くほどの猛将二人は、疲れも見せず晴れ晴れとした顔で帰路に就くのだった。
清州を奪還した頼朝軍だったが、明智光秀の存在が新たな火種となる。
赤井輝子の奔放さと、北条早雲の冷静な引き際が勝敗を左右した今回。
次回は、戦後処理と次なる戦略が動き出します――。