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4-2 小牧山防衛戦 ―火を吹く竜―

徳川軍が退き、次に迫るは清州五万の織田大軍。

頼朝は小牧山砦へ、義経は大草城を守護し、兄弟は別戦場へ――。

先陣を受け持つ信乃・道灌は斜面を駆け下り黒雲の如き敵を迎え撃つ。

火を吹く“竜”の猛攻の中、砦は耐えきれるか。

■戦国時代の頼朝と義経


大草城に着陣した頼朝と義経は、徳川軍の退却を踏まえ、織田軍への対策を考えていた。


頼朝「やはり、信長は攻めてくるであろうか……」


口に出したものの、頼朝自身も答えはわかっていた。


義経「憶されましたか、兄上。出陣した時の勢いはどうされました」


義経は意地悪く笑う。頼朝は苦笑いをしながら、義経に語りかけた。


頼朝「義経よ。そなたは大草に留まり、徳川の動向を見極めてもらえぬか。わしは小牧山砦の部隊と合流する」


義経「かしこまりました、兄上。


織田が清州に集結しているのは、小牧山を突破することを考えてのことでしょう。

小牧山には突撃隊しかおりませぬゆえ、一刻も早く兄上の鉄砲隊の合流をお願い申し上げる」


義経が力強く頷くとともに、先ほどの頼朝の答えを被せていた。


義経「大草の安全が確認でき次第、拙者も小牧山に駆けつけます!

万が一にも大草が攻められた際は、お任せを。

一兵たりとも、ここを通しませぬ!」


かつては憎しみさえ覚えた弟、今は心から頼りにしている――と頼朝は思う。


頼朝「…義経に任せておけば、大草は安心じゃ」


義経「は!お任せを、兄上!」


挿絵(By みてみん)



頼朝は義経の部隊を大草に残し、自らの部隊を、太田道灌と犬塚信乃の突撃隊が守る、小牧山の砦に向かわせた。



■信乃・道灌、斜面の逆襲


初戦を制した太田道灌と犬塚信乃。清州方面に無数にはためく織田の旗を、小牧山の砦より目下ろしていた。


道灌「信乃殿、先の戦から半年ほど。もうあれほどの兵を動員出来るとは……あれは斥候が報告した五万どころでは無かろう」


信乃「はい、後詰も続々と集結しているようでございますな。誠に恐ろしきものを敵として戦っております、我々は……」


犬塚信乃は、先の戦における波状攻撃の黒き波が、まだ瞼の裏に鮮明に焼き付いていた。


信乃「しかし、我が軍とて、この短き間にこれだけの兵と武器弾薬が揃っております。信長にとっても、我が軍はさぞや鬱陶しい小国でありましょう」


道灌「はっはっは!信乃殿の申される通りじゃ!我らは龍の鱗に噛みつく一匹のヒルよ!」


挿絵(By みてみん)


その時、眼下の織田の黒雲が動き出した。


道灌「さて、その龍がお目覚めじゃ。

鉄砲隊が合流するまでは、この砦に龍を取り付かせてはならぬな!


参ろう、信乃殿!」


信乃「はっ、もとより覚悟の上!」


信乃も意を決した。



先鋒・滝川一益隊が砦に向かい、斜面を駆け上がって来た。


頼朝軍の砦の城門が開いた。


信乃「滝川一益!懲りぬやつ!先陣の名誉を拝命する者同士、仲良くしようぞ!」


犬塚信乃隊は、勢いよく斜面を騎馬で駆け降り、勢いそのま先鋒の滝川一益隊を粉砕した。


挿絵(By みてみん)


しかし、後続の黒雲も続々と迫っていた。


信乃「深追いは禁物!一旦引き上げる!」


犬塚隊が砦に戻り、入れ替わりに太田道灌隊が斜面を駆け降り、織田軍を粉砕する。



しかし、ここで、織田軍は後続から騎馬の突撃に備え、長槍隊で槍衾を作りながら進軍して来た。


挿絵(By みてみん)


道灌「まあ、そうくるであろうな……!いったん砦に引き上げる!」


太田道灌隊と犬塚信乃隊は、自軍に配属された数少ない鉄砲隊で砦の中から槍隊への砲撃に切り替えた。

しかし、織田の犠牲以上に、戦線を斜面上に押し上げてきた。


道灌「致し方あるまい。砦を突破されては元も子もない。出るぞ!」



■頼朝隊着陣


その時であった砦の後方より大きな陣太鼓が聞こえてきた。


信乃「道灌殿!頼朝様が着陣されました!」


道灌「それは助かった……!」


騎馬で槍衾に突っ込むのは、長期戦を見据えれば避けたいところであった。


秀長「道灌殿、信乃殿、遅くなり申した!騎馬隊を後ろに下げよ!」



織田軍は次々と兵を繰り出して砦に攻めかかる。

頼朝の命で、山上の鉄砲隊が一斉に火蓋を切る。砦を目指す織田兵に火煙と咆哮が襲いかかった。


挿絵(By みてみん)


それでもおびただしい数の織田軍は、多くの屍を乗り越え、砦の城門に取り着いた。


頼朝「城門から離れ、戦線を下げよ!」


間もなく門が破られ織田軍の突入を許すこととなった。


頼朝は城門の後方であらためて陣を整え、狭い門からなだれ込む織田軍に対して、集中砲火を浴びせる。

頃合いをみて、太田道灌・犬塚信乃隊の騎馬隊が、侵入した織田軍を追い払う。


頼朝の予想通り、織田軍は波状攻撃を間断なく仕掛ける。頼朝軍は正面から押し寄せる敵勢に対して、奇策を用いる余裕もなく、戦線はじわりと泥沼の消耗戦へ傾きつつあった。



■頼朝・秀長、再配置の決断


秀長「頼朝様」


戦況を見守る羽柴秀長が進み出る。


秀長「突撃部隊(太田隊・犬塚隊)の消耗が無視できない状況となって参りました。深刻になる前に、彼らを犬山城へ戻して休ませ、代わりに大草の義経様、そして岐阜のトモミク殿を呼び寄せては如何でしょう。


徳川は武田が抑えておりますので、義経様による大草の防衛は不要となりました。

また、織田軍の主力は清州に集結している今、岐阜からトモミク隊を動かしても、大きな懸念はありますまい」


頼朝「しかし、秀長、それでは、我らの策が実行できなくなるのでは?」


秀長「それは心配ございません。ただ、作戦を実行できるかどうかは、この小牧山にてどれだけ織田軍を削れるかにかかっておりますゆえ……」


頼朝「わかった、秀長。そなたに任せよう」


秀長「は!ありがとうござりまする!」


挿絵(By みてみん)


織田の黒雲は、まだ清州から小牧山まで途切れる事は無かった。

信乃・道灌の奮戦の裏で、秀長は消耗部隊の温存と再配置を決断。

義経・トモミクが砦へ向かうとき、“竜”はなお火煙を噴き上げる。

次話は、砦内乱戦と“あの剣豪”再来をお届けします。

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