表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/117

3-3 切腹交渉と猫の報告

頼朝と北条早雲、ふたりの棟梁がついに胸襟を開く――。

未来を背負う北条の誇りと、過去を背負う頼朝の葛藤。交渉という名の檻の中、軍団の絆は、試される。

そして動き出す外交戦。景勝・武田との同盟は成るか?

今回は「未来と誇りの交錯」を描きます。

<北条早雲の心>


頼朝「早雲殿、お邪魔する。一度、ゆっくりと話したかった」


早雲「おお、これは頼朝殿。よく来てくだされた」


小牧山戦後の重い空気がまだ残る中、頼朝は北条早雲の居室を訪ねた。

早雲の怒りと苦悩を目にし、いずれは話をすべきだと感じていた。


早雲は頼朝が口を開く前に、悪戯っぽく笑った。


早雲「どうやら、わしの末裔たちは坂東で良い政を敷いておるらしいのう。孫の氏康、今の氏政も、難攻不落の関東をよく治めておるとか。頼朝殿も、そう思わぬか?」


頼朝「……早雲殿のお気持ち、お察しいたす」


その応答に、早雲は声を落とした。


早雲「実はな、頼朝殿……未来で、あの秀長の兄・秀吉が、わしの北条家を滅ぼすというのだ」


頼朝は静かに息を呑んだ。鼓動が高鳴り、膝がわずかに震えた。


挿絵(By みてみん)


早雲「織田の東進を食い止められれば、北条の滅亡も避けられる。そう信じて、わしはここに来たのだ。景虎の命も、我が一族の未来も、ここに懸けておる」


頼朝(この老将もまた、ただ己の誇りのためだけに戦っているのではない。未来を信じ、変えようとしている)


早雲「トモミク殿は、“歴史を大きく変えるのはならぬ”と言っておったが……わしにとって大事なのは、我が北条の血筋よ。がははは!」


頼朝「……早雲殿、感謝いたす。貴殿の信念、しかと受け止めた」


早雲「それにの、秀長という男、よい目をしとる。あれを育てるのも、わしの役目かもしれん」


他にも尋ねたいことは山ほどあるが、早雲との距離がわずかに縮まったと感じ、今日はこれで十分だと頼朝は思った。

頼朝は、その言葉を嬉しく感じながら深く頷いた。


挿絵(By みてみん)




<飯坂猫の報告>


その後、大草城は目覚ましい発展を遂げる。

城代となった飯坂猫いいさかねこが、那加城に報告に現れた。


聞けば飯坂猫は、少し未来からトモミクが呼び寄せ、将来の伊達家当主の側室であったと聞く。


(伊達家か……わしの遠縁・朝宗ともむねの子孫。奥州征伐の後、陸奥で勢力を拡大した一族……)


猫の報告によれば、わずか数カ月で軍団の収入は大幅に増え、多額の政策費をようやく賄える見通しが立ったという。全軍の商業収入のおよそ半分は、大草の新しい街からもたらされているらしい。


猫「猫にございまーすっ!」


元気よく名乗るその姿は、戦国の世には不釣り合いなほど明るい。


猫「おかげさまで、大草城は大繁盛です!織田・徳川領からも商人が流れてきて、税収もうなぎ登りですよ!」


頼朝「うむ、猫殿、大義であった」


猫「も~、“猫”って呼んでくださいよ、頼朝様!」


頼朝は苦笑し、「……では猫、引き続き任務を頼むぞ」と言い直した。


猫は小さく猫のポーズを取り、笑いを誘う。


頼朝(戦の世にありながら、なぜここまで朗らかでいられるのか……この軍団の不思議な結束の力だろうか)


頼朝「……引き続き、任務を頼むぞ」


猫「にゃっはーい!」


頼朝は、猫の後ろ姿を見送りながら微笑んだ。


挿絵(By みてみん)



<前田玄以と北条早雲の交渉成果>


やがて、羽柴秀長が北条早雲と前田玄以を伴い、頼朝のもとを訪れた。


玄以は元は比叡山の僧、今は頼朝軍で外交と調略を担う智将である。


秀長「頼朝様、前田玄以殿が、上杉家の樋口(直江)兼続との会見を取り付けてくれました」


玄以「上杉・武田、両家より内諾を得ました。いずれかが織田に攻められた際には、相互に援軍を出すという誓約です」


挿絵(By みてみん)


頼朝「なんと……大義であった、玄以殿」


早雲「景勝と兼続、なかなかの器量よ。わしもこれでようやく腹が据わった」


そして早雲は、にやりと笑う。


早雲「景虎の身に万一のことがあれば、秀長が切腹するという条件で話をまとめてきたぞ、がははは!」


秀長「そ、それは……!」


頼朝は思わず苦笑した。


挿絵(By みてみん)


(秀長の描いた外交の布石が、少しずつ現実となってきている。頼もしい家臣たち……今しばらく、彼らの力に賭けてみよう)

ご覧いただきありがとうございます!

北条早雲と頼朝の対話を通じて、「家」や「誇り」をめぐる想いを深めました。

そして、前田玄以による交渉と飯坂猫の報告により、内政・外交の両輪が動き出します。

次章では、いよいよ織田信長との再激突に向けた火種が……!

ご感想・お気に入り、大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ