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悪魔の系譜

かつて、巨大な力を持った悪魔の祖がいた。

偉大な神の元を自らの意思で離叛した。

なぜならその悪魔は神を超えたと自負していたからだ。

悪魔は神と訣別した。

ある時、悪魔の祖は子孫を造ることを思い立った。

偉大な自らを知らしめるべく己の子孫を生み出した。

その中の悪魔の一人。

中でも色濃く力を受け継いだが気まぐれなその悪魔は勝手気ままに一つの星へと降り立った。

その星にはまだ生物はいなかった。

その星の神はまだ活動をしていなかった。

神は星と共に静観していた。

気まぐれな悪魔は初めて神と交流した。

気まぐれではあったが自惚れてもいた悪魔は、自らは神と対等だと思っていた。

悪魔と神は永く交流した。

悪魔は満足していた。

それはまるで神の寵愛を独り占めしているかのようでさえあった。

自分の方が優れていると自負していたくせに、悪魔は神の寵愛を受け取って満足していたのだった。

その神は新たな形としてその星に人間を創造した。

悪魔は疑問だった。

自分というものがありながら、なぜ新たに人間などというものを創るのだ、と。

神はそれに応えなかった。

その代わりに創造した人間たちへ無償の愛を注いだ。

神は人間を視ていた。

悪魔は神との交流を辞めた。

神の寵愛を受ける人間に嫉妬した。

次第に嫉妬は憎しみへと変化した。

悪魔は悪魔を数多く生み出した。

魔王を唆し、人間を根絶やしにするように仕向けた。

神が生み出した人間の中から勇者が生まれた。

気まぐれな悪魔にとって、それは弱い人間だった。

とても魔王には敵わないだろう。

しかしその勇者は魔王を討ち倒した。

悪魔は魔王にひどく失望した。

何もかも、どうでも良くなって興味も失せた。

神が姿を眩ませたことがそれに拍車をかけた。

気まぐれな悪魔はしばらく大人しく、何の興味も持たないままに、ただ静かに時を過ごしていた。

さらに永い時が経った。

この星から出て、どこか別のところにでも行こうか、と、思い始めていた。

ある時、悪魔はかつての勇者の子孫を見た。

その身にあの神の輝きを見た。

それを見て嫉妬した。

人間の可能性に嫉妬した。

未だ続く神の寵愛にも嫉妬した。

もういないくせに…

…神が人を、勇者を創った。

であるならば、自分にも造れる。

より優れた人間を、より優れた勇者を造れる。

なぜなら自分はあの神よりも優れているのだから。

自分の方が優れている…それを証明して見せる。

何よりも優れた自分よりも、人間を選んだ神は…それを大いに後悔すればいい。

悪魔は人間を資料にした。

それはある意味あの神の手を借りるかのようにも思えたが…

あの神の形作った形のままでそれを超えるという案に思い至ったからでもあった。

同じ素材で、より優れたモノを…

一人の人間を利用し、勇者となる人間を形作った。

さらにそれを磐石にするためにも、自らを生まれ変わらせてその支援をすることに決めた。

気まぐれな悪魔は形作った悪魔に全ての力を注いで消えた。

全ては神の創造を超えた勇者を造るため。

そして、勇者と悪魔の双子が誕生する。

ことになるのだったが…この世界で、そうはならなかった。

なぜなら、その気まぐれな悪魔が二人を生み出すそれよりも前に見つけてしまったから。

本来はここにいるはずのない、勇者の姿を。


ある時、気まぐれな悪魔は不可思議な程に強力な魔力を感知した。

それは勇者が魔王のいた洞窟を消滅させた時だった。

悪魔はしばらくぶりに興味を持ってその地へと飛んだ。

かつて唆した魔王が封印された壺がある洞窟には、巨大な穴が空いていた。

「…でっか…それに深っ」

悪魔は穴の底へ入る。

魔王も壺も、何もかもが消滅していた。

魔力の残滓がその威力の大きさを物語っていた。

神の匂いがする…こんな力を持った存在がこの星にいた?

考えてみても思い当たらなかった。

悪魔の長い時を振り返っても思い当たる節がなかった。

魔王を討伐したかつての勇者でさえこれほどの力は持っていなかった。

気まぐれな悪魔はこれを行った存在にひどく興味を持ち、それを探し出すことにした。

そして…ついに見つけた。

その人間はこの地でも比較的巨大な力を持ったドラゴンを難なく討伐していた。一人で。


あれは…何?

ワタシの力を感じる?

悪魔はその人間の中から自分と同種の力を感じ取っていた。

…間違いない。あの人間の中にはワタシの力そのものとも呼べる力を感じる。

なぜ?

そればかりか、この異常なまでの魔力は…人間個人の持つ力を遥かに凌駕している。

それに…神の気配がする…

「?」

その人間が視線を向けてくる。

悪魔は透明化によって姿を眩ませていた。

……この距離で消えたワタシにも気づく…面白い…おもしろいぃ…

…もっと近くで、観察したい。

もっともっと近くで…


悪魔は姿を変えた。

悪魔の興味は全てその人間個人へと向かい始めていた。

久しぶりの高揚感が胸を高鳴らせていた。

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