生きてたふたりの姫
遥か彼方から落下する。
落ちてからどのくらいたったのだろう。
まだ落ち続けていた。
「下には何があるのか知ってる?」
「ボクは知らない。城から出たの初めてだから」
「…そうか」
黒姫は少し震えていた。
不安か、怖さか、どちらにしろ、似たようなものだ。
下を見る。下には白い雲がまだ広がっている。
また何度目かの雲を抜ける。
「…海だ」
「わぁ、すごく青い。綺麗…あれって、水?」
「そうだねぇ、それに、下にも世界は普通にあったんだ…」
遠くには陸地らしきものも確認できた。結構な大陸がある。
見覚えは…無いな。まあ、それもあてにできるのかはわからないが。
「このまま落ちたら、無事では済まないだろうなぁ」
「…うん」
「しっかりつかまってて」
「どうするの?」
「まあ、何とかなると思うよ。 …違うか、何とかするよ」
「…わかった」
ぎゅっと捕まる手に力が入る。
さて…
「ちょぉっとぉ〜〜〜」
遠くから声がする。
「待つんですの〜わたくしも助けてくださいまし〜」
白い影が空の彼方からすごい勢いで近づいてくる。
「げっ、おまえ、なんで…」
黒姫は心底嫌そうな表情をしていた。
「…誰だ?」
「ちょっとぉ、わたくしですわ。白い城の城主ですわ!」
「何しにきた! お前じゃまだぞ」
「まあまあ、それで、どうしてここに?」
「ちょっとちょっと、何しにきたじゃないんですの! あなたが、わたくしの城を吹っ飛ばしたんでしょうが!! わたくしもろともに!! このままだとわたくしお陀仏ですのよ!! あなたの!! せいで!!!」
「…ああ、そう言えばそうだった、よく無事だったね?」
「無事じゃね〜んですわ! 今まさに危機なんですわよ!! 助けてくださいまし!!!」
「…まあ、仕方ないか」
「…うえぇぇ」
「嫌そうにしないでくださいまし!! お願いしますから!! このわたくしが、お願いしているんですのよ!!!」
「とりあえずふたりともしっかり掴まってて、絶対に離れないように」
「うん」
「…わかりましたわ」
白と黒の姫がそれぞれに掴まってくる。
しがみついていると言ってもいいだろう。
海面まではもう少しある。
両手に魔力を込める。
ある程度、大きめに。
使う魔法は火で。海面に向けて爆発させるイメージだ。
もう少し、もう少し。
「ふたりとも、離さないでね」
「「っ!!」」
火魔法 大
ードッゴォオオオァァァ…ー
凄まじい爆発によって三人は塊となって別方向へ飛ばされる。
これで落下の速さは多少抑えられた。
後は、
「ああ、なんだかとってもあったかい」
「…これって…」
二人を抱きしめながら回復魔法をかけ続ける。
不足の事態になったとしても、最悪は避けられるだろう。
後は海水に落下したらひたすら陸地を目指して泳げばいい。
陸地を視界に入れて方向を確認しながら海へと落ちる。
「「「ぷはぁ」」」
「二人は泳げるの?」
「…わからない」
黒姫は申し訳なさそうに。
「無理ですわね」
白姫は自信満々にそう言った。
「…そう、まあ、それならこのまま掴まっていて、騒ぐと溺れるから、それだけは気をつけてね」
「わかった」
「わかりましたわ」
陸地を目指す短い旅が始まった。
思いついたら続けます。