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白と黒の姫  作者: こうじ
2/5

洗脳はされない

「…やったの、か?」

「姫様! ああよくご無事で、そして何よりですじゃ、うまくいきましたな」

「…」

「…うん。でも、助けられた」

「そうですな、この者には特別な称号として、黒の騎士を授けるとしましょうぞ」

「いいな、それ、そうしよう! そしてボクのものだ!!」


…勝手に話が進んでいく。

でも、うん。

どうやら何ともない。

まあでも…


「姫、これから自分はどうすればいいでしょうか?」

「ああ、うん、ボクの側にいれば良い! それで良いから!! あとは自由にしていて良いよ」

満面の笑みでそう言ってきた。

「…そうですか」


騎士とは…まあ、とりあえず争い事が終わったのならそれで良いか。

後片付けを手伝い、ひとまずはこの城を根城にすることに決めた。

そして戦う以外にやることがない。

戦っていれば騎士としての仕事は十分だと思う。

ただ、本当に戦っているだけだ。

毎日、毎日。

朝も、昼も、夜も。

…みんなよく飽きないな。

でも自分だって前からそうだった気もする。

昔からずっと戦っていた気がする。


「どうした? 疲れたか?」

「いえ、戦いにはなれているので」

「そうだろうな! お前は強い! 本当に強い!!」

「はは」

「ずっとボクといれば良いよ、それで何も問題ないよ」

「…ええ」


とある一室。

「姫様、どうかされしたか? 最近、少し元気がないみたいですぞ」

「…うん、爺や。ボク、洗脳したの、良くなかったかな」

「かの騎士のことですかな、姫様としては、一緒に居られるのであるのなら、それで良いのではないですかの?」

「…うん」

「あのまま戦っていては、いずれ別れることにもなりましょう、ただでさえ、白姫との戦いがあるというのに、もしかすると、白姫の方に」

「それは嫌だ! 絶対に嫌だ!」

「まあ何も心配いりますまい。少なくともこの城が落とされることはそうそう無いですじゃ」

「…うん」


まあ、普通に聞こえているんだけども。

しかし、どうしたものだろう。

まず、なぜこんなにも好かれたのか分からない。

誰かを好きになるということがわからないだけなのかもしれないが。

ここまで想われると、重歯痒いと感じてしまう。

城の最上階まで登りながら考える。

外壁をさらに登り、本当に城の天辺に立つ。


「…届くか? もしかして」


ここから飛べば白の城に届くんじゃないか?

いや、流石に無理か? うーん…


「…試すか」


足に力を込める。

魔力は、手に、火。

これでさらに距離を稼げそうだ。

夜空を駆けた。一筋の炎が。

そしてその矢は、白の城に届いたのだ。


「…意外といけるんだな」


回り道をせずに、最短距離で。

まあ少しずるをしたような気がしなくもないが、できるのならそれはそれでいいだろう。


「な、何者!!」

「ど、どこから!!」

「き、貴様はあの黒の騎士」

「何、こいつがあの?! 噂のやつか!!」

「まさかここまで攻め入るとは、姫様を守れ!!」

「出逢え〜出逢え〜」


ぞろぞろと出てくる兵士たち。

なるほど確かに大勢いる、これでは戦いはそう簡単に終わらないわけだ。

でも。


「これでもう終わりにしよう」


空中に浮かぶ白い城。

その浮沈の城に、稲妻が落ちる。


雷呪文 極大


全てを飲み込むその光によって、落ちるはずのない浮沈の城が、落ちていく…

全てを一緒に、何もかもを、一緒に。

それはもう片方の城からも見ることができた。


「ああ、あれは! あの光は、どうして!」

「姫様! ダメですじゃ」

「嫌だ、嫌だ! 一緒に! ボクも一緒に!!」


ああ、泣いている。そんな姿が見えてしまう。

目も耳も人より少しいいから。


「何で! 何で!! あぁっ!!」


目が合う。目が合った。

落ちていく間の、僅かな時間に、お互いの目が合う。

君は生きて。そのまま生きて。


「…ボクも…ボクもっ!!」


飛び降りる姿が見えた。

…いや、何でだ。

その姿を見たとき、落ち続ける石の塊を足場に飛ぶ。

届くか?

いや、届くだろう。届かないと。

届かないとっ!!


「…何、してるんだ?」

「…だって、だって」

抱きとめることはできた。

ただ、これでは。

「落ちていくだけだよ」

「…いい、いいよ。お前と、一緒なら、いい」

「洗脳したこと気にしている? それなら気にしなくていいよ、何もされてないから」

「えっ?! じゃあなんで、こんな…え、ならどうしてボクの城に…」

混乱させてしまったようだ。

「何か、恩返しがしたかったのかもしれない。自分を好きになってくれた相手に」

「…恩返しなんて、いらないのに、いらなかったのに」

「戦いが終われば、それがなるかなって」

「お前がいなくなったら、何の意味もない、ないよ!」

「…そうか。それは考えなかった」

「…ボクと離れても、平気だったの? ボクのこと、好きじゃない?」

「…わからなかったんだ。誰かを好きになることって」

「…ならどうして一緒にいてくれたの?」

「どうしてだろう。外見が好みだったから? 内面は知らなかったからね」

「今は違うの?」

「今もそうかも。ただ、今は内面も大切になっているかもしれない。だから、終わらせたかったんだ。戦いを」

「…そう」

「戦いのない世界で、のびのびと、自由に過ごして欲しかった。ただ、それだけの理由だったんだ」

「…うん」

「できることをした、それだけ。でも、ごめん。今思えば少し身勝手だったかも」

「…許さない、から。だから、ずっと、ずっと、離さないで」

「…わかったよ」


落ちていく。

どこまでもどこまでも落ちていく。


二人の落ちた先を知るものは、いない。

ただ、それでも、最後まで。

二人は一緒だった、事だろう。

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