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大陸和平記念ぶとうかい

見慣れた小竜に乗って見慣れた夢魔サキュバスが親しげに手を振ってやってくる。


「今日は、いったい何の用事かな?」

「よいしょっと…はい〜、あなたの夢魔ラマンですぅ。お久しぶりですねぇ」

「ついこの間だった気もするけど」

「そんなことないですよ〜、本当なら私は毎日だって会いたいんですからぁ」

「それで、今日もまた吸血姫のところへ?」

「いえいえ〜、今日はですねぇ、別のところに一緒にきてもらいたいんですぅ」

「へぇ、それはどこになるの?」

「魔王城ですぅ」

「魔王城に?」

「はい〜、勇者様はなかなか訪れてくれないので〜、迎えにきちゃいましたぁ。というのは半分冗談で、実はちょっとしたイベントが、お祭りがありまして〜、ぜひ、勇者様にも参加してもらいたくてきました〜。あ、魔王様にはきちんと許可をいただいていますので大丈夫ですよ〜」

「お祭り、か。それは楽しそうだね、何なら他のみんなも」

「この小竜は一人乗りでして〜、今回は勇者様のみの参加でお願いしますね〜」

「…やっぱり一人乗りだったんだね」

今まで二人で乗るにはちょっと狭いと思っていた。

「あ、でもこの子は二人まで大丈夫ですので〜、その心配もいりません〜。ねぇ?」

小竜は頷いている。頷かされているのだろうか…


…小竜も、苦労しているのかな。

「これ、食べる?」

勇者は懐から干し肉を出して小竜に差し出した。

「♡!」

小竜は喜んで食べた。ついでにツノのあたりを撫でるとさらに喜んでいた。

「ちょっと〜、私の目の前でいちゃつくのやめてもらっていいですかぁ? 嫉妬でおかしくなりそうですからぁ」

そういう夢魔の目は少し怖かった。

「ではでは〜、出発しましょうか〜。いざ、魔王城へ〜」


「それで、どんなお祭りがあるの?」

「はい〜、魔王様がこの大陸に安定をもたらした記念の、武闘会を開くんですよぉ」

「舞踏会? 踊りとなると…久しぶりすぎてきちんとできるか心配だなぁ…服装もこのままでよかったの?」

「ああ、いえ、踊る舞踏会ではなく、戦う方の、武闘会ですので〜」

「…なるほど、しかし、武闘会か。魔族はみんな戦うことが好きなの?」

「それは魔族ですので〜、強者以外に人権はありませんねぇ、というのは、いまは昔の話でしてぇ、先先代の魔王様がこの大陸を治めた時、だいぶそれも変わったんですよ〜。そのあり方を確立したのは先代の魔王様なのですけどね〜。それからは武闘派ばかりでもなくなって、知識派も多いですねぇ、私みたいなぁ?」

「大会は毎年?」

「不定期ですね〜、その辺りは、みんな結構気まぐれですしぃ。武闘派の皆さんが戦いたくなった時に、言って見ればガス抜き、みたいなものも兼ねていますね〜」

「…なるほど」

「それでですねぇ、勇者様に参加してもらいたいんですよ〜。あ、私の推薦で参加登録はしておきましたぁ。こう見えてそれなりの地位にいますので〜」

「…いきなりだね」

「はい〜、ぜひぜひ、勇者様のご勇姿を〜。他の魔族の皆さんにも見せつけ、いえ、見てもらいたくてぇ。勝手に登録しちゃいましたぁ」

これで勇者様の力を目の当たりにしたら、きっと支持者も増えますぅ。ファンも増えますぅ。

「…それって辞退とかは」

「できますけどぉ、魔王様も楽しみにしていらっしゃいましたしぃ、推薦した私の面子の為にもぉ、お願いしますぅ。そのお礼に、私、何でもいたしますからぁ、はい、何でもですぅ」

「…そこまでしてもらわなくてもいいよ、わかった。魔王には世話になったし、そうだね、お祝いのつもりで、参加するよ」

「ありがとうございます〜」


魔王城、その城下町へ向かう。

大きな球状型の会場ができていた。

「魔力でできていますので〜、かな〜り、頑丈になってますよ〜。特に今回は特別製でして〜。心置きなくやっちゃってくださいね〜」

「壮観だね、へぇ、出店なんかも、結構出ているんだね」

「う〜、本当は一緒に回りたいんですけどぉ、私、準備がありますので〜、魔王様たちにも伝えてきますね〜。勇者様は自分が呼ばれるまでは会場内で自由にしていてください〜。あ、勇者様は特別参加枠の一人として予選がありませんので、しばらくはご自由にどうぞ〜。はい、これはお小遣いですぅ」

可愛らしいがまぐちからお金を取り出すとそれを渡してきた。


「いや、流石にそこまでしてもらうのは悪いよ」

「とんでもないですぅ、このくらいじゃ全然足りないくらいですよ〜。勇者様には色々と協力をしてもらってますしぃ、これからもお願いするのでぇ。遠慮しないでもらってくださいぃ」

お金を押し付けるようにして行ってしまった。

「らっしゃいらっしゃい、うまいよ〜。お兄さん、一本どうだい?」

「それじゃあ、いただこうかな」

…何の肉の何処の部位だろうこれ?

…でも思いの外美味かった。


出店を食べ歩いていると、ようやく見慣れた食材に出会うことができた。

「お、お兄さん人間だね、ならこいつはどうだい? とびっきりの魚でね。こいつぁなかなか手に入らないもんでね、最後の一本だよ」

「いい匂いだね、いただこうかな」

支払ってその焼き魚の串焼きをもらう。

何処かで休んで食べよう。


「それにしてもすごい活気だな」

魔族ばかりではなく、獣人や魔獣、人間、エルフ、あらゆるものたちが分け隔てなくいる。

魔王城下町というと、魔族ばかりいるものかと思っていたが、

争いを治めたというのは、その時の魔王は本当にすごいことをしたんだな。

こういう形での世界制覇なら、それは支配とはまた違った形なんだろうな…

魚を口にする。

美味い。本当に美味い。

ジューシーで身に脂もかなりのっている、それなのに全くくどくない、上質の肉質と脂。

貴重だというのも頷ける味だった。

「にゃ〜ん、にゃ、にゃ、にゃ〜ん」

いつの間にか猫が隣にいて物欲しそうにねだってきていた。

「食べる?」

「にゃにゃ〜んっ!!」

すごい勢いで食べてしまった。

…まあ、いいか。

満足気な猫を撫でていると、呼び出しの声が聞こえた。

どうやら試合が始まるようだ。


「勇者さんですね、どうぞ、間も無く本選第一回戦となりますので、控え室でお待ちください」

「はい」


控え室にて呼び出されるのを待つ。

外からは何試合か行われているのだろう、時折大きな歓声が聞こえてきた。


「それでは、会場にどうぞ」


勇者は武闘会場へ、

会場内はやはり広い、

自分の立つ闘技場舞台は広い円のようになっていたが、離れた場所にも同じような舞台がいくつもあった。

それぞれに結界が張ってあるようだ。それも、かなり強力なものに見える。

何回戦かを同時に進行していくためなのだろう。

…それにしても、改めて見回っても規模がすごい…さすがは、伝統ある現魔王お墨付きのお祭りなだけはある。


「両者、こちらへ」

「…」

勇者は舞台へと向かう。

相手は…

「にゃにゃ〜ん、あれ? さっきの人間だにゃ!」

「猫の、獣人?」

頭の上に耳、尻尾もある。

「そうだにゃ。猫獣人、猫娘だにゃ。とってもプリチィにゃ?」

「…先ほどのあの猫?」

「お魚ごちそうさまでしたにゃ! 撫で方も優しくてウチ結構キミの事気に入ったにゃ? でもでも、勝負は勝負、勝ち負けは別、にゃ! 魔王様直属の四強でもあるウチに、手加減という言葉はないにゃ!」

四強、と言うことは他にも三人いると言うことか…その内の二人はあの犬の獣人と夢魔なのだろうか…


「それでは! 試合始め!!」


猫娘は素早く勇者の後ろへ回る。

「にゃにゃ!!」

鋭い爪の一撃。

「速いね」

それを剣の腹で防ぐ。

「やるにゃ! でも、ウチの速さはまだまだこんなもんじゃないにゃ!!」

さらに速さをあげて動き回る。

「…速さに自信があるんだね」

勇者はその動きを目で追う。


猫娘は攻めあぐねていた。

どれだけ速く動いても、勇者の目線に捕らわれる。

離せない。

死角をつけない。

どう動いても、最初のように後ろへは回れない。

「にゃ」

魔王様直属として、俊敏さでは誰にも引けを取らない自負がある。

それであるのに、全然…


「…それなら」

勇者は雷の魔法を強化として自身に使った。

雷魔法 雷行


「にゃ?!」

勇者が視界から消えた。

首の後ろに、勇者の剣先が触れていた。

見なくてもわかるほどの魔力を纏って、勇者は背に立っていた。

全身が総毛立っているのがハッキリとわかった。

こりゃ絶対勝てないにゃ…

「…降参するにゃ」

猫娘は敗北を認めるしかなかった。

気づけば敗北のポーズ、服従のポーズをとっていた。


「勝者、勇者!」

歓声とともに驚きの声も聞こえてくる。

「あれが、噂の勇者か」「速い、見えたか? 今の動き」「魔王様に勝ったという噂、本当かもしれないぞ」

「「「あなた様〜、お見事です〜、さすがです〜」」」「ちょっとあんたたち、もっと静かにしなさいよ! 恥ずかしいでしょ!!」

…途中、聞き覚えのある声も聞こえてきたが、ひとまずは次の戦いを待つため、控え室に戻った。


観客席にいる夢魔。

「ふふふ〜、ああ、いいですぅ、本当に、お見事でした〜」

「…ったく、速さで負けてど〜すんだよ。しかも最後のあの姿…同じ獣人として恥ずかしいぜ」

ただし自分が同じ立場だった場合、その限りではない。

「一回戦で負けたのはあなただって同じでしょう〜?」

「つっても、俺もアイツも、相手が悪すぎだっての。 …勝てるわけねぇ。悔しいけどな。よりにもよってどっちも特別枠だとはな、俺もアイツもついてねぇ〜ぜ。あ〜あ、今回は結構いいところまで行けそうな手応えだったんだけどなぁ」

「まあまあ、次の戦いを待ちましょうか〜」


「両者 こちらへ」


「我の二回戦の相手は、ほう」

「…もう魔王なんだね」

「それはお互い様、というやつだな。くく、できれば決勝でまみえたかったが…なに、結局は同じ事よ」

「戦うのは、久しぶりだね」

「あの時よりもお互い成長したか? くは、楽しみだなぁ!」

「随分と、魔力が上がったね」

「当然、何もしないわけがなかろう! 我は一度敗北しておるのだ!! 魔王に二度目の敗北はない!!! …ましてこの祭り、この地は魔王城である。さあ、我を楽しませよ! 勇者!!」


「試合、はじめっ!」


「手緩い馴れ合いはいらん、初めから全力で行くぞ! 我の全力、見せてやるわ!!」

魔王の魔力が増大する。

その黒い魔力は、この広い舞台を覆い尽くさんばかりに広がっていった。

そしてそれは雷の質を帯びてきていた。

「…楽しみだね」

勇者もまた、つられるように魔力を高めていく。

黒い雷を纏う魔王と、同じく雷を纏う勇者、

両者の目にも留まらぬ攻防が始まった。


「な、なんだいったい、何がおきてんだ…」「速すぎだろ…」「今、何かしたか? わからねぇ」「ただ、とんでもねぇ戦いだってのはわかるぜ」「きゃ〜、頑張って〜、魔王様〜」

「「「素敵です〜、あなた様〜。我らが光〜」」」「ちょっと、あんたたち、闇の眷属であるのに光ってどういうつもりよっ!! バカなのっ?! …お姉様頑張って! …アイツも、まあ、その、せいぜい頑張るといいわ!」

観客達の盛り上がりは最高潮に達して行く。


「くく、我のこの速さにさえ、ついてこれるか…今度こそ、我の勝ちだと思ったんだがな」

「…そう簡単にはいかないよ」

「それでこそ勇者よ! ああ、やはり我を楽しませてくれる!!」

「魔王の方もね」

両者は自然と笑っていた。


しかしやはり、魔力の総量では未だ勇者が優っている。

その質、量ともに、まだまだ差があった。

次第に魔王は押されて行く。

勇者は魔王に疲れが見えた時、

一気に勝負に出た。

舞台を覆う黒い雷ごと、いや、

舞台ばかりか、ここの空間ほぼ全てを、自身の魔力で包み込む。

「この、魔力! 我とは、まだこれほどの差があるというのか!」

魔王はその様に驚愕していた。

「…終わりにするよ!」


勝敗は決した。

「勝者 勇者!」

そう告げられた。


観客達は驚きを隠せず静まり返っていた。

優勝候補筆頭であった魔王の敗北は、それほどまでに衝撃だった。

「くく、また我の負け、か。悔しいな、実に、悔しいぞ」

「…魔王も、前よりずっと強くなってたよ」

「我は魔王ゆえ、な。そうなんども敗北してなるものか。そもそも、負けても負けても挑むのは、勇者の方であるべきなのだぞ?」

「確かに、それはそうだね」

二人は笑いあって握手をする。両者を、讃えるかのように。


観客達はその姿に感動し、沸いた。

会場を壊しかねないほどの歓声が響いていた。


「あらあら、それならあなたの次の相手は私、ですね」


舞台袖に、一人の女性が立っていた。


「お母様!」

魔王はそう言った。


「負けてしまいましたね。でも、強くなりましたね。それに、いい戦いでしたよ? …それにしても、そうですか、あなたが、この子達の言っていた、勇者、ですか」

女性は笑顔で言っている。

ただ、その身の回りを纏う魔力は強大だ。

「…魔王のお母さんということは、先代の魔王?」

「ええ、その通りです。ふふ、楽しみですね。勇者と戦うのは、私も、魔王であった時代を含めても…はじめてになりますから、ね」

魔力が弾ける。

そのあまりの魔力にあれほど騒がしかった会場は再び静まり返っていた。


「おいおい、妙に強い魔族がいると思ったら、先代魔王だったのかよ」「先代って、確か、魔法の天才だったとか…」「だから、俺が先代の魔王様に勝てるわけねぇんだよ。誰だよ推薦したのは…」「誰でしょうねぇ」「勇者と先代魔王が戦う? こりゃあ、見るっきゃないでしょ」


「三回戦 はじめっ!」


「ええ、勇者、本当にあなたは、勇者なのですね」

目を細めて勇者を見る先代魔王。

「…」

勇者もまた、その目を離さない。

「ああ、身の昂りを感じます。本当に…これが魔王と勇者の邂逅…これが私の時代であったなら…ふふ、でも。今、こうしてまみえたこの、この事実に感謝いたしましょう」

先代魔王の魔力がさらに高まっていく。

…魔力は今の魔王、明らかにそれ以上。

「ふふ、ふふふ。ああ、なんと嬉しい…勇者。私も元魔王です。勇者相手に、手加減はいたしません。私の全てを、その身に受けなさい」

黒い魔力がその身から暴発する。それは荒々しく会場を覆い尽くす。

「これは、あの時の魔王の…」

しかし、あの時とはその魔力は桁違い。


闇魔法 雷冥らいめいきわみ


その威力に、頑丈な会場は観客席をのぞいて半壊した。


「…素晴らしいですね。これを受けても、無事なのですね?」

「…まあね」

威力で言えば、雷魔法の大、以上…

何回もまともに受けたら、流石に痛手になるかな。

「…ふふ、何をしようとしているのですか?」

「…ん、せっかく、だから。さっきの雷のお礼を、ね」

勇者は魔力を高める。

高める、さらに高める。

「…ああ、なんて魔力…これが、勇者の…いえ、あなたの…」

先代魔王は思わず見惚れている。


雷魔法 極大(手加減)


その雷は会場を結界ごと完全に破壊していた。


「…やっぱり難しいな」

「…なんて、なんて威力なのでしょう…私自ら手伝った、自慢の結界をこうもたやすく破壊してしまうなんて」

しかも、手加減して、これだと言うのだ…先代魔王はうち震えていた。

「…あ〜、と、その、降参するよ」

「…なんて?」

「もともと、参加することが目的だったし。それに、会場をこんなにしてしまった責任もあるし、ね。降参します」

「…」


「勝者 先代魔王様!」


全壊した舞台のこともあり、

ひとまずこれで武闘会の幕はおりた。

優勝者のいない今回の武闘会ではあったが、その影響は計り知れないほどのものがあった。



「ごめん、壊してしまった…せっかくのお祭りだったのに」

「いえいえ〜、武闘会は大盛況でしたよぉ。むしろ、お釣りがくるというものですぅ。舞台は次の武闘会の時にでもまた作ればいいんですから〜」

「そう言ってくれると、助かるよ」

「むふふ〜、本当のことですからぁ。あ、みんな来ましたね〜」

「お、おつかれ」

「ん? ああ、吸血姫もきてたんだね」

「ま、まあね。せっかくだし。あんたが出るって聞いてたから、あ、お母様もね。まあ、その、応援ぐらいはってね」

「ありがとう。他のみんなも楽しんでもらえたかな?」

「「「もちろんです! あなた様!! 我らが希望の光!!!」」」

「だからそれやめなさいっての! 全く、私が魅了上書きしてあげるわ…って、できない…全然効かなくなってるじゃないの…何これ…なんであんたたち耐性が上がってんのよ」

「「「全てはあなた様のおかげです!!」」」

「いや、意味わかんないんだけど、ねぇ、どうなってんの?」

「はい〜、どうやら勇者様以外の魅了が無効化されるようですねぇ〜、単純な耐性で言ったら、完全耐性に限りなく近い、と言うか、場合によっては私よりもあるかもしれませんねぇ」

「な、なんでよ、どうなってんの?!」


「ふむ、お疲れだったな。見事な戦いであったぞ! 我のお母様と、あそこまでやりあえるとはな!」

「ふふふ、本当に。あなたなら、きっと魔界にきても楽しめますよ?」

「魔界?」

「ええ、私たちの故郷ふるさとであり、今の私の、これから帰るところですね。 …あなたもご一緒に、どうですか?」

「いや、今は遠慮しておくよ。 …帰る場所があるからね。待っている人たちも」

「ふふ、いつでもいらしてくださいね? 歓迎しますよ。ああ、娘二人も、これからも、どうぞよろしくお願いいたしますね」

「それはもちろん、こちらこそ」

「ふふ、どちらが連れて帰ってきてもいいように、待っています。 …もちろん、一人できても、いいんですよ? いつでも、ね?」

最後は悪戯げに、元魔王らしい笑みで、そう言った。

吸血姫はその言葉を聞いて焦っていたが…


「ふふぅ、本当にお疲れ様でしたねぇ。ありがとうございました〜」

「いや、いい経験になったよ」

「そう言ってもらえると、私も嬉しいですぅ。魔王城にしても、城下町にしても、また、いつでもいらしてくださいねぇ?」

「…そうだね」

「あまり遅いと、また迎えにきちゃいますので〜」

「はは」

飛び去っていく小竜と夢魔に向かって手を振る。


さて、それじゃあ宿に、戻るとしようか…



「あぁ、本当にぃ…素晴らしい日でしたぁ…」

先代魔王様にも認めてもらえましたしぃ、勇者様の試合を見て強火ファンもかな〜り増えましたぁ。

(あの、ここでファンクラブに入れますかにゃ? よかったにゃ〜、はい、お願いしますにゃ、永年払いで、はい…)

もうファンクラブへの連絡が追いつかないくらいです〜。増員しておきましょ〜。

確実に…着実に…進んでいますぅ。


…夢魔は身悶えながら、嬉しそうに嗤っていた。

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