ろくでなしの愛
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
江戸川乱歩著 人でなしの恋 のネタバレがふわっとあります。
注意事項2
恋愛です。R15です。
苦手な方はご注意下さい。
というか、耽美奇譚です。
私という生き物は、その特性上、気が多い。合意であれば誰であろうと手が伸びる。其れが二十歳を越えない少女であっても、旦那の待つご婦人であっても、関係なく。
それでも最後に脳裏を掠めるのは、私を待ち続ける美しい顏の女性である。
遊び人と夜を共にした時の事である。彼は私の真横で添い寝をしながらも、決して私を見てはいなかった。その夢から覚めた様な瞳は、想い人では無い私を見て、酷く失望している様だった。
「最近、江戸川乱歩著『人でなしの恋』を読んだのよ」
粗筋を端的に述べると、結婚した旦那の浮気を疑って、真相を突き止めたら、浮気相手は人形だった。という話。これ程までにこの夢魔を表す小説があるだろうか。
「そう。作品を僕に当て嵌めるなら、それ程似合った物はないだろうね」
彼も私と同じ事を考えた様だった。女の様な艶のある顔を歪めてコロコロと笑った。そうして改めて実感する。この前に居る夢魔は、誰と番おうとも、あの美しい人形こそが最愛なのだ。あの生き人形には敵わないのだ、と。
彼は一頻り笑った後、また徐に口吸いを施した。強く強く吸い付いて、歓迎する様に割開いた口腔に舌を捩じ込む。まるで気を紛らわすかのように性急で、荒っぽい口付けだった。
そうして腕が背中に周り、酷くやわこい素肌を滑る。私の体付きを確かめている様だった。
「こうして口付けする度に、抱き締める度に、肌を合わせる度に、僕を待ち侘びる美しい人形の顔が脳裏を掠めるんだ。そうして実感するんだ。『あぁ、僕は彼女をどうしようもなく愛しているのだと。目の前に女人が居るにも関わらず、彼女を求めてしまうのだと』」
「最低」
その言葉を口にした割に、言葉は柔らかさを保っていた。『馬鹿だなぁ』と呆れながらも愛しむ様に。それは前に居るのが、どうしようもないろくでなしで、人外で、そうする事でしか愛を確認出来ないからかも知れない。哀れな人。浮気を繰り返す事でしか、愛を確認出来ないなんて。
彼は私と合わせた唇を味わう様に舌なめずりをすると、辺りに散らかした衣類を纏い始める。もう全ては終盤なのだと察した。
「さようなら、緑川胡蝶。次は何時遊んでくれるの?」
「彼女が乾いたら。彼女の頬が冷たくなったら」
ほら、結局、あの人形を愛してる。
最近、江戸川乱歩著 人でなしの恋 を知ったんですよ。
そしたら余りにも胡蝶だったので、書かせて戴きました。
胡蝶は人外です。その特性上、物凄い浮気性です。
最愛は『早苗さん』という生き人形ですが、気の多さも相まって、浮気を繰り返します。
そうして誰かと番っている時、早苗さんの顔が横切る事で愛を確かめるんです。
目の前に女人がいるのに、僕は早苗さんのことばかり考えている。
こうすることでしか、早苗さんの愛を確かめられないんですよ。
クソほどろくでなしですが、嫌いじゃないキャラです。