【閲覧注意】着信履歴
当時僕は、神奈川の田舎で2階建の一軒家に父、母、祖母、1歳になる弟と5人で暮らしていました。
小学1年生になった当時は、まだ携帯やパソコンなどはあまり普及しておらず、テレビもブラウン管型で、家庭用の電話が親機と子機に分かれてる時代でした。
電話機は家族で共有していたので1階に電話の親機を、2階に子機を置いていました。
その電話機は古いモデルでなぜか子機の方が先に着信を受けると光ってその後に少し遅れて音が鳴るので、
電話が来ると音が鳴る前に受話器を取り上げることが当たり前になっていました。
僕と母、弟は2階の一部屋を寝室にしていて、電話の子機も背の低いタンスの上に置いてあったので布団に入ってから毎日黄緑色に光る充電ランプをぼんやり眺めながら寝ていました。
ある日の夜、いつものように黄緑色に光る電話子機を眺めながら眠りにつこうと思って布団に入ったもののなぜか無性に眠れなくなり、その日は体感にしておよそ2〜3時間くらい電話の黄緑のランプを眺めていました。
時計はうっすらオレンジのバックライトで時間がかろうじて見える程度で、確か深夜2時を回っていたころ、
突然電話が光りだし、「え?こんな真夜中に...?」と幼いながら違和感を感じたのを今でもハッキリ覚えています。
その直後、なぜか普段より早く音が鳴り始め、電話子機独特の着信メロディが流れたのですが、直感で今出てはいけない気がしてしばらく受話器を眺めていました。
母も弟も起きる気配はなかったので、いたずらかな?と思いつつそろそろ寝ようと思っていたら今度は1階の祖母が寝ている部屋で鳴り出しました。
うちの電話は子機が先に鳴るので不思議なことではなかったのですが、それぞれで鳴るのは変なんです。
いつもは子機が鳴り出したら、受話器を取るまで放置すると、メロディが一周鳴り終えてから親機の音が遅れて鳴るはず。
誰も受話器を取ってないのに子機は電話が切れて親機が鳴るなんて...。
そう不思議に思っていると、1階の親機は止まり、誰かのいたずらだったのだろうと自分を納得させようと目を閉じた直後・・・
また子機が鳴り出したのです。
これにはかなり驚きました。
さすがに母を起こそうか考えましたが、もう真夜中の2時30分をこえていたので迷惑かと思い、電話が鳴り止むのを待ちましたが、今度は親機も同時に鳴り始め、
さすがにその音で祖母が電話を取ったようで、小さく「はい...もしもし...」と聞こえてきました。
しばらく祖母が話をしている声が途切れ途切れ聞こえてきて、
「えぇッ!?」
と、深夜の静まり返った家の中全体に祖母が驚く声が響きました。
その声に驚いた弟が泣き始め、母が起きて弟を抱っこしてあやしながら1階にいる祖母の元へ行きました。
その電話は、祖母の父であり、僕の曽祖父の死を知らせるものでした。
深夜でしたが緊急のため一度母に起こされ、仕事で朝早い父をのぞいて1階のリビングに集まり、これから曽祖父が亡くなった北海道へ行くこと、
葬儀のこと、学校を休むこと、遠方まで行くので旅行の支度をすることなどを母から言われ、
2階に戻って自分のリュックに着替えなどを詰めていた時、ふと子機を見ると着信履歴1件の表示が。
古い電話タイプだったせいか、親機と子機、それぞれの受話器に着信が来た時は両方に着信履歴が残る仕組みだったため、子機をなんとなく無意識に見て異変に気づきました。
「あれ?夜中に2回鳴ったよな」
1回目の着信は僕以外気づく人はおらず、2回目は祖母が1階で受話器を取ったため、2回の子機には2件着信履歴が残るはずだったのです。
少し気味が悪くなった僕は念のため、1階の親機の着信履歴を確認すると同じく1件で、受話器を取った時に表示されるマークもついていました。
しかし履歴をさかのぼってみてもあの深夜2時頃の着信履歴が残っていなかったんです。
そして曽祖父が亡くなった時刻はちょうど履歴のない着信があった、「あの時間」と一致していました。
その事実に気づいたあとも不思議と怖くはなく、曽祖父が僕に会いに来たのかな?と思うことにしています。