3.悔し涙
三つ目の物語 『悔し涙』
八月十六日。
僕はダイキ。二十歳。
二人暮らしで、待望の通信制大学、泰央学園で出会った、最愛の彼女と共に離島でのんびり暮らしていた。
結婚も考えていた。
幸せだった。
しかし、僕が本州の実家に帰省中に大豪雨が島を襲ったことを帰り道で聞いてしまった。
すぐに家に帰ったが、家は全壊。
彼女であったエマはエマの部屋であった場所に倒れ、もうすでに亡くなっていた。
僕は新しい家を建てるか本州の実家に移るか考えた。
彼女は家のそばに僕が作った墓の下にいる。
(連れて行きたいけど、仕方ない)
僕は、本州の実家に移り住むことに決めた。
僕は着々と生き残った家具たちの引越しの準備を進めた。
そして最後の部屋の前に来て、涙をグッと堪える。
「あとは、もともとあったエマの部屋だけ、、」
僕はエマの部屋だった場所に入った。
だけどその部屋は瓦礫が地面を埋め尽くしているだけだった。
僕は悔しくて涙が出そうになった。
そんな時だ。足元でクシャッと何かを踏んだ音がした。
「?赤い、、なんだこれ?あと、なんか、、火薬臭?」
大雨の後なのになんでこんな匂いがするのか気になっていると、一隻のボートがやってきた。
「すみません。お荷物はこちらだけですか?」
乗っていた老人が尋ねた。
(あ、さっきの人。引っ越し業者だったのか、、)
「あぁ、はい」
「かしこまりました。ちなみに、、」
「ん?」
僕が聞き返すと、その老人は衝撃的な言葉を口にした。
「プレゼントはちゃんと開けましたか?」
そう言われて、真実に気づいた僕は悔しかった。
(プレゼント、、あぁそう言うことか。笑顔でこっち見るんじゃねぇよ。ほんっとうに、、)
カッとなった。
頭に血が昇って、もう何も考えられなくなる。
近くにまとめていた調理器具の中から、僕は包丁を取り出した。
そしてそれを強く握り、ボロボロ溢れる涙と共に、、叫んだ。
「お前、、!よくも、、よくもぉぉぉぉぉ」
必死に走る。目の前の老人に向かって、、。
グサッ、、、
頭に激痛が走り、一瞬で消える。
視界が黒くなる。
そして白くなる。
打ち付ける体に感覚はなく、意識もなくなってしまった。
老人は手に持つ鎌を僕の体から抜き、一息吐いたのだった。