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懲役00年  作者: 青島
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懲役186年

「被告人 蒼島弥太郎に懲役186年を言い渡す」

なぜこんなことになったのだろう。目の前が真っ暗になった。


 俺は蒼島弥太郎。華の20歳である。さかのぼること数ヶ月前、俺は警察に捕まってしまった。罪状は色々あるが、何をしたかというと通貨偽造、つまるところは偽札作りだ。捕まった時はどうしたものかと思ったが、まあ長くても数十年、気長に考えようと思いながら裁判が進んでいくのを眺めているところで先の宣告である。

「おいおい、186年って生きている間に出られないじゃねえかよ」

 何が起きたのかわからないまま連れられていく俺は、そのままどこかに連れられていく。目隠しをされ運ばれた俺は、「着いたぞ」の声と同時に目隠しを外される。

 久しぶりの光に目が慣れるのを待ちながら辺りを見渡す。どうやら小さな個室のようだ。立っている自分の横に大柄な男が一人、どうやら先ほどの声はこの男のものらしい。俺をここまで連れてきたのもこいつだろう。そして机を挟んで向かい側にもう一人。椅子に座りながらこちらをみている男がいる。高級そうな革張りの椅子に座ったその男は、値踏みするような目線で俺を見ている。軍服に身を包み、銀色の縁の眼鏡をつけた黒髪の男、歳は三十くらいだろうか。

「やあ、こんにちは。私の名前は烏丸という。この施設を管理しているものだよ」

「ここは一体どこなんだよ」

「ここは刑務所だよ。ちょっと特別製のね」

「特別製?」

 優男風のこの男にそう聞き返す。

「ああ、そうだよ。君、弥太郎君の刑期は186年だったね」

 「懲役186年っておかしいだろ!人間の寿命なんて長くても100年だ!死ぬまでここにいろっていうのか!?」

「まあ端的にいうとそういうことだ。主な罪状は貨幣偽造罪だね。まあよくもここまで色々とやったもんだ。感心だよ」

「皮肉はいい。それで俺に何が言いたいんだ?もしかして皮肉を言いたかっただけなのか?」

 怒りを滲ませながら話す俺を、宥めるように烏丸は続ける。

「まあそんなにイライラしないでくれよ。さっき言っただろう?ここは特別な場所だと。ここは懲役100年以上の犯罪者たちを対象とした特別な刑務所、浅草監獄だ。日本中の極悪人たちがここに集まる」

「浅草監獄?そんな刑務所聞いたことないぞ」

「まあ一般には公開していないからね。聞いたことなくて当然だよ」

「それでこの刑務所のどこが特別なんだ」

「君は考えたことないかい?この国の刑法は歪んでいると」

「歪んでいる?どこがだよ」

「例えばこの国では人を一人殺したら大体10年前後刑務所に入って罪を償わなければならない。二人殺したらさらに長く、三人も殺したら死刑判決をうけるだろう。もちろん事件の内容や犯人の年齢や動機、前科なども考慮されるが大体こんな感じだ」

「それがどうしたんだよ」

「まだ気づかないのか?三人以上は殺した分だけ得をするんだよ」

「は?」

「だってそうだろう。どうせ死刑になるんだったらたくさん殺したほうがいいじゃないか。そう考えるのが普通だろう?つまりだね、我が国ではあまりに重犯罪を犯した罪人はさばけないんだよ。三人の人間の命を奪った時点で最も重い刑を科すことが決まっているんだ。そもそも、それ以上の人間を殺す罪人を想定していないというかだね」

「まあ言いたいことはわかったよ。それがどうこの監獄につながるんだよ」

「昔の偉い人は考えたんだよ。死刑でも極悪人を裁けないならそれ以上の刑を作ればいいと。つまり犯罪の内容によっては無限に刑期が長くなるようにしたんだよ。罪を犯した分はしっかりと償ってもらう。そんな実質死刑以上の罪を犯した犯罪者を集めたのがここ、浅草監獄だよ。」

「なるほどな、それで俺もここに運ばれてきたわけだ。だけどどうするんだ?寿命以上の懲役を科したって人間の寿命が決まっている以上意味がないだろう」

「ああ、もちろんその通りだ。だから君たち囚人にはある仕事をやってもらう」

「仕事?」

「そうだ。特殊刑務作業と呼ばれている。君たちには世の中にいる極悪人を捕まえてきてもらう。そしてその働きに応じて刑期を短くしていく仕組みになっている」

「なるほどな、毒を制するには毒ってわけだ。上手いこと考えたもんだ」

「世の中にはとんでもない悪人がごろごろいるんだよ。そして口惜しいことに彼らは一筋縄では捕まらない。捕まえないことには罪を償わせることもできない。そこで君たち囚人の出番だ。君たち懲役三桁組もまた、普通じゃない。君たちの働きには期待しているよ」

「犯罪者を捕まえたら刑期を短くするって言ってたよな?」

「ああ、言ったよ」

「もし、自分の刑期が0年になったらどうなるんだ?」

 眼鏡の男が不敵な笑みを浮かべる。

「それはもちろん、自由になれるんだよ」

「それはここから出られるってことか?」

「ああ、もちろん。刑期以上の働きをした者には特赦が与えられる。はれて一般人の仲間入りってわけさ」

「なるほどな、俺に与えられた選択肢は一つってわけだ」

「まあ、そう考えてもらって構わないよ」

「わかったよ。俺は絶対に自由の身になってやる。仕事の内容を教えてくれ」

「やる気があるのはいいことだ。しかし、君の書類の手続きが残っているんだ。今日は部屋で休みたまえ。続きはまた明日だ」

そう言い終え、眼鏡の男は机の上の書類に目を向ける。どうやら話は終わりのようだ。横にいた大柄の男がついてこいと手で合図を送ってくる。俺は自分の部屋に向かった。

 

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