友人たちに届いた招待状
「それでヴィー、どうしたの?」
あまり遅くなるわけにはいかないだろう、とアナスタシアは早速訊いた。
誰もその無作法を咎めない。
ヴィクトリアは真剣な顔で口を開いた。
「実はね、アナが言っていたカティラス侯爵家の夜会への招待状が私宛に届いたのよ」
アナスタシアは驚いたがすぐに首を傾げた。
「でも届いてなかったって言ってなかった?」
招待するにはやや性急だ。
送り漏れていて慌てて送ったのだろうか?
「ええ、そうね。今日急に届いたのよ」
「まあ」
驚いたのは何故かアナスタシアだけだった。
兄もロンバルトもやはりな、という顔だ。
それにも驚く。
アナスタシアが驚いている間にも話は進んでいく。
「やはりヴィクトリア嬢もか」
「ということはロンバルト様も?」
「ああ。だから来たんだ」
「そうでしたか」
「ロンにもなのね」
これはどういうことなのだろう?
アナスタシアは首を傾げた。
ロンバルトはだが何かしらの推測ができているようだ。
「カティラス侯爵家の誰かが俺たちに送ったんだ」
「誰かって、誰?」
「さあ? そこまではわからん」
それはそうだ。
「誰か知り合いがいる?」
「家としての付き合いは多少あるが、個人的な付き合いをしている者はいないな」
「私もよ」
それなら一体誰が送ってきたのだろう?
まるでアナスタシアたちを助けるためのようだ。
いやさすがに考えすぎか。
たまたま二人を招待したい者がいたのだろう。
家としてか個人としてか繋ぎを取りたかったのだろう。
そういうことは珍しくない。
「まあ助かった。だから俺も参加する」
「それを言いに来たの?」
「だからアナにパートナーの申し込みに来たんだ。そのほうが向こうで合流するより楽だろう?」
「それはそうね」
兄に視線で確認すると兄は頷いた。
「そのほうがいいだろう。すまないがヴィクトリア嬢は私のパートナーになってくれないか?」
「光栄ですわ」
ヴィクトリアが笑顔で快諾すると兄はほっとした様子を見せた。
「ありがとう。当日は四人で同じ馬車で行こう」
「そのほうがいいだろうな」
「私も構いません」
アナスタシアも異論はない。
小さく頷く。
「それなら俺のところから馬車を出す」
ロンバルトが申し出る。
「いいのか?」
「構わない。俺が家格が一番上だからな」
家格の高い者が紋章をつけた馬車で赴く。
それが招待主への敬意となる。
このような家を招待して来てもらえたのだ、という周囲へのアピールにもなるのだ。
「ああ、そうだな。では頼めるか?」
「ああ。ヴィクトリア嬢もいいか?」
「はい。お願いします」
それから衣装や迎えの時間などを軽く打ち合わせをする。
「あとは何かあったらその都度話すのでいいか?」
ロンバルトがアナスタシアたちを見回しながら訊く。
「ああ、構わない」
「私もいいですわ」
アナスタシアも頷く。
「ええ、いいわ」
「わかった。じゃあ当日にまずここに来てアナとセスランを乗せてからヴィクトリア嬢を迎えに行く」
「ああ、わかった」
「ええ、それで構いません」
「準備しておくわね」
三人の言葉にロンバルトが頷いた。
話し合いが一段落したところで執事が兄に耳打ちする。
一つ頷いた兄がヴィクトリアに視線を向ける。
「ヴィクトリア嬢、よければ夕食を一緒にどうだろうか?」
「よろしいのですか?」
「迷惑でなければ」
「俺も誘われている」
「ヴィーもよかったら。それともお家でもう準備がされている?」
「家のほうは連絡すれば問題ないわ」
「そうか。なら是非どうだろうか?」
いつになく兄が真剣なのは気のせいだろうか?
ロンバルトは気にしている様子はないから気のせいかもしれない。
「はい。お言葉に甘えさせてくださいませ」
「よかった」
兄が執事に視線で指示を出す。
執事は一礼して出ていった。
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