学園のカリキュラム 1.別々の授業2
その頃マティスとロンバルトは剣術の授業を受けていた。
マティスの相手はやはりロンバルトだ。
授業時間の半分以上はマティスの相手はロンバルトがしてくれる。
二人は他の者たちの邪魔にならないように端のほうで鍛練していた。
練習用の模造剣とはいえ、集中力を欠くと危ない。
だが教師ははっきり言って脳筋だった。
せっかくマティスがいるのだから、色気だだ漏れの敵に当たった時の練習にちょうどいいと、他の生徒何人かと必ず対戦させる。
色気だだ漏れの敵と相対する可能性など一体どれくらいあるというのだろう。
という生徒の疑問は完全無視だ。
マティスにとっても色気に耐性のある手練れに当たった時の練習になるだろう、と教師は宣った。
手練れ……?
と何人かが首を傾げたのはさらりと無視された。
マティスは幼い頃から自衛手段として剣術や体術を習っている。
師は元騎士で、両親が必死になってマティスの色気に耐性のある者を見つけてくれたのだ。
だから剣術もそれなりだ。
ロンバルトもバレリ領に来た時は一緒に稽古を受けていたのでお互いに実力も手の内も癖まで知っていて、実力は拮抗していた。
そんな彼らから見て手練れと呼べる者はあまりいない。
この国は長らく平和だった。
今現在も周りの国との関係は良好で、周りの国のどこも争いなどしていない。
それなので武術に優れている必要はない、ということで武術の教育に力を入れていない貴族も多い。
だから学園に通う子息に実力のある者はあまりいないのが現実だ。
「逆にそういう素人相手のほうが危険なこともある。どう動くのかわからないし予想外の動きをすることもある」
とは教師の弁で、比較的腕の立つ者と素人同然の者を平然と組ませたりする。
うっかりみんなが一理あるかも、ということで受け入れてしまった。
とはいえ、さすがに授業中全く役に立たなくなるのも困るので、マティスの相手を他の生徒がするのは授業時間半ばを過ぎてからと決まっている。
授業の時間が進むごとにみんなの緊張が高まり、空気が重くなっていく。
それはマティスも同様だ。
平然としているのはロンバルトと教師くらいだ。
ロンバルトは相手がマティスだろうと他の相手だろうと大して変わらないから気楽なものだ。
教師は本当にただの脳筋だからだ。
マティスの色気に当てられてもこれはこれでいい練習になると楽しそうだ。
この剣術の授業は本当に疲れる。
アナに会いたいな。
マティスは無性にそう思った。
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