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幼馴染みは色気がだだ漏れらしいのですが、私にはわかりません。  作者: 燈華


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親友への相談

屋敷にヴィクトリアが訪ねてきた。

もう夕方なので応接室で会う。


「アナ、聞いたわ。カティラス侯爵令嬢に絡まれたんですって?」

「耳が早いわね、ヴィー」

「彼女は有名だもの。皆彼女の動向には注意を払っているのよ。」

「まあ、そうなのね」


ウード伯爵令息に聞いた話を思い出す。

それから納得する。


誰だって自分の婚約者や想い人や友人を彼女の毒牙にかけられたくない。

できれば近づいてもほしくはないだろう。

だからこそその行動は注目される。


「アナ、大丈夫だった? 意地悪なことを言われたんじゃない?」

「意地悪なことは言われていないわ」

「じゃあ何を言われたの?」


ちょっとだけアナスタシアの眉根が寄る。


「マティスを貰うから挨拶に来たと言っていたわ」


ヴィクトリアが呆れた顔になった。


「凄い自信よね」


アナスタシアも頷く。

どこからその自信が出てくるのか。


「そもそも自分がマティスの色気に耐性があるのかも把握していないらしいわ」

「それはいくらなんでも、無謀ね」

「そうよね」


誰が見たってそうなのだ。

マティスの色気を甘く見た結果、入学してからしばらくは本当に毎日大変だった。

無防備に近づいてきて倒れる者が続出したのだ。


まさかそれをカティラス侯爵令嬢が知らないはずはない。

……知らないはずはないわよね?

あの様子だと、ちょっと不安になってきた。


「それに、迷惑だわ」

「ほら、彼女はあまり他人の迷惑を考えない人だから……」

「あー」


聞いた話では確かにそうだ。


「本当に迷惑だわ」


顔が不機嫌に歪んでしまう。

それをヴィクトリアは咎めなかった。

ここにいるのが二人だけだからと見逃してくれた。

アナスタシアの気持ちが理解できるからだろう。


アナスタシアは語気強く告げる。


「マティスに近づけたくないの」

「それはそうよね」

「私に何ができるかしら ?どうしたらいいと思う?」


ヴィクトリアが真剣に考えてくれる。


「そうね……一人にしないほうがいいと思うわ」


アナスタシアは頷いた。

アナスタシアがいてどれだけの抑制効果になるかはわからないが、いないよりはましだろう。


「ロンにもお兄様にも頼んでおくわ」

「ええ、それがいいと思うわ」


でも、男好きなら兄もロンバルトも狙われるかもしれない。

一応頼む時に注意するように言おう。

噂を知っていれば対策は取るだろう。


「アナももしかしたら意地悪されるかもしれないから気をつけてね」


マティスの傍にいるアナスタシアが邪魔だと思えば意地悪されることもあるかもしれない。

もちろんアナスタシアはそんなことでマティスの傍を離れるつもりはない。


「ええ」

「何かされたら私やマティス様に言うのよ?」

「えっと?」

「そういうことは一人で抱え込んでは駄目なのよ。情報を共有しておけばお互いに守れるでしょう?」

「あ、そうよね。わかったわ。何かされたら相談するわね」

「ええ。約束よ?」

「ええ。ヴィーもよ?」


ヴィクトリアがきょとんとする。


「ヴィーも危ないと思うわ。彼女、あまり人の話を聞かないし、思い込みが激しそうだったもの」

「でも、私はそれほどマティス様とは親しくないわよ ?あまり一緒にいないでしょう?」

「でも、私と友達じゃない」

「私の友達はアナであってマティス様じゃないわ」


ヴィクトリアが即座に言ってくれて密かに嬉しかった。

これで友達ではないと言われたら泣いていた。


ヴィクトリアはそんなことを言わないとは思うが、友人になってからまだ日が浅いから不安だったのだ。

王都に来てからできた友人はヴィクトリアだけなので勝手がわからない。


だからこそウード伯爵令息が友達かもしれないがはっきりとそうと言えないのだ。

いや、今はウード伯爵令息のことは置いておいて。


「でもああいうタイプの人間には一緒だと思うわ。マティスの傍に現れる人間は全て敵、みたいに思いそうだもの」

「それは、否定できないわ」

「だから気をつけて」

「ええ」


ふともう一人危険かもしれない人物に気づいた。


「それならメイナー様も危ないかしら?」


メイナー伯爵令嬢はマティスに恋している。

たまに話をしているのも見かける。

メイナー伯爵令嬢はマティスの色気に耐性があるほうだ。


マティスもメイナー伯爵令嬢のことは信用しているように見える。

もちろん、マティスが信用できる人物が増えるのは喜ばしい。


だが何故か心の奥が小さくつきんと痛む。

今はそんなことを気にしている場合ではない。

幸いヴィクトリアには気づかれなかったようだ。


「危ない、かもしれないわね。でもメイナー様なら御自分で対処なさるでしょう」


確かにメイナー伯爵令嬢なら自分で対処できそうだ。

アナスタシアよりよほど世慣れしている。


「ああ、でも一言言っておいたほうが対処しやすいかもしれないわね」


それなら大丈夫だ。メイナー伯爵令嬢はすでに知っている。


「さっきマティスにも忠告なさっていたし、カティラス侯爵令嬢に気をつけてと言いに行った時にマティスと一緒にいたから話を一緒に聞いていたわ」

「そうならやっぱり大丈夫だと思うわ。知っているなら対処なさるでしょう」

「そうね」


とにかく一人で行動しないこと、何かあったらきちんと相談することを約束させてヴィクトリアは帰っていった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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