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幼馴染みは色気がだだ漏れらしいのですが、私にはわかりません。  作者: 燈華


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舞踏会ーーマティスの憂鬱

「よぉ、アナ、マティス」

「「ロン!」」


また今日もロンバルトは一人だ。


「ロン、パートナーの方は?」

「一曲踊って、一旦別行動だ」

「それでいいの?」

「ああ。向こうは向こうで友人たちと会ってくると」

「それでロンは僕たちのほうに来たと?」

「見かけたからな」

「そう」


きょろりとロンバルトが辺りを見回す。


「それよりセスランたちは?」

「別行動よ」

始まるまでは一緒にいた。

一緒に一曲踊った後に別れたのだ。


「二人で挨拶回りに行ってくるってさ」

「私たちには大人しくしとけって」

「ああ、まあ今日は前回とは違って普通の夜会だしな。老獪(ろうかい)な奴らがうじゃうじゃいるからな。アナなんかいくらでも転がされるだろう」


反論できない。

世慣れていないアナスタシアは太刀打ちできる気が全くしない。

ヴィクトリアが危惧していたのもまさにそれだろう。


「物見遊山が多くて嫌になる」


マティスは遠巻きにじろじろと見られて不快そうだ。

ロンバルトは軽く周りを見回す。


「ああー、今日は初めて大人もいる公の夜会に参加となるからな。諦めろ」

「……わかっているよ」


こればかりはどうにもならない。

幸いなのは不躾に近寄ってくる者がいないことか。


慣れていない者が興味本位で近づけば周りは倒れる人で騒がしくなるだろう。

それは場合によってはマティスの悪評に繋がってしまう。

そうなるくらいなら遠巻きにしていてくれたほうがいいし、近づいてこようとしたらマティスを連れて逃げるつもりだ。


人に囲まれてしまったら躱せる自信はないから近づいてくる気配があれば早めに気づく必要がある。

だから意外と気が抜けない。


「まあ、そのうち落ち着くだろう」

「だといいけど」


早く慣れてくれればマティスの負担も減るがそれも難しいだろう。

それはたぶんマティスもロンバルトもわかっているのだろう。


「だから夜会なんて来たくなかったんだ」


マティスがぼやく。


「今回は仕方ないだろう。参加は義務だ」

「わかっているよ」


わかっていても言わずにはおれなかったのだろう。


「まあこれさえ乗り切ればあとはそれほど参加義務のある夜会はない、はずだ」

「そうであることを祈るよ」


マティスはやや投げ槍だ。

気持ちはわかる。


最低限の出席でいいと言われていても実際にはどうなるかはわからない。

どうしても断れないところ、というのはどうしても出てきてしまう。

王族から不参加の許可は出ていても、家同士の関係を考えたら断れないとか。

そういう関係で出席した夜会等で見せ物にされるのは嫌だろう。


「ロンは僕が出ない夜会のアナのパートナーを頼むよ」

「ああ」

「待って!」


何故かアナスタシアのパートナーが本人の意見も聞かずに決められていく。


「どうかしたか?」

「何で私のパートナーを勝手に決めているのかしら?」


何故か二人できょとんとした顔になる。


「ん? アナは他に誰か一緒に参加したい人がいるの?」


そう訊かれて悲しくなった。

アナスタシアにはパートナーになってくれるほど親しい男性がほとんどいないのだ。

しかもそれをわかっていて訊いているのだ。


「……別にいないわ」

「なら問題ないだろう」


それはそうなのだが、何か納得がいかない。

これから素敵な出会いだってあるかもしれないではないか。

その可能性は排除できないはずだ。

だけどそれをうまく主張できない。


「俺のほうもそのほうが楽だ」

「そうなの?」

「俺にも婚約者はいないからな。毎回パートナーを探さなくて済む」


アナスタシアのもやもやがすっと引いた。

婚約者でない以上、毎回同じ令嬢に頼むわけにもいかないだろう。


「やっぱり大変?」

「いろいろ考えないとならないし、受けてくれるかもわからないしな」


考えてみればそうだ。


「その点、アナなら受けてくれるだろう?」

「他に誰もいなければね」

「他にパートナーを務めてくれる奴がいるのか?」


失礼な。

そう思うが、他、と言えば、ウード伯爵令息がもしかしたら、というくらいしか思い浮かばない。

だけど、彼の名前をここで言うと阻まれるような気がする。

何故かみんなウード伯爵令息の名に敏感だ。


「お、お兄様のパートナーの時もあるかもしれないじゃない」


だから兄の名前を出した。

実際そういうこともあるだろう。


「ああ、その時はそう言ってくれればいい」


あっさりと言う。


「わかったわ」

「だからそれ以外のマティスのパートナーでない時は頼むな」

「ええ」


もし、ウード伯爵令息に誘われてパートナーになったら、それはその時に言えばいい。

そう思いながらアナスタシアは頷いた。


読んでいただき、ありがとうございました。

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