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幼馴染みは色気がだだ漏れらしいのですが、私にはわかりません。  作者: 燈華


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親友とのお茶会とアップルパイ

「庭の花々が綺麗ね」

「ありがとう」


サンルームに入ったヴィクトリアが庭に目を留めて褒めてくれた。

庭師が丁寧に世話をしてくれる庭の花々は密かにアナスタシアの自慢だ。


ヴィクトリアを促して椅子に座る。

侍女がお茶を淹れてお菓子を並べて壁際に下がっていく。


「どうぞ」

「いただくわ」


今日のおやつはアップルパイだ。

飲み物はアップルティーで合わせてある。

ヴィクトリアはカップを持ち上げて鼻に近づけた。


「いい香りね」


そして一口飲む。


「美味しいわ」

「ありがとう」


カップを置いて今度はフォークを持ち、アップルパイを食べた。


「さくさくしていて美味しいわ。林檎がざくざく系なのね」

「うちの料理人自慢の一品よ」


アナスタシアは胸を張る。


「アナが自慢するだけのことはあるわね。でも、うちのも負けてないわよ? うちのものはとろとろ系なの」

「それも美味しそうね」

「今度是非うちにも遊びに来て。用意しておくから」

「ええ、そうさせてもらうわ」

「じゃあ今度招待するわね」

「ええ、楽しみにしているわ」


しばし二人でアップルパイを楽しむ。

アップルパイを食べ終え、一口お茶を飲んでアナスタシアは訊いた。


「さっき王宮主催の舞踏会の招待状が届いたの。ヴィーにも届いた?」

「ええ、届いたわ。すぐに参加の返事は書いたけど……」


ヴィクトリアは頬に手を当て溜め息をついた。


「ヴィー? どうしたの?」

「パートナーをね、どうしたらいいのかしら、って」

「誰か頼めそうな人はいないの?」


ヴィクトリアは首を横に振る。

アナスタシアはうーんと頭をひねって、


「学園で同じようにパートナーを探している人に頼むとか?」

「それはなかなか勇気がいるわね」

「そうよね」


まだあまり知らない人にパートナーを頼むのは勇気がいる。

誰かの紹介ならまだその人が人となりを保証するようなものだが、学園で顔見知り程度だとよく知らないので怖いのだ。

困ったわねぇと頬に手を当てる。

そこへ。

扉が叩かれた。

侍女が少し扉を開けて何事か聞いてくれてアナスタシアのもとに来た。


「どうしたの?」

「セスラン様がお越しです。ご一緒してもよいか、と」


そう言えば先程ヴィクトリアに挨拶したいと言っていた。頼みたいことができるかもしれないから、と。


「ヴィー、いい?」

「もちろん構わないわ」


侍女に伝えて侍女が扉の外で待っているであろう兄に伝えに行く。

扉の外と少しやりとりした後で扉を開く。

そこから兄が入ってきた。


「ヴィクトリア嬢、ありがとう。お邪魔させてもらうよ」


侍女が素早く兄の分の席を作る。


「お邪魔しています、セスラン様」


兄が歩いてきて椅子に座る。

それからテーブルの上に視線を走らせた。


「お茶菓子を出さなかったのか?」

「いいえ、いただきましたわ」

「アップルパイよ。ちょうど食べ終わったところだったのよ」

「美味しいアップルパイでした」

「それはよかった」

「ヴィーのところのは林檎がとろとろのなんですって」

「そうか。そちらも美味しそうだな」

「今度、ヴィーの家でいただくのよ」

「あまり食べ過ぎるなよ」

「わかっているわ」


アナスタシアは澄まして答える。

人の家で(わきま)えずに食べるつもりはない。

もちろん、出されたものはきちんと食べるつもりだ。

兄はアナスタシアを呆れた目で見てきたが無視した。

ヴィクトリアが兄に何か言いたそうな顔をしている。


「ヴィー、どうかした?」

「あ、いえ、何でもないわ」

「本当に?」

「ええ」

「ヴィクトリア嬢?」

「セスラン様も本当にお気になさらないでください」


アナスタシアは兄と顔を見合わせる。

だがヴィクトリアが話したがらないなら無理に聞き出す必要はない。


「わかった」


兄がそう言えばヴィクトリアはほっとした様子だ。


それからは話題を変えてしばし雑談に花を咲かせた。


読んでいただき、ありがとうございました。

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