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幼馴染みは色気がだだ漏れらしいのですが、私にはわかりません。  作者: 燈華


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友人とのお茶会

「またお友達できなかった……」


クーパー家の庭の四阿(あずまや)でヴィクトリアと二人でお茶をしている席でしゅんとアナスタシアは落ち込む。

いつだって学校主催のお茶会はアナスタシアにとって婚約者候補との出会いの場であると同時に友達になれるチャンスの場でもある。


「私たちがいるじゃない」

「うん。でもヴィーもマティスもロンもいないところだと私、ぼっちだもの。みんな遠巻きにして話しかけることもできない……」


項垂(うなだ)れるアナスタシアの頭をヴィクトリアが優しく()でる。


「それにマティスやロンとはいつまでも一緒にはいられないでしょう?」

「うん?」

「マティスやロンに婚約者ができたら、婚約者にとって仲のいい女友達なんて邪魔でしょう? それは私に婚約者ができても同じ」


あー、とヴィクトリアは何のフォローもできない。


「それに、誰かの奥さんになるならきちんと社交できないと困るでしょう? 今のままじゃそれもできないわ。そうしたら私の結婚価値なんてないわ」

「そんなことないわ。アナは大丈夫よ」

「大丈夫じゃないわ。誰も相手にしてくれないもの」


学園で一人でいても遠巻きにされるということはそういうことだ。

誰もアナスタシアになど興味はないのだ。

落ち込むアナスタシアにどう声をかけていいかわからずにいたヴィクトリアはふと閃いた。


「あ、そうだわ。アナ、どこかの"会"に入ってみるのはどうかしら?」

「会?」


こてんと首を傾げる。

アナスタシアには聞き覚えがなかった。


「私も詳しくは知らないのだけど、同好の士が集まっていろいろ活動しているらしいわ。いろいろな会があるそうだからアナも興味を持てる会があるかもしれないわ」


同好の士なら友人になってくれる者も見つかるかもしれない。

アナスタシアの顔がぱっと輝く。


「興味深いわ。でも、どういう会があるのかしら? あと、会員を募集しているのかしら?それとも勧誘?」

「会によってまたまちだと思うわ。どういう会があるか調べてみるわね」

「お願いしてもいい?」

「もちろんよ。アナのことをちゃんと知れば絶対に仲良くなってくれる子が現れるわ」

「そう、かしら?」

「そうよ。だって私は初めてアナと話した時にアナのことが大好きになったもの」


ヴィクトリアとの出会いはとあるお茶会だった。

実はアナスタシアとヴィクトリアの友人歴はあまり長くない。


ほとんどをクーパー家の領地かバレリ家の領地で過ごしていたアナスタシアにはマティスとロンバルト以外の友人がいなかった。

同性の友人がほしかった。

だが時折参加していたお茶会では友人ができなかったのだ。


そんな中、学園に入学する一年程前に参加したお茶会でヴィクトリアが声をかけてくれたのだ。

一緒にお茶を飲みながらお喋りして、お茶会が終わる頃にはすっかり仲良くなっており、今では大切な親友だ。


「でも、他の人と話すことはあるのよ? でもヴィーみたいに仲良くなれていないわ」

「たぶん、足りないのよ」

「足りない?」

「少し話したくらいではその人のことはやっぱりよくわからないでしょう? お互いによく知るにはそれなりに時間がかかるわ。私たちだってあのお茶会でたくさん話したでしょう?」


アナスタシアは目を(またた)かせる。


「確かに、そうね」

「焦る必要はないんじゃないかしら? 何度も話しているうちに少しずつ仲良くなる子もいると思うわ」

「そうね。ありがとう、ヴィー」

「どういたしまして」


アナスタシアは焦りすぎていたようだ。


「ヴィー、お友達になってくれてありがとう」

「私のほうこそありがとう。でも、どうしたの、急に」

「うん? ヴィーはすぐに仲良くしてくれたから、それがとても嬉しいことだと気づいたの」

「アナのそういう素直なところ、好きよ」

「ありがとう。私もヴィーの優しいところ好きよ」

「ふふ、ありがとう」


嬉しくなって二人で微笑(わら)い合った。


読んでいただき、ありがとうございました。

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